64 / 170
第ニ章 ガルドの街
第62話
しおりを挟む
「ユーマ君。コレはなかなかいい買物だよ。真銀ってのは魔力親和性が高いから貴重なんだ。
確かに付与はないから、このままだとムダに高い装飾品でしかないんだけどねぇ。
この先、王都やルフ王国に行けば付与術士もいるから、持ち込みで付与すれば、価値は倍以上だ」
市場を歩きながらマイラさんが教えてくれました。
付与術士ってのがいるんだね。そういえば僕も保冷庫用に石版に冷す効果とか付けてたから、多分そんな感じなんだろうね。
「私の欲しいのはそれじゃなかったのに!」
ネルから苦情が入りました。
「ごめんネル。でもコレもネルには似合うと思うよ?元が美人さんだから何付けてもプラスにしかならないし」
「あ、当たり前じゃない!女神様なんだから。
ま、まぁ今回は我慢してあげるわっ」
チョロいです。
市場を進むとちょうど店並の終わりに、穀物なんかを扱っているお店がありました。店頭には小麦や乾燥豆などが袋で積み上げてあります。
「いらっしゃい!何しましょ?」
元気な声のおばちゃんが声をかけて来ます。
「えーと、小麦とこの豆と…あ、アレもしかしてコーヒー?」
「これかい?そうだよ。いい薫りしてるだろ?上物さ」
どうやら先日のレストランで飲んだのはソレだったようです。知ってるコーヒー豆とは別物ですが香りは間違いなくコーヒーです。
「そしたらそのコーヒーも下さい」
「コレは安くないよ?一袋で金貨2枚だ。小麦と豆とあわせて全部で金貨3枚だね」
胡椒なんかもそうだけど、嗜好品っていうのは高いんだね。でも買っちゃう。食生活が豊かになるんだからさ。
というわけで全部購入。
収納のおかげで荷物にもならないしね。
とりあえず一通り眺めて見て、欲しいものは購入したし、思わぬ掘り出し物も、マイラさんのおかげで入手出来たって事で市場を後にします。
もうそろそろ日が天頂に差し掛かる時間になってきました。
最後は一応冒険者ギルドで、出発前の情報収集をして街を出ようと思います。
ギルドに着くと、昼前という事もあってか人影も疎らです。
受付カウンターにはソフィさんの姿があったので、彼女に声をかけてみましょう。
「ユーマ様。冒険者ギルドへようこそ。ご用件を承りますね」
「これから王都方面に出発するんですけど、注意情報とか、隣街の情報って教えて貰えますか?」
「そうなんですね!ほんとその節はご迷惑をおかけした上に、大変お世話になった方ですから寂しく思います。
この先の道中のご無事をお祈りいたしますわ。
ご要望の資料をあちらのブースにお届けしますので、お座りになってお待ち下さい」
ありがたいことに資料を見せて貰えるみたい。マイラさんの情報を補完するのにちょうどいいね。
ほどなくソフィさんにより届けられた資料を、マイラさんが中心になって確認しました。
王都方面は全体的に起伏の少ない平原となっており、途中森を抜ける部分があるものの、あまり脅威となる魔獣などは現在確認されていないようです。
ここ半年ほどは盗賊などの出没情報もないようなので、気楽な道中になるかもしれないね。
隣町までは歩きで3日。途中キャンプするのが基本で、街道も川に沿って延びているようなものなので、補給には特に問題もなさそうです。
ただマイラさん曰く、途中の森には稀に大物が住み着いたりする事も過去あったそうなので油断だけはしないようにしないとね。ちょっと興味あるけど。
ざっと把握したのでソフィさんを呼んで資料を返却しようとした時に、ジークロフトさんがホールに顔を出してこちらに気がついたようです。
「ユーマ殿!考えなおさないか?ユーマ殿ならこのギルドのトップ冒険者としてやっていける!なんとか残…」
「りませんってば!行かなくちゃいけないですって言ったじゃないですか…」
「やっぱりそうだよなぁ…わかってはいたんだが。ともかく道中の無事を祈る。
隣街のギルドにも寄ってみてくれ。あそこのギルマスは昔馴染みだ。俺の名前出せば少しはマシな話も聞けると思う」
「わかりました。タイミング良ければ寄ってみます。ジークロフトさんとお会いできて良かったです」
出口まで見送ってくれましたが、特に良い思い出はないんだよね、ここ。
「これでこの街にはもう用事はないかな?マイラさんも大丈夫?」
「あぁ問題ないよ。素材屋が閉まって困る冒険者は多少居るだろうけど、売り先はほかにもあるからね。
そろそろ出発しないと、キャンプの場所が半端なところになりそうだ」
「よし、じゃあ出発しよっか!」
初めて来た時は東門から街に入って来たんだけど、王都方面は北門になるみたいです。
外観はほぼ違いもなく、開けられた門にはやはり守衛が立ち、北から来る人を確認しています。
流石に王都方面からとは言え、ここは辺境の街。それ程沢山の人が来るわけでもないらしく、行商人と護衛らしい集団の他には人影はありませんでした。
石畳の敷かれた街道を歩き始めてしばらくすると、銀が良く通る声で一鳴き。すぐに草原から三匹の狼がやってきます。
マイラさんは一瞬身構えちゃいましたが、配下とわかって落ち着いたみたいです。
…伝えるの忘れてました。ごめんなさい。
これで全員集団。数日ぶりの旅路につくのでした。
この先には何が待ち構えているのか、楽しみでしかたありませんね!
確かに付与はないから、このままだとムダに高い装飾品でしかないんだけどねぇ。
この先、王都やルフ王国に行けば付与術士もいるから、持ち込みで付与すれば、価値は倍以上だ」
市場を歩きながらマイラさんが教えてくれました。
付与術士ってのがいるんだね。そういえば僕も保冷庫用に石版に冷す効果とか付けてたから、多分そんな感じなんだろうね。
「私の欲しいのはそれじゃなかったのに!」
ネルから苦情が入りました。
「ごめんネル。でもコレもネルには似合うと思うよ?元が美人さんだから何付けてもプラスにしかならないし」
「あ、当たり前じゃない!女神様なんだから。
ま、まぁ今回は我慢してあげるわっ」
チョロいです。
市場を進むとちょうど店並の終わりに、穀物なんかを扱っているお店がありました。店頭には小麦や乾燥豆などが袋で積み上げてあります。
「いらっしゃい!何しましょ?」
元気な声のおばちゃんが声をかけて来ます。
「えーと、小麦とこの豆と…あ、アレもしかしてコーヒー?」
「これかい?そうだよ。いい薫りしてるだろ?上物さ」
どうやら先日のレストランで飲んだのはソレだったようです。知ってるコーヒー豆とは別物ですが香りは間違いなくコーヒーです。
「そしたらそのコーヒーも下さい」
「コレは安くないよ?一袋で金貨2枚だ。小麦と豆とあわせて全部で金貨3枚だね」
胡椒なんかもそうだけど、嗜好品っていうのは高いんだね。でも買っちゃう。食生活が豊かになるんだからさ。
というわけで全部購入。
収納のおかげで荷物にもならないしね。
とりあえず一通り眺めて見て、欲しいものは購入したし、思わぬ掘り出し物も、マイラさんのおかげで入手出来たって事で市場を後にします。
もうそろそろ日が天頂に差し掛かる時間になってきました。
最後は一応冒険者ギルドで、出発前の情報収集をして街を出ようと思います。
ギルドに着くと、昼前という事もあってか人影も疎らです。
受付カウンターにはソフィさんの姿があったので、彼女に声をかけてみましょう。
「ユーマ様。冒険者ギルドへようこそ。ご用件を承りますね」
「これから王都方面に出発するんですけど、注意情報とか、隣街の情報って教えて貰えますか?」
「そうなんですね!ほんとその節はご迷惑をおかけした上に、大変お世話になった方ですから寂しく思います。
この先の道中のご無事をお祈りいたしますわ。
ご要望の資料をあちらのブースにお届けしますので、お座りになってお待ち下さい」
ありがたいことに資料を見せて貰えるみたい。マイラさんの情報を補完するのにちょうどいいね。
ほどなくソフィさんにより届けられた資料を、マイラさんが中心になって確認しました。
王都方面は全体的に起伏の少ない平原となっており、途中森を抜ける部分があるものの、あまり脅威となる魔獣などは現在確認されていないようです。
ここ半年ほどは盗賊などの出没情報もないようなので、気楽な道中になるかもしれないね。
隣町までは歩きで3日。途中キャンプするのが基本で、街道も川に沿って延びているようなものなので、補給には特に問題もなさそうです。
ただマイラさん曰く、途中の森には稀に大物が住み着いたりする事も過去あったそうなので油断だけはしないようにしないとね。ちょっと興味あるけど。
ざっと把握したのでソフィさんを呼んで資料を返却しようとした時に、ジークロフトさんがホールに顔を出してこちらに気がついたようです。
「ユーマ殿!考えなおさないか?ユーマ殿ならこのギルドのトップ冒険者としてやっていける!なんとか残…」
「りませんってば!行かなくちゃいけないですって言ったじゃないですか…」
「やっぱりそうだよなぁ…わかってはいたんだが。ともかく道中の無事を祈る。
隣街のギルドにも寄ってみてくれ。あそこのギルマスは昔馴染みだ。俺の名前出せば少しはマシな話も聞けると思う」
「わかりました。タイミング良ければ寄ってみます。ジークロフトさんとお会いできて良かったです」
出口まで見送ってくれましたが、特に良い思い出はないんだよね、ここ。
「これでこの街にはもう用事はないかな?マイラさんも大丈夫?」
「あぁ問題ないよ。素材屋が閉まって困る冒険者は多少居るだろうけど、売り先はほかにもあるからね。
そろそろ出発しないと、キャンプの場所が半端なところになりそうだ」
「よし、じゃあ出発しよっか!」
初めて来た時は東門から街に入って来たんだけど、王都方面は北門になるみたいです。
外観はほぼ違いもなく、開けられた門にはやはり守衛が立ち、北から来る人を確認しています。
流石に王都方面からとは言え、ここは辺境の街。それ程沢山の人が来るわけでもないらしく、行商人と護衛らしい集団の他には人影はありませんでした。
石畳の敷かれた街道を歩き始めてしばらくすると、銀が良く通る声で一鳴き。すぐに草原から三匹の狼がやってきます。
マイラさんは一瞬身構えちゃいましたが、配下とわかって落ち着いたみたいです。
…伝えるの忘れてました。ごめんなさい。
これで全員集団。数日ぶりの旅路につくのでした。
この先には何が待ち構えているのか、楽しみでしかたありませんね!
0
お気に入りに追加
536
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる