転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第四章 プラム村

第95話

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 とりあえず昼食を終え、再び馬車に乗り込みます。
 グラルに合図を送ると、すぐに小さく頷いて馬車を動かし始めました。

 「エリーヌ、ここからグアドラまではあとどれくらいか知ってる?」

 「えぇ、もちろんですわ。橋までおよそ1時間、渡ってから5時間もあれば十分着きます」

 それだけあれば説明出来るなぁ。

 「エリーヌ、今から秘密にしてる事を明かしていくから覚悟してね?」

 「わかりました…」

 さて、何から話すのが無難かな…

 「じゃあ、最初はマイラさんね。マイラさんはルフ王国の王女様です」

 「えっ?…えぇぇ!?そうだったんふはやですのっ?大変なご無礼を致しました!」

 「いや、いいんだよ。そういうのはやめてくれないかい?よろしく」

 大慌てでマイラさんに平伏しちゃったエリーヌに、マイラさんが気楽に接する様に諭してる。

 「次はシアかな。シアは人族じゃないんだ。僕の従魔の1人で、水の精霊竜。水竜ルーテシアね」

 「ふぁっ!?え?あの、まさか、おとぎ話に出て来る水竜ですの?」

 「そうなんだ?僕は知らないけど。今度タイミングがいい時に、元の姿を見せてくれるよ」

 シアには反応薄めだったねぇ。あんまりピンと来てない感じなのかな?
 
 「じゃあ、今度は僕ね。僕はこのガイアスの人族じゃありません。地球って世界から、女神ネールドリアに連れて来られた異世界人です」

 「へっ?それってどういう事ですの?女神様と関係がある?」

 「まぁ、よく知ってるよ。いつも話してるし」

 ありゃ、ぽかんとしてるね。
 そりゃそうだろうなぁ…いきなり別の世界の人だとか聞かされて、あーそうなんですかとはいかないわな。 

 「じゃあ、最後はネルだね。ネル、お願い」
 
 「はいはーい。とぅ!」

 ネルに髪飾りを渡すと、何故か変身ポーズをしました。ノリ乗りなのはいいんだけどさ…
 そして光りながら元のサイズに戻るネル。

 「よろしくエリーヌ。私が女神ネールドリアよ」

 「ひぃぃぃぃ!」

 「ちょっと!なんで私の時だけ悲鳴なのよっ!納得いかないわ!」

 いや、まぁ神様だしねぇ。僕だっていきなり神様が目の前に現れたら、拝む前に悲鳴あげると思うよ?
 それにエリーヌは、わりと敬虔な女神信者っぽかったしさ。

 「…きゅう」

 あ、エリーヌが倒れた。

 「なんでよっ!私だけ悪いみたいな感じになってるじゃない!ユーマ!ほら回復!」

 仕方ないので回復の魔力をエリーヌに送ります。

 「うぅん…あっ、今寝てしまったのかしら?夢?ネールドリア様が目の前にいらっしゃった様な…」

 「まだいるわよっ!って、ほらユーマ!また飛んじゃうから!」

 エリーヌが再度気を失いかけたので、慌てて回復をかけます。

 「ネル、ごめん、一回戻ろ?話進まなくなっちゃう」

 「もう…せっかくの見せ場なのにぃー!」

 「また後でね?お願い」

 渋々といった様子を見せながら縮むネル。

 「ごめんね?エリーヌ。今見た通りなんだけど、ネルは妖精じゃなくって、ガイアスの創世神、豊穣の女神ネールドリアなんだ」

 一瞬呆けた後、平伏というよりむしろ土下座で額を床に擦り付けるエリーヌ。

 「た、た、大変なご無礼を…」

 「もういいわよ?エリーヌ。楽になさい?」

 ちみっちゃいナリのネルの声に、恐る恐る顔をあげるエリーヌ。
 その顔はとても人には見せられないくらい、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってます。

 「ねぇ?エリーヌ。ユーマが秘密にしようとしてたのは理解出来たの?
 それじゃあ、あなたにも私達の持つ1番の秘密について、私から説明するわ。聞いて…」

 ネルは、以前マイラさんに話したのと同じような話を、エリーヌに聞かせていきます。

 「…というわけなの。
 到底信じられる話じゃないだろうって思うけど、これがこの世界の真実よ」

 「まさかそんな事が…」

 「そう簡単に広められては困るのが、真実というものでもあるのよ?
 ユーマが貴女を奴隷契約までしたのは、制約魔法を反故にした場合、罰を超える程の利益をもたらすくらいの情報を、私達が持っているからって事なの。
 さっきまでの自己紹介でヒィヒィ言ってた貴女には、荷が勝ちすぎて我慢できそうにないからって、私が決めた事なの」

 さすがの女神様パワーには、エリーヌも頷くしかないだろう。

 「しかしネールドリア様、神の言葉とは言えど人族には法というものがございます。
 罪なき者を奴隷にする事を禁じる事は、神の意志に反しているのでしょうか!?」

 …すごい、この子。ネルの言葉に逆らっちゃうんだ?

 「確か人族には、教会法というのもあったわね?
 それに照らせば、神の言葉に逆らうのは最大の罪じゃなかったかしら?それだと貴女は立派な罪人よ?
 まぁ、貴女を断罪するつもりはないけど。
 それにユーマは優しいわ。
 貴女を奴隷にしなさいって私に言われても、ギリギリまでしなかったのよ?貴女が拘りを捨てさえすれば、制約魔法で済ませていたかもしれない。
 その事を考えてみなさい?」

 ネルが容赦ないです。でも言ってる事は間違ってないと思うんだよなぁ。
 あとは、エリーヌが変わってくれるまでは、厳しくするしかないのかも。

 「…うぅ。ハイネン家の娘たるわたくしが奴隷だなんて」

 まだ貴族の立場というかプライドに拘ってるみたいだね。これは村に入ったら問題起こしそうな予感しかしないよ…。
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