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第三章 バーナムの街

第85話

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 どうも!僕です。

 変な自信は持つべきじゃないですね。

 解体開始から2分。
 血の濃厚な香りに包まれ、半ば意識が飛びかけてます。
 オークの時は、戦闘直後で麻痺してたのか、わりと平気だったのになぁ…

 「このワイバーンは一応ドラゴンだからねぇ。その血にはかなり濃い魔力が含まれてるんだよ。
 ただの魔力酔いってやつだから大丈夫。解決方法は簡単さ。この血を飲んだら治る」

 …わお。

 結局一掬い飲んだら良くなりましたけどね。まだ温かい血を飲むってキツかったです…

 復活した後は、マイラさんの指導を受けながら順調に解体を進めて行きます。
 内臓系を処理する時には、ちょっと表現しにくいヤツが出てきて流石に戻しかけました。だって、消化されかけのアレとかモザイクかかるやつですって!
 なので詳細は割愛。
 マイラさん曰く、タイミング良ければ胃袋の中身も食べられる物が採れる事もあるそうです。丸呑み万歳。
 取り外した内臓は水で綺麗に洗って収納します。特に肝と心臓は価値が高いそうなので、傷が付かない様に気を付けないといけないらしいですね。
 心臓の横には、ヒトの頭より一回り大きい魔石が埋まっていました。コレ一個で地方都市なら豪邸が建つみたい。

 そしてそれ以上の発見がありました。

 「ユーマ君!これは凄いぞ!卵がある!ちょうど産む直前だったんじゃないかな?まだ中身は生きているぞ!
 とりあえず冷やさないように、すぐ収納してくれ!
 もしかしたら幼生を孵す事が出来るかもしれない」

 おぉ!それは凄いね。

 「ワイバーンの場合は割と飼育されるから、孵し方や育て方のノウハウも確立されてるんだよ。
 どうするかはまた考えておいてくれないかい?」

 そりゃもちろん孵しますって!楽しみ。



 内臓の処理が終わる頃には、既に夕方になっていました。
 マイラさんと相談した結果、途中まで皮を剥ぎ取ってから肉を一部取って後は後日回しにする事に。

 「新鮮なワイバーン肉を食べられるなんて、滅多にない事さね。
 それこそお大尽の晩餐に出される事が決まれば、参加希望の手紙が山ほど届くやつさ」

 「そんなに凄いんですか。ちなみに何処の肉にします?何ヶ所か部位を別けて切り出しましょうよ?」

 「それがいいね。そうなると尻尾と背中、胸がいいと思うよ。後は珍味だけど頬肉も取っておこうか。内臓からは横隔膜が食べるには良いと思う」

 なるほど、テールにロース、胸肉に頬肉とハラミですね。

 皮を痛めると勿体ないと言う事で、剥ぎ取りはマイラさんに全部お任せして僕は歩く保管庫に。
 結構な量を確保した感じがするけど、まだ全体の半分にもならないそうなので、また後日頑張りましょう。

 ワイバーンを収納した後、作業台をざっと水洗い。
 そこでふと気付きました。コレも収納できんじゃね?

 できるよねー。

 無事に収納できたので、次回からは広さがあれば再利用しようと思います。
 まぁ、地面には子供用の浅いプールみたいな正方形の穴があいてるけどね!



 解体の後片付けを済ませた頃には、もう日が沈む寸前でした。
 真っ暗になる前に急いで篝火を用意してしまいましょう。
 明かりを確保したら晩御飯の準備なんだけど、カマドや網、焚き木なんかを取り出したところで、シアとグラルから声がかかりました。

 「ユーマ様、準備は我とグラルがしておくのじゃ。マイラと先に風呂を済ませてくると良い。
 ほって置いたら身体中ワイバーンの血で生臭くなるのじゃ」

 「そうですぜ、旦那。準備はあっしらに任してくだせぇ。まずはさっぱりして貰わないとかないませんや」

 ありがたい申し出なのでここは遠慮なく。
 魔導給湯器のおかげで風呂の準備は楽になったんだけど、大きい湯船は流石に勿体ないので、久しぶりに最初に作った湯船を用意しました。
 頭からお湯を何度も流し掛けると、あちこちに付いていた血が流れてスッキリです。
 湯船に浸かると疲れが湯に流れ出して行くような感覚です。
 大物の解体で思った以上に疲労してたみたいだね。

 ホッと一息付いていると、背後から衣摺れの音がしてマイラさんの声が。

 「ユーマ君、アタシも一緒にいいかい?」

 もちろん拒否する手はありません。

 「済まないんだが、髪を流して貰えないかい?向こうを向いておくから」

 マイラさんの背中を見ながら、髪に何度も掛け湯をしてあげると、血汚れでゴワついていた髪が綺麗になります。
 さっぱりしたのか立ち上がったマイラさんは、僕に背中を向けたまま湯船に入ってきました。
 自然と僕の足の間に座りもたれ掛かってくるマイラさん。

 「ふぅ…ユーマ君、髪ありがとう。さっぱりしたよ…」

 一言そう言って黙るマイラさん。頭を肩に預けてクタッとしています。その仕草が可愛らしくて、思わず抱き抱えるように腕を回しました。

 「っ!……くすっ」

 マイラさんは一瞬身体をピクっとさせながらも小さく笑うと、柔らかな声で話し始めました。

 「こんな風に抱き抱えられるのも随分久しぶりだよ。でも、いいもんだねぇ…
 ネル様にも揶揄われたけど、アタシはユーマ君に惚れちまったみたいだ。
 君からしたらお婆さんみたいな歳だけど、たまにはこうして抱きしめてくれないかい?
 今凄く幸せな気持ちなんだ」

 黙ってぎゅっと抱き寄せると、マイラさんはほぅっと溜息を吐きながら僕の腕を優しく抱えました。

 「もし、欲しくなった時は求めておくれ?君もまだ若いんだから溜めすぎはよくないからね」

 …いやまぁ、ありがとうございます。
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