転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第三章 バーナムの街

第82話

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 巴には馬の姿に戻ってもらい、僕達は巨石の近くで簡単な昼食を済ませました。
 朝と同様の平パンサンド。そろそろジルさんのソースを完成させなきゃね。あと香辛料欲しい。
 ちなみに巴は、草で栄養確保は出来るもの、スレイプニルになったと言う事で肉も食べられるそうです。頼むから馬の姿で肉を欲しがらないで?

 昼ご飯を済ませた後は、街道方面に向かって移動する事に。

 巴は、馬具に文句を言う事も無く馬車を牽き始めてくれます。しかも、スレイプニルになったおかげで、行き道よりも快調なペースで進めてるんだよね。
 今、巴の背中には風羽花とネルが乗り込み、巴を交えて何やらトークで盛り上がってるみたい。
 かく言う僕はグラルとシア、マイラさんの4人で雑談タイム。
 そんな平和なひと時は銀の報告で終わりを告げました。

 『殿!周囲を哨戒している配下から連絡がありました。
 左手方向から、武装した10人程の人族がこちらに向かっているとの事でござる!』

 「ありがと、銀。配下達は相手に接触しないように気をつけて戻らせて。何者だろうね?」

 『そこまではわかりませぬ。ただ騎乗の者はおらず、全員が徒歩であると聞いたでござる』

 騎乗してないって事は騎士ではないのか…
 そうなると可能性は、冒険者のパーティかもしくは盗賊ってあたりかな?
 先制攻撃するわけにもいかないから、向こうの行動待ちするしかないのが難点だね。
 とりあえず、まずは初撃に備えておいて、それから反撃に移る方針でいこう。

 数分後辿り着いた10人は、予想していた冒険者でした。予想と全く違っていたのは彼らの第一声。

 「おおぃ!助けてくれっ!あ、いや、あんたらも逃げろ!」

 いきなり逃げろと言われましてもねぇ…

 「逃げろとは物騒な話じゃの?何があったのじゃ?」

 「飛竜ワイバーンだ!俺たちを狙ってやがる!せめてどこか障害物がある所にでも逃げないとダメだ!」

 「ふん、おおかた親飛竜の留守に卵泥棒でもしたんじゃないのかい?全く報酬に釣られるアホ共が。
 悪い事は言わないよ、盗んだ卵をそっと置いていくんだねぇ」

 マイラさんの言葉に動揺を隠せない様子の冒険者達。
 完全にやらかしてんじゃん。それなら自業自得だからなぁ…助ける気にもならないや。

 「部外者が勝手な事言ってんじゃねぇ!俺達だって生活がかかってんだよ!」

 「ならば、そちらこそ勝手にすれば良かろ?我等に付き合う理由はないのじゃ。
 ほれ、とっとと去れ。そこに居られては、我等まで卵泥棒の仲間と勘違いされるじゃろ」

 「クッソ!テメェ等の顔は覚えたからなっ!いつか街で見かけたらタダじゃ済まさねぇ!
 って、行くぞ!時間無駄にしちまった!急げ!」

 捨て台詞を投げた連中は、どうやら僕達がいた遺跡っぽい巨石へ向かうようです。
 隠れてやり過ごすつもりか、障害物を盾に飛竜ワイバーンと戦うつもりなのかは知らないけど。

 「マイラさん、その飛竜ワイバーンの卵って高く売れる物なの?10人で行動しても赤字にならないって事だよね?」

 「そうか、ユーマ君なら知らなくてもおかしくないねぇ。
 アレの卵には使い途がいくつかあるのさ。それはね…」

 飛竜ワイバーン
 マイラさんの説明によれば、下位のドラゴンだと言う人もいるが、複数の種類がいるんだそうです。
 ブレス攻撃が出来る種類は下位のドラゴンで、ブレスの吐けない種類については、形が似ているだけの羽根が生えたでっかいトカゲらしい。
 当然、下位のドラゴンである方は、それなりの脅威度であり、その属性に応じたブレス攻撃をしてくる難敵という認識。その上知性も高い為に狩るのが難しい反面、卵から孵して子供から育てる事により、騎竜として使う事も可能なんだって。
 一方、大羽根トカゲである方は、基本的な攻撃手段が噛みつき、爪撃、尻尾での薙ぎ払いだけのため、力のある冒険者であれば単独で狩る事も可能なんだそうな。
 ただ、どちらの種類にせよ、その卵は高級食材として非常に人気があり、王侯貴族のパーティなどではメインの一角を張る程。
 そのため、多少の危険を覚悟で採取に向かう冒険者も少なくないそうです。

 「親の姿を見てないから判断は難しいけど、さっきの連中を見た感じだと、多分羽根トカゲを狙ってたんじゃないかねぇ。
 それ程腕が立つようにも見えなかったし」

 ただし注意しなきゃいけない事があるんだって。
 それは、どちらの種類の飛竜ワイバーンでも、巣作りの習性や、卵の形状に大きな差がないって事。
 もちろん、鑑定に長けた人は見分ける事が可能なんだけど、そうじゃない場合はトカゲ狙いでドラゴンの方の巣を漁って、あっさり全滅させられるケースも少なくないみたい。

 「さっきの連中が、下位のドラゴンの巣を引き当ててないとは言えないからねぇ。
 せめて卵を置いて逃げれば、アタシならどっちか判断出来たんだけど。
 まぁ、どっちの飛竜ワイバーンも性格的に相当しつこいし、卵に関しての執着は特に凄いからねぇ」

 とか話してると上空に大きな影。
 あ、来たね。真っ直ぐさっき連中の向かった先を目指してるみたい。
 もう少し出発が遅かったら巻き込まれてたパターンだわ。


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