転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

文字の大きさ
上 下
83 / 170
第三章 バーナムの街

第81話

しおりを挟む
 今回の名付けはちょっと難題です。
 女の子と、じゃじゃ馬と、愚痴っぽいって要素が、どうしても頭から離れてくれません。
 なんかいいのないかなぁ…
 馬、じゃじゃ馬…うーん。そうだなぁ…おっ!閃いた!

 「決めた!君の名前は巴だ!」

 はい。巴御前から頂きました。
 かの木曽義仲の奥さんで、女騎馬武者として名を馳せた巴御前。
 美人だけど気が強くて、女性ながらも戦場を駆け巡ったその人。
 ぴったりじゃない?

 「なんだか由来のありそうな名前ね。でもいいんじゃない?どう?巴?」

 彼女は嬉しそうに嘶きながら頭を上下しました。

 「気に入ったって。よかったじゃない。でもなんで巴には念話しないのよ?ふーちゃんとか銀みたいに」

 「まだ迷ってるんだよね、実は。
 ほら、ここに来る前、風羽花と話してたみたいでさ、風羽花の話の感じ結構愚痴っぽかったみたいだから」

 「そうなの?それなら私が少し話してみるわ。大丈夫そうなら話せる様にしてあげなさいよ?」

 そう言うとネルは、彼女に乗って何やらトークを始めた模様です。どんな話してんだろうね。

 「お待たせ。話はついたわ。確かにアンタの想像は間違いではなかったわね。
 まぁ世間知らずだってのもあったし、今までで、馬以外で意思疎通が出来たのがふーちゃんが初めてだったから、つい愚痴っぽくなっただけだって言ってるから、見逃してあげなさいな」

 「そう?まぁネルがそう言うならいいけど…」

 一応女神様のお墨付きだからなぁ。というわけで、いつもの魔力を集中して巴にぶつけます。

 「巴。改めましてよろしくね」

 『はい!旦那様!ウチは誠心誠意旦那様に尽くしますから!
 ウチが愚痴言っちゃったのは、他の馬がお馬鹿さんばっかりで、特に若い馬とかいっつも交尾する事しか頭になくって、ウチが近づくとすぐに鼻息荒くして交尾しよ交尾しよって、そればっかりだったからほんとウンザリしてて、風羽花ちゃんが話聞いてくれて嬉しくって、ネル様も話聞いて下さって、ウチの居場所は絶対旦那様のトコしかないって思って…』

 …ネルさんや?

 「…ごめん」

 『あ、ウチってば自分の事ばっかりでごめんなさい!ずっとずっとストレスが溜まりまくってて、やっと解放されるんだぁって思ったらもう嬉しくって嬉しくって、あぁもうとまんないです。
 それにスレイプニルになってわかったんだけどね、ウチってば馬の姿にも人の姿にもなれるみたいで、だから旦那様のお役にもたてるし、旦那様にだったらウチの初めてもあげちゃってもいいかなって、ヤダ、ウチ何言っちゃってんだろ、恥ずかしいわぁもうっ!』

 …ネルさんや?

 「だからほんとごめんって…」

 まぁいいや、やっちまったものは仕方ない。潔く諦める事にしましょう。
 っていうか、さりげなくすごい情報を口走ってた様な気がするんだけど…

 「巴?ちょっと黙ろうか」

 『…それでですね、ウチってば…ぅひっ!?あ、はい!黙ります!』

 あ、一応止まれるんだ?そこはひと安心です。

 「そりゃアンタ、その威圧でとまらなかったら病気よ?」

 知らない間に魔力で威圧していた模様です。
 まぁ結果として止まったのでいいってことで。

 「巴さぁ、さりげなく口走ってたけど変身出来るの?」

 『あ、はい!出来ると思われます!』

 とりあえず確認してみないとかな。

 「じゃあさ、普通の馬の姿になってみてくれるかな?」

 『はい!いきます!』

 巴が返事すると同時に、身体が淡く光って、そこには普通の馬に見える巴がいました。

 「おぉ!すごいすごい!全然違和感ないよ!どのくらいそうしていられそう?」

 『この姿のまま一生いることも出来ると思います!走ったり馬車を牽くのも大丈夫かな』

 それなら問題なさそうだね。とりあえず、目立つ場所で行動するときには、この姿でいて貰えば不審感を持たれる事はないはず。
 さて、それよりも気になるのは人の姿だよね…

 「そしたら、人の姿になってみてくれるかな?」

 『はーい!わかりました!』

 巴が返事するなり、さっきよりも明るい光に包まれ、それが収まると、予想通り一糸纏わぬ姿で立つ美少女が姿を表しました。

 背が高いな。それにどちらかといえば筋肉質で引き締まっていて、いわゆるアスリート体型ってやつ。それもゴツゴツしたボディビルダーではなく、ムダな贅肉はないモデルさんの体みたい。
 しかも、女性を主張する双丘は、手の平には収まらないほどのボリュームがありながら、全く重力に負けてないと言わんばかりのハリで、かなりの存在感。
 体色は、少し日焼けしたのかなって思うくらいの薄い小麦色で、馬らしい痕跡は何故かポニーテールに纏まった焦げ茶色の髪。
 全体としては健康優良美少女って感じです。

 「どうですか?変じゃないです?」

 おぉ!声もなかなか聴きやすいアルトボイスだね。でも、シアみたいな艶はなく健康的な印象。

 「ふーん、なかなかいいじゃない。馬面だったらどうしようかしらって思ってたんだけど。これなら街に入るのも大丈夫そうね」

 「ありがと、巴。もういいよ。グラルもガン見しないの!」

 「…いい。どストライクっす。こんなかわいい子の牽く馬車の御者をするんすね。絶対ムチは使わねぇっすわ」

 …はいそこ。ムチって言葉に反応しない!

 「いや、もういっそ我が馬に変化する修行をしようかと…」

 …シアが牽いたらワザとムチ貰う様に動いて、マトモに進まないに決まってるし。巴の邪魔にしかならないから要りません。

 でもよく考えてみると、グラルの件と巴の件とどちらもバーナムの街に帰ったら、きちんと処理しなきゃいけないよね。
 まぁなんとかなるか。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...