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第四章 プラム村
第99話
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「秘訣っていうより偶然だよ?巴が、たまたまスレイプニルの因子を持ってたからってだけだから」
エリーヌに、巴が進化した過程を説明してあげると、彼女は興奮した様子です。
「偶然とは言っても、そのようにスレイプニル程の魔獣を作り上げる技術を、開発した事に価値がありますわ!
スレイプニル騎兵団を作れば、大陸制覇だって可能になるかもしれませんもの。
そうすれば、一歩平和に近づくではないですか!」
「そもそも、その考え方が嫌いなんだよね。平和の為に戦争するなんて、本末転倒もいいところだと思うし。
それに技術って程確立してる訳じゃない。スレイプニル因子を持ってる馬を見つける手段がある訳じゃないんだよ?魔力の過剰摂取で、何頭の馬が犠牲になるのかわからないのに。
エリーヌは、いるかわからない因子持ちの馬が見つかるまで、彼等を虐殺したいの?」
「いえっ!そんな事は…」
否定の言葉を言ってはみても、結局はそこまで考えが回っていなかったってだけだよね。
その辺りの感覚は、現場にいる人じゃなきゃわからない事だと思うし、理想を語る人ほどその傾向があるんじゃないかな。
「僕が情報としても公開したくないって思うのは、やっばりエリーヌと同じ様に考える人がいるだろうな、ってのが理由なんだよね。
収納の件も同じだよ。知れば利用したくなる。それが利己的な欲望がきっかけだったとしても、みんなの為に力を使うべきだとか、自分さえ良ければいいのかとか、お題目をつけて犠牲を強いるんだ。
それを言った本人は、自分を正当化してるから余計にタチが悪い。
だから僕は、エリーヌに奴隷化の魔法を使わせて貰ったんだよ」
「わたくしは信用されていないのですね?」
「そういう事だよ。エリーヌが言った、領民の為にって気持ちが偽りだって思ってるわけじゃない。
エリーヌは多分、結果として犠牲を強いる事になる誰かの事にまで、考えが及んではいないって思ったからね」
自分の為にせよ、他の誰かの為にせよ、自分以外に犠牲を強いるんだったら、せめて罪悪感は感じてくれないと報われないと思うからね。
「信用しては頂けないのでしょうか?」
「無くした信用を取り戻すのは、簡単じゃないって。
ただ、エリーヌはこれから一緒に旅するつもりなんでしょ?だったらチャンスは少なくないと思うよ?
僕は奴隷が欲しいわけじゃない。グラルだって、そうする以外に方法がなかったから進んで奴隷になったんだから」
俯くエリーヌが、何を考えてるかはわからないけど、せめて僕が伝えたい事が理解出来てる事を期待するしかないよね。
エリーヌの対応で、余計な時間を使っちゃった。そのせいで、ちょっと馬車の改装までは時間が足りなさそう。
仕方ないから、とりあえベアリングだけでも試作してみなきゃね。
確かにベアリングは、使用度合いに応じて摩耗しちゃうはず。だから今回は強度よりも作り易さを重視して、摩耗による劣化にはベアリング全体の交換で対応するべきだね。
作り易さを考えた場合、直径が同じ円柱のころを作るほうが難易度的に低いはず。
まずはケースを加工します。あくまで試作品って事なので材料にはちょっと良いものを使っておきたいよね。
というわけで、収納にある鉄塊に炭を混ぜて鋼にしてみようと思います。
炭素の含有量2%未満だったはずなので、炭から炭素を抽出して鉄塊に2%を超えない様に混ぜます。以前鉄板を作った時には、魔力枯渇でぶっ倒れたけど、今は平気になったみたいね。
あとは全体的に均一化して…出来た!鋼の塊!
この鋼から、まずは車軸に接続する内側を作っていきます。車軸は木材だから、ストッパーで固定できる様に加工します。
次に外側のケースを加工…って、中にグリスみたいな潤滑剤を入れなきゃいけない事に気付きました。天然のグリスか…都合のいい物が浮かばない。
とりあえずグリスは棚上げして形だけ作りますか。
中に入れる円筒の元にする鋼の丸棒を作り、等間隔に切り離します。
それぞれの部品を組み合わせたら、なんちゃってベアリングの出来上がりです。
うん、噛み合わせもなくてちゃんと回ります。
あとはグリスと耐久性かな。今日のところはここまでにしておきますか。
「ユーマ君、今回は何を作ってるんだい?腕輪かなにかにしかみえないんだが。
それに、鋼なんてどこで手に入れたんだい?ドワーフの秘伝だし、ガルドの街に、鋼を扱うドワーフはいなかったはずなんだけど…」
「これベアリングって言って、車軸の軸受けに取り付けて、回転の摩擦を減らす部品なんだよね。
材料の鋼は作り方知ってたから、あとはいつものようにに魔力でこねこねと」
「あははっ!ユーマ君は相変わらず非常識だねぇ。ドワーフの秘伝まで知ってたのか」
秘伝なんだね。知りませんでした。
確かに、鋼を作るには合金比を知らないとダメだけどさ、それだけの事を秘密にしても仕方ないよなぁ…
「ドワーフ族にとって、ある意味生命線だからさ。ユーマ君もドワーフに命を狙われない様に気をつけて?」
…おうふ。それほどでしたか。
みんなのお腹も落ち着いたみたいなので、恒例のお風呂タイムといきましょう。
エリーヌはどうするだろうね?
エリーヌに、巴が進化した過程を説明してあげると、彼女は興奮した様子です。
「偶然とは言っても、そのようにスレイプニル程の魔獣を作り上げる技術を、開発した事に価値がありますわ!
スレイプニル騎兵団を作れば、大陸制覇だって可能になるかもしれませんもの。
そうすれば、一歩平和に近づくではないですか!」
「そもそも、その考え方が嫌いなんだよね。平和の為に戦争するなんて、本末転倒もいいところだと思うし。
それに技術って程確立してる訳じゃない。スレイプニル因子を持ってる馬を見つける手段がある訳じゃないんだよ?魔力の過剰摂取で、何頭の馬が犠牲になるのかわからないのに。
エリーヌは、いるかわからない因子持ちの馬が見つかるまで、彼等を虐殺したいの?」
「いえっ!そんな事は…」
否定の言葉を言ってはみても、結局はそこまで考えが回っていなかったってだけだよね。
その辺りの感覚は、現場にいる人じゃなきゃわからない事だと思うし、理想を語る人ほどその傾向があるんじゃないかな。
「僕が情報としても公開したくないって思うのは、やっばりエリーヌと同じ様に考える人がいるだろうな、ってのが理由なんだよね。
収納の件も同じだよ。知れば利用したくなる。それが利己的な欲望がきっかけだったとしても、みんなの為に力を使うべきだとか、自分さえ良ければいいのかとか、お題目をつけて犠牲を強いるんだ。
それを言った本人は、自分を正当化してるから余計にタチが悪い。
だから僕は、エリーヌに奴隷化の魔法を使わせて貰ったんだよ」
「わたくしは信用されていないのですね?」
「そういう事だよ。エリーヌが言った、領民の為にって気持ちが偽りだって思ってるわけじゃない。
エリーヌは多分、結果として犠牲を強いる事になる誰かの事にまで、考えが及んではいないって思ったからね」
自分の為にせよ、他の誰かの為にせよ、自分以外に犠牲を強いるんだったら、せめて罪悪感は感じてくれないと報われないと思うからね。
「信用しては頂けないのでしょうか?」
「無くした信用を取り戻すのは、簡単じゃないって。
ただ、エリーヌはこれから一緒に旅するつもりなんでしょ?だったらチャンスは少なくないと思うよ?
僕は奴隷が欲しいわけじゃない。グラルだって、そうする以外に方法がなかったから進んで奴隷になったんだから」
俯くエリーヌが、何を考えてるかはわからないけど、せめて僕が伝えたい事が理解出来てる事を期待するしかないよね。
エリーヌの対応で、余計な時間を使っちゃった。そのせいで、ちょっと馬車の改装までは時間が足りなさそう。
仕方ないから、とりあえベアリングだけでも試作してみなきゃね。
確かにベアリングは、使用度合いに応じて摩耗しちゃうはず。だから今回は強度よりも作り易さを重視して、摩耗による劣化にはベアリング全体の交換で対応するべきだね。
作り易さを考えた場合、直径が同じ円柱のころを作るほうが難易度的に低いはず。
まずはケースを加工します。あくまで試作品って事なので材料にはちょっと良いものを使っておきたいよね。
というわけで、収納にある鉄塊に炭を混ぜて鋼にしてみようと思います。
炭素の含有量2%未満だったはずなので、炭から炭素を抽出して鉄塊に2%を超えない様に混ぜます。以前鉄板を作った時には、魔力枯渇でぶっ倒れたけど、今は平気になったみたいね。
あとは全体的に均一化して…出来た!鋼の塊!
この鋼から、まずは車軸に接続する内側を作っていきます。車軸は木材だから、ストッパーで固定できる様に加工します。
次に外側のケースを加工…って、中にグリスみたいな潤滑剤を入れなきゃいけない事に気付きました。天然のグリスか…都合のいい物が浮かばない。
とりあえずグリスは棚上げして形だけ作りますか。
中に入れる円筒の元にする鋼の丸棒を作り、等間隔に切り離します。
それぞれの部品を組み合わせたら、なんちゃってベアリングの出来上がりです。
うん、噛み合わせもなくてちゃんと回ります。
あとはグリスと耐久性かな。今日のところはここまでにしておきますか。
「ユーマ君、今回は何を作ってるんだい?腕輪かなにかにしかみえないんだが。
それに、鋼なんてどこで手に入れたんだい?ドワーフの秘伝だし、ガルドの街に、鋼を扱うドワーフはいなかったはずなんだけど…」
「これベアリングって言って、車軸の軸受けに取り付けて、回転の摩擦を減らす部品なんだよね。
材料の鋼は作り方知ってたから、あとはいつものようにに魔力でこねこねと」
「あははっ!ユーマ君は相変わらず非常識だねぇ。ドワーフの秘伝まで知ってたのか」
秘伝なんだね。知りませんでした。
確かに、鋼を作るには合金比を知らないとダメだけどさ、それだけの事を秘密にしても仕方ないよなぁ…
「ドワーフ族にとって、ある意味生命線だからさ。ユーマ君もドワーフに命を狙われない様に気をつけて?」
…おうふ。それほどでしたか。
みんなのお腹も落ち着いたみたいなので、恒例のお風呂タイムといきましょう。
エリーヌはどうするだろうね?
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