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第四章 プラム村
第113話
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「さぁ、それじゃ聞かせて貰おうか…」
僕達は現在、冒険者ギルドの所長室に来ています。
村に辿り着くと、門内の広場では、兵士達がオークの死体を集めている真っ最中でした。
また、オークに破壊された門扉も、多数の人員が一斉に補修作業しています。流石に守りの要という事もあり、優先したんだろうね。
ただ、見る限り村の中の建物などには、オークの攻撃を受けたような痕跡がないんだよね。
カウフマン所長にその事を訪ねてみると、治安部隊がこの場所を死守したらしい事がわかりました。凄いね。
「治安部隊のバルド隊長は、戦上手で有名だった人でな。多分、彼が指揮官じゃなかったらやばかったはずだ」
そんなに不穏な地域じゃないと思うけど、そんな人が配属されるのも不思議な感じがします。
「バルド隊長は、この村の出身なんだそうだ。領兵を退職するって侯爵閣下に申し出た時に、引き留める条件としてプラム駐屯地の司令官を拝命したらしい。
結果として、その判断は正しかったって事だな」
そんな話を聞きながら冒険者ギルドに到着すると、カウフマン所長は、僕達を執務室横の会議室に案内してくれました。
「ちょっと先に雑用を済ませて来る。職員にお茶でも出させるから、しばらく待っててくれ」
ギルドは事後処理でかなり賑やかだったので、多分時間かかりそう。僕達も合流したてなのでちょうど良かったかも。
「それで、オークの集落はどうだったの?」
職員さんがお茶を届けて退出した後、話の口火を切ったのはネルでした。
「予想通り。冒険者が2人苗床にされてたのを救出したよ。
多分、ギルドにも報告が上がってるんじゃないかな。
集落に残ってたオークは、子供も含めて殲滅したし、集落自体も潰して燃やしてきたよ」
「そっか、お疲れ様。でもやっぱり繁殖してたのね」
「アタシも、村に着いてから情報集めをしてたんだけど、女性がいるパーティが帰還してないって聞いてねぇ。
高確率でそうなってるだろうなと思っていたよ」
マイラさんも動いてくれてたんだね。さすがです。
「僕の方は、それから救出した2人と一緒に強行軍でこっちに来たからさ。シアと銀には随分助けられたよ」
「そうなんだ?シアも銀もお疲れ様ね」
ネルの慰撫に、シアも銀も嬉しそうにしてる。
「我も銀も、ユーマ様の従魔じゃからの。役に立てれば本望じゃよ」
『左様でござる。殿の御為でござれば、身を粉にする事も厭わぬ心算でござるよ』
「あははっ!でも2人ともありがとう。また助けてね。
それでネル達はどうだったの?」
まだ、グラルと巴とエリーヌの姿を見てないし。
「どうもこうもないわよ。私は1人じゃ動けないじゃない?たまにふーちゃんと飛んでみたけど、特に見るものもないし。
あ、グラルとエリーヌは、避難誘導で教会に行かせたから、後で合流すればいいわよ。巴は宿の厩舎じゃないかしら」
「アタシは一応冒険者の身分もあるから、色々話は聞いて回ったねぇ。
基本は平和な村だったよ。
それだけに、行方不明のパーティについては話題になってたかな」
「そっか…あのジェネラルが身に付けてた防具みたいなのは、助けた2人のパーティメンバーの物だったらしいからさ、恐らくオークに殺されてると思う。
後で、2人と話す機会があればいいけど」
お互いの状況を擦り合わせているうちに、結構時間が経ってたみたいで、職員さんが程なく呼びに来てくれました。
「…そうだったのか。改めてご助力感謝する」
「いや、頭を上げて下さい。きっとそういう巡り合わせだったんですよ。
神様の導きかもしれませんね」
なぜそこでドヤ顔する。
「だが、ユーマ殿一行がこのタイミングで、プラム近郊にいてくれなかったらと思うとな…
俺自身、あのジェネラルに突喊するつもりだったし、恐らく犬死だったろうよ。
そちらのマイラ殿の大魔法が間に合ってなかったら、冒険者の被害どころか、村そのものが壊滅していただろう」
「まぁ、結果が全てです。
それよりも、ライサさんとミラさんだけでも助けられて良かったですよ」
「そうだな。その事についても頭が下がる一方だ。
おかげで実質的な人的被害としては、ジョッシュとバリーとトマスの3人の死亡だけで済んだんだ。
アイツら優秀ではあったんだが、多少無謀なところもあったからな。多分、そのせいでライサ達が苗床にされたんだろう。
せめて、ギルドに情報を…」
カウフマン所長の顔が、苦渋に満ちてる。この人優しい人なんだね。
その後も色々と話した結果、ジェネラルの素材は僕達に権利がある事、ギルドが冒険者に約束した、防衛戦の参加報酬と同額を協力報酬として受け取れる事、回収したオークの素材の3割を自由にしていい事、などを同意出来ました。
「処理が色々と追いつかない。足留めして申し訳ないが、しばらく村に滞在してもらいたい。
多分、報酬計算や解体で明後日くらいになる。その間の費用はギルドの方で負担させて貰おう」
そりゃ僕達としてもありがたい話です。
せっかくの好意に甘えさせて貰って、鋭気を養うとしますか。
ギルドを後にして、マイラさんが確保してくれてた宿に到着した僕を待っていたのは、涙目でぷるぷるしたエリーヌと、困った人を見る目のグラルでした。
なんなのさ、こいつら…
僕達は現在、冒険者ギルドの所長室に来ています。
村に辿り着くと、門内の広場では、兵士達がオークの死体を集めている真っ最中でした。
また、オークに破壊された門扉も、多数の人員が一斉に補修作業しています。流石に守りの要という事もあり、優先したんだろうね。
ただ、見る限り村の中の建物などには、オークの攻撃を受けたような痕跡がないんだよね。
カウフマン所長にその事を訪ねてみると、治安部隊がこの場所を死守したらしい事がわかりました。凄いね。
「治安部隊のバルド隊長は、戦上手で有名だった人でな。多分、彼が指揮官じゃなかったらやばかったはずだ」
そんなに不穏な地域じゃないと思うけど、そんな人が配属されるのも不思議な感じがします。
「バルド隊長は、この村の出身なんだそうだ。領兵を退職するって侯爵閣下に申し出た時に、引き留める条件としてプラム駐屯地の司令官を拝命したらしい。
結果として、その判断は正しかったって事だな」
そんな話を聞きながら冒険者ギルドに到着すると、カウフマン所長は、僕達を執務室横の会議室に案内してくれました。
「ちょっと先に雑用を済ませて来る。職員にお茶でも出させるから、しばらく待っててくれ」
ギルドは事後処理でかなり賑やかだったので、多分時間かかりそう。僕達も合流したてなのでちょうど良かったかも。
「それで、オークの集落はどうだったの?」
職員さんがお茶を届けて退出した後、話の口火を切ったのはネルでした。
「予想通り。冒険者が2人苗床にされてたのを救出したよ。
多分、ギルドにも報告が上がってるんじゃないかな。
集落に残ってたオークは、子供も含めて殲滅したし、集落自体も潰して燃やしてきたよ」
「そっか、お疲れ様。でもやっぱり繁殖してたのね」
「アタシも、村に着いてから情報集めをしてたんだけど、女性がいるパーティが帰還してないって聞いてねぇ。
高確率でそうなってるだろうなと思っていたよ」
マイラさんも動いてくれてたんだね。さすがです。
「僕の方は、それから救出した2人と一緒に強行軍でこっちに来たからさ。シアと銀には随分助けられたよ」
「そうなんだ?シアも銀もお疲れ様ね」
ネルの慰撫に、シアも銀も嬉しそうにしてる。
「我も銀も、ユーマ様の従魔じゃからの。役に立てれば本望じゃよ」
『左様でござる。殿の御為でござれば、身を粉にする事も厭わぬ心算でござるよ』
「あははっ!でも2人ともありがとう。また助けてね。
それでネル達はどうだったの?」
まだ、グラルと巴とエリーヌの姿を見てないし。
「どうもこうもないわよ。私は1人じゃ動けないじゃない?たまにふーちゃんと飛んでみたけど、特に見るものもないし。
あ、グラルとエリーヌは、避難誘導で教会に行かせたから、後で合流すればいいわよ。巴は宿の厩舎じゃないかしら」
「アタシは一応冒険者の身分もあるから、色々話は聞いて回ったねぇ。
基本は平和な村だったよ。
それだけに、行方不明のパーティについては話題になってたかな」
「そっか…あのジェネラルが身に付けてた防具みたいなのは、助けた2人のパーティメンバーの物だったらしいからさ、恐らくオークに殺されてると思う。
後で、2人と話す機会があればいいけど」
お互いの状況を擦り合わせているうちに、結構時間が経ってたみたいで、職員さんが程なく呼びに来てくれました。
「…そうだったのか。改めてご助力感謝する」
「いや、頭を上げて下さい。きっとそういう巡り合わせだったんですよ。
神様の導きかもしれませんね」
なぜそこでドヤ顔する。
「だが、ユーマ殿一行がこのタイミングで、プラム近郊にいてくれなかったらと思うとな…
俺自身、あのジェネラルに突喊するつもりだったし、恐らく犬死だったろうよ。
そちらのマイラ殿の大魔法が間に合ってなかったら、冒険者の被害どころか、村そのものが壊滅していただろう」
「まぁ、結果が全てです。
それよりも、ライサさんとミラさんだけでも助けられて良かったですよ」
「そうだな。その事についても頭が下がる一方だ。
おかげで実質的な人的被害としては、ジョッシュとバリーとトマスの3人の死亡だけで済んだんだ。
アイツら優秀ではあったんだが、多少無謀なところもあったからな。多分、そのせいでライサ達が苗床にされたんだろう。
せめて、ギルドに情報を…」
カウフマン所長の顔が、苦渋に満ちてる。この人優しい人なんだね。
その後も色々と話した結果、ジェネラルの素材は僕達に権利がある事、ギルドが冒険者に約束した、防衛戦の参加報酬と同額を協力報酬として受け取れる事、回収したオークの素材の3割を自由にしていい事、などを同意出来ました。
「処理が色々と追いつかない。足留めして申し訳ないが、しばらく村に滞在してもらいたい。
多分、報酬計算や解体で明後日くらいになる。その間の費用はギルドの方で負担させて貰おう」
そりゃ僕達としてもありがたい話です。
せっかくの好意に甘えさせて貰って、鋭気を養うとしますか。
ギルドを後にして、マイラさんが確保してくれてた宿に到着した僕を待っていたのは、涙目でぷるぷるしたエリーヌと、困った人を見る目のグラルでした。
なんなのさ、こいつら…
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