転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第三章 バーナムの街

第72話

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 「ハイネン男爵はどこまで信用出来ると思う?」

 そんな僕の問い掛けに対して、ネル達の意見は実に辛辣でした。

 「貴族なんて上っ面の生き物よ?言葉を額面通りに受け取るなんて、お馬鹿さんがする事ね」

 「ユーマ君の口からそんな言葉が出てくるとは、全く思いもしなかったよ。
 人族の中で信頼出来るのは、奴隷契約を結んだ相手だけだ」

 「我はヒトならぬゆえ、信用についてはわからぬよ。じゃけど、繋がりの強さと信頼性の強さは同じであろ?ユーマ様との繋がりなんて紙より薄いじゃろうに」

 みんな共通して、信用するもんじゃないと思ってました。

 確かにシアの言う様に、今のこの縁は、一瞬だけのものだって思う方が確実なんだろうね。
 って事は、みんなの安全を優先した行動を取るべきだろうなぁ。 
 とすれば、一番確実なのはすぐにでも出発する事かな。ほんと言えば今晩も食事なしで辞去したいくらい。

 まぁ流石に、面子を潰す様な事をすれば後が怖いのが貴族って事らしいので、今夜は諦めるとして、明日には出立すると伝えよう。

 しばらくすると、ノックの音と共にアリーナさんの声が。

 「皆様。晩餐のお席が整いましたので、一階食堂までお連れ致したく参りました。
 主人より、気張らず参加して欲しい、との言伝を預かっております」

 気張らずってドレスコードの事を指しているらしく、お召し物はそのままでって言われたんだけど、パーティー用の衣装なんてものはありませんので大丈夫。

 アリーナさんに連れられて食堂に入ると、驚く事に男爵一家が既に席に着いています。あれ?普通こういう時って後から来るもんじゃないの?

 「ユーマ君。驚かせた様で申し訳ないね。少々、無作法にはなるんだが、大切な家族を救って貰った恩人に、敬意を払わせて貰ったよ。
 さぁ、席に着いてくれたまえ。
 それから、この席は身内の席であるから作法マナーについては気にせずともよいよ」

 「気を遣って頂き、ありがとうございます。しがない平民ですので不作法を心配しておりました。
 お目溢し下されば幸いです」

 「では、はじめようか。食べながらであるが、わしの家族を紹介させてくれ」

 男爵の合図とともにメイドさん達が次々と皿を運んで来ます。
 前菜、サラダ、スープと続くなか、とにかくいちばん驚いたのは、全てネルにも用意されてるって事だった。裏を読んじゃうよね。

 「ユーマ君、向かって右側から紹介しようか。まずはわしの正妻のレイラ。長女のエリカ、次女のフローラだ。その隣が二番目の妻のジェシカ、最後が長男のエリックだ。
 良かったら君の仲間も紹介してくれないか?」

 みんな名前を呼ばれると、軽い会釈をしてくれたんだけど、やっぱり正妻のレイラさんと娘2人は、僕と目を合わそうとはしなかったです。
 逆にジェシカさんとエリック君は、時折こっちをキラキラした目で見つめて来たりもするので、それはそれで落ち着かなかったりもしました。

 「わかりました。ではまず、僕がユーマです。訳あって素性はお伝え出来ないのはご容赦下さい。それで隣から順に護衛のシア、妖精族のネル、エルフ族のマイラさんです。
 この度は、偶然のご縁にも関わらずご招待ありがとうございます。有り難く一泊も頂戴致します」

 「一泊と言わず、キミの好きなだけ滞在してくれて構わんよ?旅の話なども聞かせて欲しい」

 うーん…表情からは裏はわからないんだよなぁ。普通に和かに見える。でも信用はしないと決めたんだから。
 正直言えば、ネル達と打ち合わせしてなかったら流されてる自信あるけどね。

 「大変有り難いお誘いなんですが、期日のある旅の途中でございますので」

 「それは残念だが、またこの街に寄る時には、我が門を訪ねてはくれないか?
 ユーマ君には、今日だけではとても返し切れない借りを作ってしまったからね」

 「その折は是非ともよろしくお願いします」

 こんなとこが無難な落し所じゃないかな?男爵もそれ以上被せて来なかったし。

 料理は、メインからデザートへと進んでいます。
 ネルががっついてるんだよなぁ…あなた自分が女神様って忘れてないかい?

 「コレ美味しい!こんなの初めて食べたわっ!」

 「はっはっは!妖精の郷にはなかったかな?
 わしもまさかこうして妖精と話す事になるとは思いもしなかったぞ。
 郷は近くにあるんだろうか?随分前に絶滅したかもしれないと聞いておったしな。
 よかったらデザートのお代わりも出そう。
 妖精の郷の話を聞かせてくれまいか?」

 「お代わりするわっ!でも私は記憶がないのよ。自分がどこから来たのかとかも全然覚えてないの。だからユーマの旅にくっついて探すの」

 あ、一瞬男爵の表情が変わった気がする。
 ネルの言葉に少しだけイラついた様な顔にならなかったかな?
 今見ても全然わからないけど…
 どうなんだろう?思い過ごしならいいけどね。

 それからは特に不審な様子もなく晩餐は終わりました。

 「ユーマ君、この後談話室を開ける。ジェシカも君に直接お礼がしたいそうでな。
 お連れ方も同席してもらってもかまわないし、先に休んでもらってもいい」

 「私達は、先に部屋で休ませて頂きます。男爵様、お招き下さりありがとうございました」

 マイラさんが、シアとネルを連れて部屋に戻る事を伝えてくれました。別行動に若干の不安はあるけど、シアもいるし大丈夫かな。
 僕も油断しないようにしないとね。
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