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第三章 バーナムの街

第87話

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 僕がネルとマイラさんに挟まれている頃、グラルが巴に声を掛けていました。

 「巴嬢、風呂はどうだい?俺っちも旦那のおかげですっかり風呂の虜になっちまってさ」

 「うん!超気持ちいい!風羽花ちゃんに教えてもらって、すっごく気になってたから!旦那様最高!」

 「俺っちが背中擦ってやるよ。ほら向こうむいて」

 グラルの場合ちょっとだけ下心が見えてるけど、あの2人はこれからコンビで馬車を走らせるから、ぜひ仲良くなって欲しいし、いいよね。

 「あっ、気持ちいい。もう少し強めでもいいかも」

 「こんな感じかい?」

 「うん!いい感じ!ありがとうグラルさん」

 巴も特に嫌がる素振りもないみたいね。まぁ、知識がないから、そういうもんだって思ってるんだろうけどさ。
 一応グラルには、後で話しとけば大丈夫でしょ。

 そんな2人を余所に、僕の両脇ではネルとマイラさんが色々張り合っています。

 「ネル様はズルいです!なんですかその武器!そりゃアタシにはないですよ?
 だからってそんなにアピールとかしなくても!」

 「ふふん。私も普段はちみっちゃいからこうでもしないとアピール出来ないのよね。
 アンタは無いなりにいつでも自由にできるじゃない?
 さっきの事だって、知らないわけじゃないのよ?」

 「な、なんで知ってるんですかっ?うぅ…まさかアレを見られてたなんて…」

 …あのぅ、後にして貰えませんかねぇ?心が死んじゃう。

 「私はまだ制限時間が短いから無理なのよねぇ。だからそれまではアンタが優先でいいわよ?
 後はたまにシアも混ぜてあげなさいよね。あの子もユーマ大好きなんだから」

 「うぅ…恥ずかしい。けどわかりました。その辺りはちゃんと話します」

 僕、真ん中で置いてきぼり中…

 「それにしても、ほんとちょっとの間に賑やかになったわね。最初は私とユーマの2人だったんだから。
 ここにあの男爵の娘が加わるのよね?予定通り奴隷化するのも含めて、ユーマはあの子をどう扱うのか決めた?」

 ねぇ、急に振らないでくれない?今、瀕死のハートを回復させるから、お待ちくだされ。

 「うーん…連れて行くって話を受けてから時々考えてたんだけどさ、僕自身の考えが二転三転って感じなんだよね。
 完全に奴隷化しちゃっていいのかとか、奴隷化するのもグラル位の軽いやつにするのか、ブランデルのおっさんみたいにするのかとかさ」

 「そうなんだ?まぁ、なりゆきでいいと思うわよ?
 あの子がどんな目的を持たされてくるかにもよると思うし。
 仮に、あわよくばユーマを取り込もうとか、秘密を盗むためとかみたいな理由なら、マイナス要素しかないお荷物じゃない?
 そしたら処分しちゃいましょうよ」

 …わーい、物騒な女神様がいるー

 「流石に処分ってアレだけどさ、とりあえず預かる時に男爵にはクギは刺しとこうとは思ってる。
 危険は承知しといて貰わないと、こっちの身が保たないし。
 その上で、彼女自身の意思を見極めて対応するしかないのかもなぁ…」

 「そうね。なるようにしかならないし、なんたって、ユーマにはガイアスの主神たる私がついてるのよ?
 私が白って言ったら、カラスも白なんだから!
 私が認める限り、ユーマが何をしてもそれは絶対の正義って思っておきなさい。
 まぁ、やり過ぎは罪だけど」

 最後!その最後がダメだから!罪って言うなし…

 「ともかく、アナタのしたい様にしなさい?
 さぁ、そろそろ上がりましょ?ほんと気持ちよかったわぁ。
 次からお風呂はこれで入るからね」

 「はいはい、そのつもりで用意しますよ。
 じゃあ、まだ入っとく人は、給湯器止めて水抜きだけしといてね!お先に上がりまーす」

 シアとグラルと巴はもう少し堪能したそうだったので、後片付けは任せて先に休ませて貰う事にします。

 久しぶりにみんなより先にベッドに入る気がするなぁ、とか考えながら横になると、マイラさんが寄り添って来ました。

 「ちょっと気恥ずかしいけど、こうしてもいいかい?そんな気分なんだ。
 …ネル様にもお許し頂けたから、いいよ?」

 …豊穣の女神様に感謝しましょう。




 朝、目を覚ますといつも通り身動きが取れない状態。
 本気でベッド拡張しよう。

 それから一つ面白かったのが、グラルと巴がくっついて寝てた事かな。昨日のお風呂で打ち解け合えたみたいで良かった。



 今日はバーナムに戻るだけなので、朝食は昨日の焼肉の残りを、野草と一緒に平パンで挟んだだけの簡単サンドで、ささっと済ませてしまいます。
 今から出れば昼前に街に戻れるしね。

 小屋を収納して、馬にチェンジした巴を馬車に繋ぐと出発準備は完了です。
 スレイプニルとなった巴は、行き道の様に文句を言う事もなく、快調に馬車を牽いて行きます。御者をしてるグラルと親しくなったおかげもあってか、機嫌も良さそうだね。

 予想通りハイペースで街道に辿り着くと、更にスピードを上げ始める巴。
 いや、危ないからやめて?
 街道には、他の馬車や旅人がいる可能性も高いので、油断したら大事故になりそう。
 グラルと巴にも、ペースは普通の馬車より少し速い程度に抑えるように伝えたんだけど、抑えながらもかなりのスピード。
 結局バーナムには、まだ昼食の準備も始まらない時間に到着する事になりました。

 さぁ、入街手続きを終えたらやる事いっぱいだね。
 ちょっと気合い入れて頑張ろう!
  
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