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第三章 バーナムの街

第66話

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 盗賊達はすっかり勝った気でいるみたいです。

 シアに短剣を当てた男は、しゃがむシアの後ろに立つと、無遠慮にシアの胸に手を伸ばし握るように揉みだしました。

 「うおっほっ!すっげぇな!なんて乳してやがんだよこの女!
 こりゃカシラも喜ぶぜ!いや、その前に味見しちまうか」
 
 ずいぶん勝手な事を言ってます。

 「そんなにかよ!俺にも廻せよな」

 「俺はあっちのまな板がいい…」

 「うぅ…やめるのじゃ。あの人の前で…」

 なんかノリノリで、シアが演技を始めたんだけど…

 「やっぱりあの優男がお前の男か?あんな細っこいヤツには味あわせらんねぇ経験させてやるよ」

 「どうかあの人の前は…それだけは許して…」

 …なんの茶番だよ?
 ちょっとイラッとしてきたので、そろそろ終わらせようと思います。

 連中の死角になる位置を視認、そこに3つの水球を作り上げます。よし完成。
 それぞれの水球で、連中の頭を包むだけの簡単なお仕事です。はい作業終了!



 「ねーユーマぁ、もうちょっと見たかったわー」

 …なぜかネルには好評だったようです。

 「どうじゃった?我の演技どうじゃった?迫真の演技じゃったろ?我もなかなかやるじゃろ?」

 「はいはい。えらいえらい。ちょっと先にコイツら拘束するからまた後でねー」

 「ちょっとどういう事だい?演技って何?
 それにあの水球…アタシにもわかるように説明してくれないかねぇ?」

 そっか、マイラさんはマジのピンチだと思ってたんだっけ。まぁ彼女のおかげで成功したのかもしれないしなぁ。

 というわけで盗賊達を縛り上げながら、さらっと説明しました。

 「そもそもシアにあんな矢が刺さるわけないでしょ?シアが竜だって忘れてません?」

 「ぐむっ…確かに言われてみれば…」

 「打ち合わせしてなかったけど、ネルはちゃんとわかってましたよ?」

 まぁマイラさんは、ある意味普通の思考の持ち主だから、仕方ないかもしれないけどね。
 っていうか、ネルがすごい。

 「だって絶対あり得ない状況じゃない。考えなくてもわかるわよ」

 あ、マイラさんがガチ凹みした。と思ったらすぐに復活。

 「確かにっ!アタシの認識が甘かったのは認めるよっ!
 けど、アレはなんだい?あの水球!急に現れて!ユーマ君がしたのはわかるけど、あんな魔法は知らないねぇっ!」

 「それはユーマだもの。慣れなさいよ」

 あーあ、ネルがまた凹ました。

 「うぅ…慣れます、慣れますけど説明を…」

 「マイラさんも出来ます。
 マイラさん、魔法の発動位置って指先とか目の前って決め付けてませんか?
 他の場所でも、イメージさえ出来れば指定出来るんですよ?
 試してみて下さい、本当に簡単ですから」

 「そんな事言われたって…水球ウォーターボールっ!………出来た……ははっ。
 なんで?わけわかんないよ…」

 「その辺りの細かい話は野営の時にでも。
 それより、先にコイツら処理しちゃいましょう?遅くなると、色々面倒事が増えますから」

 そうだ、昼ごはんも食べないで来ちゃったし、さっさと拠点アジトを吐かせて殲滅しなきゃ。夕食がまた質素になっちゃうからね。



 「がはっ…痛え。なんだこれ?どういう事だ?っ!テメェ!さっきの優男?うぐっぁ」

 シアに男の関節を決めて貰いながら尋問します。

 「改めまして。さっきはよくも僕の持ち物に手を出してくれたね?
 今から、少しずつ全身をこの子に咬みちぎってもらうんだけどね、その間にお前等の事を質問していくよ。もちろん痛みに耐えて話さなくてもいい。
 まぁ他の2人が話せば、咬まれ損になるかもしれないけど。
 じゃあ、まずはシアに不快な思いをさせたお返しに、右耳を貰おうかな。銀やって」

 『承知!』

 銀は小さく吼えると、躊躇いなく男の耳を咬みちぎりました。

 『不味いでござるよ』

 「ごめんな、銀。もうちょっとだけ協力して」

 耳をちぎり取られた男は、恐怖心と激痛でか震え始めています。

 「次は腕の筋肉を削ぎ取る。銀、噛み切る手前までゆっくり力を入れて」

 「ひいっ!痛い痛い痛いぃぃあぁぁぁっ!」

 男は二の腕に牙を突き立てられて絶叫しました。

 「さて、質問だ。仲間はここに居る以外に何人いる?素直に言えば見逃してやるよ」

 「言えば見逃してくれるんだな?わかった言う!じ、15人だ!ウソじゃない!」

 人数については、信用する必要もないので質問を続けます。

 「それで拠点アジトの方向と距離は?」

 「左手側の森の奥に岩山がある!そこに洞穴があるんだ!ここから1時間はかからないはずだ!」

 証言を聞き出した男を、再度水球で窒息させて意識を飛ばします。念のため腕の傷は回復しておきましょう。もちろん耳はそのままだけどね。
 残り2人も、順番に意識を回復させてから同じ様に尋問してみると、証言に嘘はなかったようで、2人ともから同じ回答が得られました。
 再び意識飛ばされた3人を、きつく拘束して目立たない様に隠して、おいていきます。帰りに回収するの忘れないようにしないとね。


 「風羽花、悪いんだけどコイツらの言ってた岩山を探してくれるかな?森の中飛びにくいかもだけど」

 『ふうかは森はとくいなのです!いってくるです!』

 風羽花が飛び立った後、銀達狼にも匂いによる追跡をお願いして、僕達も森に入る事にしました。

 さすがに整備された道と違い、岩や木の根があちこちから張り出し、日が当たらない地面には苔やシダの類が多くあって、なかなか大変な道中です。

 しばらく森を進むと、風羽花から洞穴発見の知らせがあり、戻って来た風羽花に確認すると間もなくのようです。

 さっきよりも慎重に足を進めると、不意に人の声が聞こえました。
 どうやら到着したようです。
 さて、殲滅しますか。
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