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第ニ章 ガルドの街

第60話

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 「マイラさん。まずはこれを見て下さい」

 僕はネルに付けた魔力の羽根を解除します。

 「羽根が消えた!?確かに妖精じゃないって言ったけど…」

 「改めて紹介します。ネルこと豊穣の女神ネールドリア様です」

 「…えぇっ!?」

 そりゃそうなるよね、ネルちみっちゃいし。

 「うるさいわね!見てなさいよ!」

 そういうなりネルの身体が神々しい光に包まれました。

 …えっ!?まじすか?
 光が収まると、そこには僕と同じくらいの身長にまで大きくなったネルがいました。

 「マイラ、改めましてネールドリアよ。今はこれが限界なの。貴女の賢明な判断に期待しています」

 そういうなりまた縮むネル。

 「あー、これきっついわぁ…当分このままでいくわよ?」

 「ネールドリア様なんですか?信じられない…
 でもお姿は伝わるそのままだった…」

 「マイラ?あなたもネルって呼ぶようにしてね?あと極端な敬語も辞めて。
 じゃあ、ユーマと私の目的を話すわ…」

 ネルは僕にしたのとほぼ同じ話をマイラさんに伝えます。

 「それが私達の秘密。あなたの秘密と比べてどうかしら?」

 「そんな事って…」

 「すぐには信じられないとは思うの。
 でもね、あなたにもユーマの持つ力はわかっているはずよ?
 どうしてなのかは私にもわからない。ユーマがガイアスについて無知で、しかも想像力が豊かなのが影響してるのかもしれない。
 でも、コイツの行動がガイアスにプラスに働いてるのだけは間違いなくわかるの。なにせ私ってば女神様だから」

 ちょっとだけディスられてるのは僕にもわかります。

 「アタシにもネル様の言われる事はわかります。ただ、それを飲み込む器がアタシには無い…」

 「あなたには見届けて欲しいの。
 あなた達エルフ族、その中でも王族に連なるハイエルフ種であるあなたになら、ユーマが生涯を終える最期の瞬間まで見続ける事が可能だわ。
 もちろんコイツのトンデモ能力で、想定よりも早く目的を達成するかもしれないけれど」

 チクチク心を抉るのはやめて下さい。

 「それがアタシの役割…」

 「そうよ。どうかしら?引き受けては貰えない?
 まぁダメならユーマの変態魔法でガッチガチに制約かけてあげるけど」

 ネルがシリアスの間に挟む精神攻撃で、僕のライフがゴリゴリ削られていきます。誰か助けて。

 「滅びは避けられるのですね?アタシにその過程を後に伝えろと…?」

 「そこまでは望まないわよ。純粋に私の愛し子に知っていて欲しいだけ。人知れずこの世界を救った英雄がいたって事をね」

 「…………わかりました。ハイエルフの名にかけてこの役目果たさせていただきます」

 僕が地味にダメージを蓄積している間に、ネルはマイラさんの説得に成功したようです。

 「そしたら街に戻りましょ?マイラは旅立つ準備をしなさいよね?明日には街を出るつもりだから」

 「明日!?せめてもう少し余裕を…荷物整理の時間を貰えないでしょうか?店の処分もしないといけないですし」

 「何よ?そんな事なら今日のウチに終わるから大丈夫よ!」

 「えぇ……」



 街に戻った僕達はマイラさんの店に向かいます。

 「マイラ、必要無い物はいずれ処分すれば良いわ。
 自分で持っておきたい物だけまとめておきなさい?もし忘れてたら言ってくれたら良いから」

 「旅の荷物は常に纏めてあります。
 ただここには、処分するわけにいかないものもあるもので…」

 「纏めてあるなら問題ないわよ?じゃあユーマ!やっちゃってー!」

 へいへい、わかってますよぅ。片っ端から収納するだけの簡単なお仕事ですってね。

 「ユーマ君!?まさか全部…」

 はいお終い。時間ある時に整理してもらわないとなぁ…

 「まさか、こんな事が…有り得ない」

 「マイラさん、あとはお店の処分?売りたくないなら管理させるけどどうする?」

 「戻って来た時にせめて店だけでもあるといいけど…」

 「それなら管理委託させた方がいいね。マイラさんも付いて来て下さい」



 僕達はブランデル商会へやって来ました。
 ミレイさんが丁度閉店準備をしていたので、ブランデルを呼ぶ様に頼みます。

 「また貴様か。今度はなんの用事だ?ワシは貴様になど用はないぞ」

 「明日からマイラさんの素材屋の維持管理をしてくれ。
 方法は任せる。費用はブランデルが出しておいて。これが鍵ね。
 あー、あと維持管理するって内容の契約書類を今すぐ作って」

 「わかった。書類はちょっと待て。作ってくる」

 そう言ってブランデルは執務室に向かいます。

 「ブランデルのやつが費用まで持つの?あの守銭奴で最低のやつがなんで…」

 「あいつも真っ当(な奴隷)になったのよ。ユーマの力でね」

 完全な違法奴隷ですけどねっ!

 「そ、そうなの?もうなんだか訳がわからないよ…」

 「さぁ、出来たぞ。今日はもう店仕舞いなんだ。さっさと帰ってくれ」

 ミレイさんに見送られて店を出た所で、マイラさんがハッと気づいた様に声をあげました。

 「そうだ!?アタシはどこで寝ればいいんだろう?
 すっかり忘れてたんだが…こんな時間から宿探しか」

 「私達と一緒に来なさいよ?マーサの宿に泊まればいいじゃない?うちの部屋ならベッドも空いてるわ」

 「ユーマ君、そんなに大きい部屋を借りてるのかい?」

 マイラさんの疑問はもっともです。まぁ見当違いなんだけどさぁ…

 「行けばわかります。今日から宿代は僕が持ちますんで行きましょうか。さすがにお腹が空いて来ましたしね」

 「ありがとう。世話になるよ」



 「1人追加ってマイラさん?あの部屋だとさすがに狭くない?」

 メアリが受付しながら不安げに僕を見ています。そりゃ、ツインだもんね。大人3人だったら狭いって思うよなぁ…

 「3人がダメってわけじゃないよね?どうにでもなるから大丈夫だよ。
 マイラさんは一泊だから料金はいくら?」

 「料金は一部屋計算だから、3人の時は朝食代の大銅貨1枚なんだけど、ユーマさんにはリボン貰ったり色々ご馳走してもらったからさ、追加無しでいいよ。
 多分ママもそれでいいって言うと思う」

 せっかくの好意だし、ここは素直に甘えておこう。もしマーサさんからダメ出し来たら明日払えばいいかな。

 マイラさんの手続きを済ませた後は、みんなで食堂へ。今夜はマイラさんの歓迎会も兼ねて、お腹いっぱい食べよう。
 明日の出発に影響しないようにはしなきゃね。



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