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第四章 プラム村
第117話
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結論から言うと、炊き出し祝勝会は大盛況で終わりました。
開始前の準備段階から、どこで嗅ぎつけたのか、村に住む住人達が会場を囲い、いつ始まるまだ始まらないのかと大騒ぎ。
会場設営に尽力してくれた、バルドさん率いる治安部隊が誘導整理してくれなかったら、待ち切れない群衆が会場に雪崩れ込んで、大惨事なんて可能性まであったんだよね。
でも、いざ始まるとあちこちで料理に舌鼓を打つ幸せそうな顔が会場に満ち溢れていて、実際に前線に立った兵士や冒険者達にも住人から感謝の言葉が投げ掛けられてました。
「部下達も報われたよ。村人とも更に打ち解けられて、今後の活動にも良い影響が出そうだ」
「ギルドとしても全体に対する評価がかなり良くなったぞ。勿論直接前線に出なかった連中の方が多いんだが、むしろ防衛戦に参加してたヤツラの方に、不真面目なのが多かったからな。
いざという時には頼りになる、なんて言われて悪い気はしないだろうさ。
ちょっとばかり調子に乗ってる阿呆もいたが、まぁ概ね好意的に受け入れて貰える様になった」
余所者の僕から見ても、良い雰囲気だなぁと思うしね。
事が事なだけに、一つ歯車が狂ってたら大惨事だったけど、こうしてみるといいきっかけになったのかもしれないなぁ。
「ユーマ殿のおかげだ。改めて感謝する」
バルドさんの言葉にカウフマン所長も便乗して、危うく抱きしめられるところだったよ。おっさんのハグとか要りません。
宴はまだまだ続く様で、いつのまにかいくつも酒樽が持ち込まれてて、炊き出しの筈が酒宴になってました。
気付けば、シアやマイラさんも冒険者に混じってるし。
「ユーマ、やるじゃない。さすがの私も、この状況は想像すらしなかったわ。この村はきっともっと良くなるわね。
ガイアスでは、兵隊や冒険者って普通の人達とはあんまりウマが合わないものなのよ。だから、これだけ打ち解けると色々な好循環が生まれてくる。
まださざ波程度だけど、確実にリソースが増大して来てるってわかるわ。
お手柄よ!ユーマ!」
ネルがちっちゃな唇で頬にキスしてくれました。
偶然と思い付きの結果だけど、ネルに褒められたのが一番の喜びだね。
宴の翌日、宿に冒険者ギルドの職員さんが訪れ、先日の報奨金の計算が終了したので受け取りに来て欲しいとの連絡を貰いました。
ギルドの会議室に案内されると、笑顔のカウフマン所長とともに、見知らぬ人が2人。
「ユーマ殿、呼び立てて申し訳ない。まずはこちらの2人を紹介しよう。
こちらの御老体が、プラム村の村長のアービンさん。
で、もう1人は領主様から派遣されて来た監査役のジョセル・オーフェン殿だ。
2人ともぜひユーマ殿に会いたいとの事でな、報奨金の支払いのついでにこの場を設けさせて貰った」
いわゆる偉いさんってことみたいね。話を要約すると、僕達の働きには大変感謝している。村からも特別報奨を出すつもりだが、領主の決済が必要なので2人連盟の書状を携えて、王都にいる領主のクレイドル侯爵を訪ねて欲しいとの事でした。
エリーヌの実家であるハイネン家の家宰バローさんからも依頼されてるから、クレイドル侯爵家に向かう要件が重なった事になる。さすがに何か縁があるのかもとか思っちゃうけど、貴族との縁なんて欲しくないんだよなぁ。
勿論この件に関しては、断るのもおかしな話、仕方なく申し出を受けると、少し不思議そうな表情で2人は戻って行きました。
「ユーマ殿、先の討伐報奨金がこれになる。
この前話した通り、冒険者と同額分が大金貨2枚とオーク50匹の山分け額が金貨5枚。それから、ジェネラルの素材として、魔石、睾丸、肝、心臓だな。眼球や牙が残らなかったのは残念だろうが、まぁ価値はそれなりだ。
あとはオークの3割で15匹分確保してあるが換金するんだろ?それが金貨31枚と大銀貨1枚だ」
「あ、それについては解体場で続きを…」
というわけで解体場に来たんだけど、カウフマン所長も少し怪訝な顔です。
まぁ、収納の事が知れちゃうけど今回はやむを得ないよね。
ネルも目が合うと頷いてくれてるし。
「カウフマン所長。騒ぎになるのは嫌なので出来るだけ内密にして下さい」
そう伝えながら解体されたオークの素材を、次々と収納していきます。3匹を過ぎた辺りから、カウフマン所長の顔が驚きの表情に変わり始め、全てを収納し終えた時には唖然としていました。
「…と、まぁこういう事なんで。カウフマン所長はきっと口が硬い人だと信じてます」
「…とんでもないな。容量が大きいヤツも知ってはいるけど、これほどのモンは初めてだぜ。そりゃ秘密にするのも理解出来る。変なヤツに知られたらほっとかれる事はないはずだ。
勿論口外しないと約束する。ユーマ殿は村の恩人でもあるからな」
こうして精算してみると、現金報奨金は大金貨3枚。素材の価値を考慮しても、多分冒険者ギルドは結構な持ち出しになってるよね。
それでもきっと、失われなかった人やモノを考えたら、全体としてはプラスになってるはず。
僕は、カウフマン所長の笑顔は恐らくそういう事なんだろうなぁ、と思いつつ冒険者ギルドを後にしました。
開始前の準備段階から、どこで嗅ぎつけたのか、村に住む住人達が会場を囲い、いつ始まるまだ始まらないのかと大騒ぎ。
会場設営に尽力してくれた、バルドさん率いる治安部隊が誘導整理してくれなかったら、待ち切れない群衆が会場に雪崩れ込んで、大惨事なんて可能性まであったんだよね。
でも、いざ始まるとあちこちで料理に舌鼓を打つ幸せそうな顔が会場に満ち溢れていて、実際に前線に立った兵士や冒険者達にも住人から感謝の言葉が投げ掛けられてました。
「部下達も報われたよ。村人とも更に打ち解けられて、今後の活動にも良い影響が出そうだ」
「ギルドとしても全体に対する評価がかなり良くなったぞ。勿論直接前線に出なかった連中の方が多いんだが、むしろ防衛戦に参加してたヤツラの方に、不真面目なのが多かったからな。
いざという時には頼りになる、なんて言われて悪い気はしないだろうさ。
ちょっとばかり調子に乗ってる阿呆もいたが、まぁ概ね好意的に受け入れて貰える様になった」
余所者の僕から見ても、良い雰囲気だなぁと思うしね。
事が事なだけに、一つ歯車が狂ってたら大惨事だったけど、こうしてみるといいきっかけになったのかもしれないなぁ。
「ユーマ殿のおかげだ。改めて感謝する」
バルドさんの言葉にカウフマン所長も便乗して、危うく抱きしめられるところだったよ。おっさんのハグとか要りません。
宴はまだまだ続く様で、いつのまにかいくつも酒樽が持ち込まれてて、炊き出しの筈が酒宴になってました。
気付けば、シアやマイラさんも冒険者に混じってるし。
「ユーマ、やるじゃない。さすがの私も、この状況は想像すらしなかったわ。この村はきっともっと良くなるわね。
ガイアスでは、兵隊や冒険者って普通の人達とはあんまりウマが合わないものなのよ。だから、これだけ打ち解けると色々な好循環が生まれてくる。
まださざ波程度だけど、確実にリソースが増大して来てるってわかるわ。
お手柄よ!ユーマ!」
ネルがちっちゃな唇で頬にキスしてくれました。
偶然と思い付きの結果だけど、ネルに褒められたのが一番の喜びだね。
宴の翌日、宿に冒険者ギルドの職員さんが訪れ、先日の報奨金の計算が終了したので受け取りに来て欲しいとの連絡を貰いました。
ギルドの会議室に案内されると、笑顔のカウフマン所長とともに、見知らぬ人が2人。
「ユーマ殿、呼び立てて申し訳ない。まずはこちらの2人を紹介しよう。
こちらの御老体が、プラム村の村長のアービンさん。
で、もう1人は領主様から派遣されて来た監査役のジョセル・オーフェン殿だ。
2人ともぜひユーマ殿に会いたいとの事でな、報奨金の支払いのついでにこの場を設けさせて貰った」
いわゆる偉いさんってことみたいね。話を要約すると、僕達の働きには大変感謝している。村からも特別報奨を出すつもりだが、領主の決済が必要なので2人連盟の書状を携えて、王都にいる領主のクレイドル侯爵を訪ねて欲しいとの事でした。
エリーヌの実家であるハイネン家の家宰バローさんからも依頼されてるから、クレイドル侯爵家に向かう要件が重なった事になる。さすがに何か縁があるのかもとか思っちゃうけど、貴族との縁なんて欲しくないんだよなぁ。
勿論この件に関しては、断るのもおかしな話、仕方なく申し出を受けると、少し不思議そうな表情で2人は戻って行きました。
「ユーマ殿、先の討伐報奨金がこれになる。
この前話した通り、冒険者と同額分が大金貨2枚とオーク50匹の山分け額が金貨5枚。それから、ジェネラルの素材として、魔石、睾丸、肝、心臓だな。眼球や牙が残らなかったのは残念だろうが、まぁ価値はそれなりだ。
あとはオークの3割で15匹分確保してあるが換金するんだろ?それが金貨31枚と大銀貨1枚だ」
「あ、それについては解体場で続きを…」
というわけで解体場に来たんだけど、カウフマン所長も少し怪訝な顔です。
まぁ、収納の事が知れちゃうけど今回はやむを得ないよね。
ネルも目が合うと頷いてくれてるし。
「カウフマン所長。騒ぎになるのは嫌なので出来るだけ内密にして下さい」
そう伝えながら解体されたオークの素材を、次々と収納していきます。3匹を過ぎた辺りから、カウフマン所長の顔が驚きの表情に変わり始め、全てを収納し終えた時には唖然としていました。
「…と、まぁこういう事なんで。カウフマン所長はきっと口が硬い人だと信じてます」
「…とんでもないな。容量が大きいヤツも知ってはいるけど、これほどのモンは初めてだぜ。そりゃ秘密にするのも理解出来る。変なヤツに知られたらほっとかれる事はないはずだ。
勿論口外しないと約束する。ユーマ殿は村の恩人でもあるからな」
こうして精算してみると、現金報奨金は大金貨3枚。素材の価値を考慮しても、多分冒険者ギルドは結構な持ち出しになってるよね。
それでもきっと、失われなかった人やモノを考えたら、全体としてはプラスになってるはず。
僕は、カウフマン所長の笑顔は恐らくそういう事なんだろうなぁ、と思いつつ冒険者ギルドを後にしました。
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