転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

文字の大きさ
上 下
62 / 170
第ニ章 ガルドの街

第60話

しおりを挟む
 「マイラさん。まずはこれを見て下さい」

 僕はネルに付けた魔力の羽根を解除します。

 「羽根が消えた!?確かに妖精じゃないって言ったけど…」

 「改めて紹介します。ネルこと豊穣の女神ネールドリア様です」

 「…えぇっ!?」

 そりゃそうなるよね、ネルちみっちゃいし。

 「うるさいわね!見てなさいよ!」

 そういうなりネルの身体が神々しい光に包まれました。

 …えっ!?まじすか?
 光が収まると、そこには僕と同じくらいの身長にまで大きくなったネルがいました。

 「マイラ、改めましてネールドリアよ。今はこれが限界なの。貴女の賢明な判断に期待しています」

 そういうなりまた縮むネル。

 「あー、これきっついわぁ…当分このままでいくわよ?」

 「ネールドリア様なんですか?信じられない…
 でもお姿は伝わるそのままだった…」

 「マイラ?あなたもネルって呼ぶようにしてね?あと極端な敬語も辞めて。
 じゃあ、ユーマと私の目的を話すわ…」

 ネルは僕にしたのとほぼ同じ話をマイラさんに伝えます。

 「それが私達の秘密。あなたの秘密と比べてどうかしら?」

 「そんな事って…」

 「すぐには信じられないとは思うの。
 でもね、あなたにもユーマの持つ力はわかっているはずよ?
 どうしてなのかは私にもわからない。ユーマがガイアスについて無知で、しかも想像力が豊かなのが影響してるのかもしれない。
 でも、コイツの行動がガイアスにプラスに働いてるのだけは間違いなくわかるの。なにせ私ってば女神様だから」

 ちょっとだけディスられてるのは僕にもわかります。

 「アタシにもネル様の言われる事はわかります。ただ、それを飲み込む器がアタシには無い…」

 「あなたには見届けて欲しいの。
 あなた達エルフ族、その中でも王族に連なるハイエルフ種であるあなたになら、ユーマが生涯を終える最期の瞬間まで見続ける事が可能だわ。
 もちろんコイツのトンデモ能力で、想定よりも早く目的を達成するかもしれないけれど」

 チクチク心を抉るのはやめて下さい。

 「それがアタシの役割…」

 「そうよ。どうかしら?引き受けては貰えない?
 まぁダメならユーマの変態魔法でガッチガチに制約かけてあげるけど」

 ネルがシリアスの間に挟む精神攻撃で、僕のライフがゴリゴリ削られていきます。誰か助けて。

 「滅びは避けられるのですね?アタシにその過程を後に伝えろと…?」

 「そこまでは望まないわよ。純粋に私の愛し子に知っていて欲しいだけ。人知れずこの世界を救った英雄がいたって事をね」

 「…………わかりました。ハイエルフの名にかけてこの役目果たさせていただきます」

 僕が地味にダメージを蓄積している間に、ネルはマイラさんの説得に成功したようです。

 「そしたら街に戻りましょ?マイラは旅立つ準備をしなさいよね?明日には街を出るつもりだから」

 「明日!?せめてもう少し余裕を…荷物整理の時間を貰えないでしょうか?店の処分もしないといけないですし」

 「何よ?そんな事なら今日のウチに終わるから大丈夫よ!」

 「えぇ……」



 街に戻った僕達はマイラさんの店に向かいます。

 「マイラ、必要無い物はいずれ処分すれば良いわ。
 自分で持っておきたい物だけまとめておきなさい?もし忘れてたら言ってくれたら良いから」

 「旅の荷物は常に纏めてあります。
 ただここには、処分するわけにいかないものもあるもので…」

 「纏めてあるなら問題ないわよ?じゃあユーマ!やっちゃってー!」

 へいへい、わかってますよぅ。片っ端から収納するだけの簡単なお仕事ですってね。

 「ユーマ君!?まさか全部…」

 はいお終い。時間ある時に整理してもらわないとなぁ…

 「まさか、こんな事が…有り得ない」

 「マイラさん、あとはお店の処分?売りたくないなら管理させるけどどうする?」

 「戻って来た時にせめて店だけでもあるといいけど…」

 「それなら管理委託させた方がいいね。マイラさんも付いて来て下さい」



 僕達はブランデル商会へやって来ました。
 ミレイさんが丁度閉店準備をしていたので、ブランデルを呼ぶ様に頼みます。

 「また貴様か。今度はなんの用事だ?ワシは貴様になど用はないぞ」

 「明日からマイラさんの素材屋の維持管理をしてくれ。
 方法は任せる。費用はブランデルが出しておいて。これが鍵ね。
 あー、あと維持管理するって内容の契約書類を今すぐ作って」

 「わかった。書類はちょっと待て。作ってくる」

 そう言ってブランデルは執務室に向かいます。

 「ブランデルのやつが費用まで持つの?あの守銭奴で最低のやつがなんで…」

 「あいつも真っ当(な奴隷)になったのよ。ユーマの力でね」

 完全な違法奴隷ですけどねっ!

 「そ、そうなの?もうなんだか訳がわからないよ…」

 「さぁ、出来たぞ。今日はもう店仕舞いなんだ。さっさと帰ってくれ」

 ミレイさんに見送られて店を出た所で、マイラさんがハッと気づいた様に声をあげました。

 「そうだ!?アタシはどこで寝ればいいんだろう?
 すっかり忘れてたんだが…こんな時間から宿探しか」

 「私達と一緒に来なさいよ?マーサの宿に泊まればいいじゃない?うちの部屋ならベッドも空いてるわ」

 「ユーマ君、そんなに大きい部屋を借りてるのかい?」

 マイラさんの疑問はもっともです。まぁ見当違いなんだけどさぁ…

 「行けばわかります。今日から宿代は僕が持ちますんで行きましょうか。さすがにお腹が空いて来ましたしね」

 「ありがとう。世話になるよ」



 「1人追加ってマイラさん?あの部屋だとさすがに狭くない?」

 メアリが受付しながら不安げに僕を見ています。そりゃ、ツインだもんね。大人3人だったら狭いって思うよなぁ…

 「3人がダメってわけじゃないよね?どうにでもなるから大丈夫だよ。
 マイラさんは一泊だから料金はいくら?」

 「料金は一部屋計算だから、3人の時は朝食代の大銅貨1枚なんだけど、ユーマさんにはリボン貰ったり色々ご馳走してもらったからさ、追加無しでいいよ。
 多分ママもそれでいいって言うと思う」

 せっかくの好意だし、ここは素直に甘えておこう。もしマーサさんからダメ出し来たら明日払えばいいかな。

 マイラさんの手続きを済ませた後は、みんなで食堂へ。今夜はマイラさんの歓迎会も兼ねて、お腹いっぱい食べよう。
 明日の出発に影響しないようにはしなきゃね。



しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...