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第四章 プラム村
第97話
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ザール商会の馬車が護送車に変わり、犯罪者となった元の持ち主を、バーナムへと運び去って行きました。
「ユーマ様、不埒者の処置はあれで良かったでしょうか?わたくしとしては、この場で斬首も有り得たもので」
「それは構わないけど、さっきのザールって人は知り合いじゃなかったの?あっさり不敬罪とか言ってたけど」
「屋敷に出入りを許されただけにもかかわらず、わたくしに息子を押し付けようと画策するような下らない男ですわっ!
ちょうど良い機会になったと思います」
貴族の感覚って馴染まないなぁ…
「ユーマ!行きましょ?」
あ、ネルが呼んでる。正直助かったよ。 エリーヌの件は一旦棚上げしておきます。
「なんとなくエリーヌに丸め込まれそうな雰囲気だったわね?
あの子、もし今解放なんてしたら、とんでもない事しかねないと思うんだけど」
「うん、同感。頭の回転が速いから口が達者っぽい。どこまで信用していいもんなのか判断つかないよ」
「そうね。私にもまだ判断出来そうにないわ。しばらく様子見しましょ。
それより今夜はどうするの?巴も馬車も優秀だから、グアドラを通過しても多分まだ明るいわよ」
そうなんだよね。ノエル馬車馬具店謹製のこの馬車は、板バネサスペンションの効果で揺れにくいからか、非常にスムーズに進みます。
もちろん、巴のパワーと耐久力があっての事ではあるんだけどさ。
恐らく、普通の馬車の5割増しでも問題なく走りそうな雰囲気があるから、逆に耐久性に不安があるようにも思います。
車軸の磨耗にも気をつけてメンテナンスしないといけない、と言われてたような気もするし。
あ、思い付いた!確か車軸の軸受けってボールベアリングが使われてたはず。仕組みはわかるし材料も多分大丈夫。あとは魔力制御さえ上手く出来て、ベアリング球を量産出来るなら作る事可能だよね。
馬車の改良をして、整備記録をつけておけば、板バネの情報と併せてフィードバック出来るなあ。
ただし、加工精度が相当安定しないと、実用と普及には届かないだろうけどさ。作る価値はあるか。
「今ちょっと作りたいもの思い付いたからさ、グアドラを通過したら街道を外れて野営しようか」
「なに何?また変な物作る気じゃないでしょうね?」
相変わらずネルの評価がひどいです。
「最近まともなやつ作ってるじゃん。給湯器とかさ」
「ユーマ君?とかって他に何があるんだい?」
「え?何って…………なんだろう?」
マイラさんに言われて思い出すけど、特になかった事に愕然としたよ。僕って不用品しか作ってなかったのか…
「ま、まぁ、その、魔導給湯器は凄いものだよ?
それにユーマ君なら、きっとまだまだ役に立つモノを作れるさ!大丈夫!」
今はその慰めがツライです…
僕がすみっこで膝を抱えてる間にも、馬車は順調に進みます。
橋を渡って3時間強で、前方に長閑な雰囲気の村が見えて来ました。近づくにつれて、草原は小麦や野菜の畑に変わり、農作業をしている人の姿もちらほら見かけられます。
村は、自然石を積み上げて作られた壁と、木組みの壁で外周を囲い、街道から分岐した道の先には、武装した門番が入り口を警備しているのが見えます。寄らないけど。
村への分岐を過ぎる時、静かにしていたエリーヌが唐突に宣言しました。
「わたくし、諦めますわっ!」
「どうしたんだい?急に」
「マイラ様、わたくし迷っておりましたの。ネールドリア様のお言葉を信じるべきかどうかを。
騙されている可能性も疑っておりました。
ですから、村長に違法奴隷の話をして、ユーマ様には解放して貰うつもりでいたんですの。
でも、村は通り過ぎました。
もうわたくしにチャンスはありませんもの。何処か知らない場所で売り飛ばされても構いませんわ」
…おうふ。全然信用されてないし。
まぁ、気持ちはわからなくもないけどさ。
「エリーヌ君、自棄になる必要はない。もちろんアタシだって素直に信用しろなんて言わない。
ただ、今そうやって語る事が出来る事実をよく考えてみるといい。違法奴隷に自分の言葉を語らせる主人はいないだろ?
ユーマ君は、キミが奴隷でいる必要がなくなれば、そんな契約は破棄してくれる人だよ。まぁ、これからよく見て感じていけばいいだけさ」
「マイラ様は信用してらっしゃるのですね。
わたくしにはまだ疑う気持ちがあります。疑ったまま見させていただきますわ」
「アタシはそれでいいと思うよ。自分が一番信用出来るからね」
エリーヌには悪いことしたなぁとは思うけど、僕もネルも彼女を信用してないからねぇ…
マイラさんが緩衝材になってくれて助かります。
「旦那、このまま街道進むと森に入るみたいですぜ?どうします?結構深めの森ですね」
「そうなの?どうしようかな。拠点出す場所を作るの大変なんだよなぁ…
いや、やっぱり木材も確保しときたいし、素材も集めときたいから森に入ろう。入ったらしばらくしたところで一旦止まってね」
「承知しやした。巴ちゃん、もうひと頑張り頼むぜ」
巴はまだまだ元気いっぱいといった感じだけどね。
でも、一日中頑張ってくれたからゆっくり休ませてあげたいな。
「ユーマ様、不埒者の処置はあれで良かったでしょうか?わたくしとしては、この場で斬首も有り得たもので」
「それは構わないけど、さっきのザールって人は知り合いじゃなかったの?あっさり不敬罪とか言ってたけど」
「屋敷に出入りを許されただけにもかかわらず、わたくしに息子を押し付けようと画策するような下らない男ですわっ!
ちょうど良い機会になったと思います」
貴族の感覚って馴染まないなぁ…
「ユーマ!行きましょ?」
あ、ネルが呼んでる。正直助かったよ。 エリーヌの件は一旦棚上げしておきます。
「なんとなくエリーヌに丸め込まれそうな雰囲気だったわね?
あの子、もし今解放なんてしたら、とんでもない事しかねないと思うんだけど」
「うん、同感。頭の回転が速いから口が達者っぽい。どこまで信用していいもんなのか判断つかないよ」
「そうね。私にもまだ判断出来そうにないわ。しばらく様子見しましょ。
それより今夜はどうするの?巴も馬車も優秀だから、グアドラを通過しても多分まだ明るいわよ」
そうなんだよね。ノエル馬車馬具店謹製のこの馬車は、板バネサスペンションの効果で揺れにくいからか、非常にスムーズに進みます。
もちろん、巴のパワーと耐久力があっての事ではあるんだけどさ。
恐らく、普通の馬車の5割増しでも問題なく走りそうな雰囲気があるから、逆に耐久性に不安があるようにも思います。
車軸の磨耗にも気をつけてメンテナンスしないといけない、と言われてたような気もするし。
あ、思い付いた!確か車軸の軸受けってボールベアリングが使われてたはず。仕組みはわかるし材料も多分大丈夫。あとは魔力制御さえ上手く出来て、ベアリング球を量産出来るなら作る事可能だよね。
馬車の改良をして、整備記録をつけておけば、板バネの情報と併せてフィードバック出来るなあ。
ただし、加工精度が相当安定しないと、実用と普及には届かないだろうけどさ。作る価値はあるか。
「今ちょっと作りたいもの思い付いたからさ、グアドラを通過したら街道を外れて野営しようか」
「なに何?また変な物作る気じゃないでしょうね?」
相変わらずネルの評価がひどいです。
「最近まともなやつ作ってるじゃん。給湯器とかさ」
「ユーマ君?とかって他に何があるんだい?」
「え?何って…………なんだろう?」
マイラさんに言われて思い出すけど、特になかった事に愕然としたよ。僕って不用品しか作ってなかったのか…
「ま、まぁ、その、魔導給湯器は凄いものだよ?
それにユーマ君なら、きっとまだまだ役に立つモノを作れるさ!大丈夫!」
今はその慰めがツライです…
僕がすみっこで膝を抱えてる間にも、馬車は順調に進みます。
橋を渡って3時間強で、前方に長閑な雰囲気の村が見えて来ました。近づくにつれて、草原は小麦や野菜の畑に変わり、農作業をしている人の姿もちらほら見かけられます。
村は、自然石を積み上げて作られた壁と、木組みの壁で外周を囲い、街道から分岐した道の先には、武装した門番が入り口を警備しているのが見えます。寄らないけど。
村への分岐を過ぎる時、静かにしていたエリーヌが唐突に宣言しました。
「わたくし、諦めますわっ!」
「どうしたんだい?急に」
「マイラ様、わたくし迷っておりましたの。ネールドリア様のお言葉を信じるべきかどうかを。
騙されている可能性も疑っておりました。
ですから、村長に違法奴隷の話をして、ユーマ様には解放して貰うつもりでいたんですの。
でも、村は通り過ぎました。
もうわたくしにチャンスはありませんもの。何処か知らない場所で売り飛ばされても構いませんわ」
…おうふ。全然信用されてないし。
まぁ、気持ちはわからなくもないけどさ。
「エリーヌ君、自棄になる必要はない。もちろんアタシだって素直に信用しろなんて言わない。
ただ、今そうやって語る事が出来る事実をよく考えてみるといい。違法奴隷に自分の言葉を語らせる主人はいないだろ?
ユーマ君は、キミが奴隷でいる必要がなくなれば、そんな契約は破棄してくれる人だよ。まぁ、これからよく見て感じていけばいいだけさ」
「マイラ様は信用してらっしゃるのですね。
わたくしにはまだ疑う気持ちがあります。疑ったまま見させていただきますわ」
「アタシはそれでいいと思うよ。自分が一番信用出来るからね」
エリーヌには悪いことしたなぁとは思うけど、僕もネルも彼女を信用してないからねぇ…
マイラさんが緩衝材になってくれて助かります。
「旦那、このまま街道進むと森に入るみたいですぜ?どうします?結構深めの森ですね」
「そうなの?どうしようかな。拠点出す場所を作るの大変なんだよなぁ…
いや、やっぱり木材も確保しときたいし、素材も集めときたいから森に入ろう。入ったらしばらくしたところで一旦止まってね」
「承知しやした。巴ちゃん、もうひと頑張り頼むぜ」
巴はまだまだ元気いっぱいといった感じだけどね。
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