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第ニ章 ガルドの街
第58話
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「アタシが受けた依頼ってのは、例によって薬の調合さね。
それも滅多にない特殊な薬さ。とある病の進行を止める、あるいは品質によっては特効薬にもなるってシロモノなんだよ。
その薬の原料として、今足りないものが2つ。
それをユーマ君に入手して欲しいってのがアタシの頼みさ」
「そういう採取系ならギルドに依頼を出したらいいんじゃないんですか?
なんで僕を探してまで?」
「普通ならそうする。リミットはまだ先だからね。
だけど理由があるのさ。1つは依頼元がアタシにとって本当に大切な人だって事。リミットが先だからといって、病が進行するのは良くないし出来れば完治させたい方なんだよ。
もう一つの理由が、ユーマ君の収納さね」
なるほど。
完治させるためには高品質な薬が必要で、それを作るためには材料の鮮度が重要だってことだね。
僕の収納が時間経過を遅らせる特別な性能だって事は、マイラさんにはバレてたもんなぁ。
つまり僕が原料を入手すれば、必然的に新鮮な原料を手に入れられるってマイラさんは思ったんだろう。
「まさにその通りだよ。
どうかな?引き受けては貰えないだろうか?お礼はアタシが受け取る事になる報酬の半分をユーマ君に渡すと約束する」
「必要な2つがなんなのかって事によります。
それが僕でも入手出来るものであれば、心情的には引き受けたいと思ってますよ」
「やはり当然そうなるよな。1つは比較的容易く見つかるだろう。だがもう1つは…」
途端に言い澱むマイラさん。そんなに厳しいのか…
「この街でも何度か目撃されているから、恐らくそれ程遠くない場所にいるはずなんだが、水の精霊竜・水竜ルーテシアの鱗だ」
…あ、今ここにいますわソレ。
「探すのに時間がかかってしまう可能性は高い!それでもなんとか新鮮な鱗を持って帰れるのはユーマ君しかいないんだ!
だからお願いだ、どうか引き受けて…」
「あの…マイラさん。秘密守れます?」
「は?」
僕達は、マーサさんを手伝いに行くメアリだけ宿に送り届けると、街を出て黄昏時の草原を暫く進みます。
「ねぇ、ユーマ君。そろそろいいんじゃないかい?
ここまでくればゴブリン位しかいないんだ。その秘密とやらを教えてもらえないかい?」
「そうですね…でも、本当に守れますか?」
「もちろんさ!エルフの誇りに誓って秘密は守る!」
エルフの誇りに誓ってって言われてもなぁ…
「ユーマ、エルフの誇りに誓うっていうのはね、誓いをやぶったら両耳を斬り落として喉を潰す事でエルフとして生きる事をやめるって決意なの。信じてあげなさいよ」
「そっか、わかったよ。シア、やってくれ」
「うむ、わかったのじゃ」
瞬間、シアの身体が光り何日かぶりの水竜の姿を取り戻しました。
「…ふへぇっ?」
凄い美人のマイラさんが、ちょっと表現に困るような顔になってます。
「マイラさん、改めて紹介します。シアこと水竜のルーテシアです」
「…えぇぇぇぇぇぇっ!!!」
しばらく呆けていたマイラさんも、どうにか我を取り戻したようで、逆に物凄いテンションで喜び続けています。
「奇跡だよ!まさかこんな事が起きるだなんて!きっとネールドリア様が慈悲を下さったんだね!」
…あ、ソレもここにいますわ。しかも慈悲っていうかちょびっと助言しただけです。
はいそこ。何を偉そうな顔してんだい?
「いいじゃないそれくらい!」
しばらくして興奮も収まった様子のマイラさんが僕に頭を下げてくれました。
「ほんとうにありがとう!確かにとんでもない秘密だったよ。
それなのにアタシなんかの為に…君には感謝してもしきれないよ!あとは彼女から鱗を頂いて、もう1つの材料の辛味人参さえ入手したら薬が作れる!
あぁなんて幸運なんだ!」
「もう1つの辛味人参って言うのはどんな素材なんですか?」
「あぁそうだったね。辛味人参っていうのは清潔な水が豊富にあって、かつ魔力の濃い場所でしか育たない人参さ。
面白い事に、植物なのに引き抜くと暴れるんだよ。しかも暴れると薬効成分が失われてしまうっていう厄介な性質でね」
…ん?どっかで見たような
…あ。謎人参!
「マイラさん、コレですか?」
「そうそう!それだよ!そんな風にジタバタして…えっ?えぇぇぇぇ!?
なんで?なんであるのよっ?あっダメ暴れたら成分が!」
「こうすると止まります」
葉をもぎ取ると大人しくなる謎人参改め辛味人参。
「そうなのっ!?知らなかったわ…」
「こうしてもしばらく経つと辛味が無くなっちゃうんで、薬味にする時は出来るだけ早目に擦り下ろすのがおススメですね」
「まさか薬味にするなんて…」
調剤師のマイラさんには、薬味に使うって発想は無かったらしく、唖然としています。
「そうだ!それが必要なんだよ!君はどこで採取したんだい?すぐにでも取りに…」
「あ、まだいっぱいあります。採りたてのやつ」
「あ、あるのかい…?
ユーマ君、君に頼んだらこの数時間で全部解決してしまったよ…」
じゃあ、辛味人参は大丈夫かな。
そしたらシアから鱗を採取しなきゃね。…かなり不安。
『さあ、どこでも良いのじゃ。プチっとやっておくれ!』
…なんでノリノリなんだよ。はぁ…いくか。
『あっ!うひっ!はぁん!…あひっ!ふあっ!』
…全身毟り取ってやろうかな。
「ユーマ君…もう十分すぎると思うんだ」
『はぁん…もっと毟って欲しいのじゃ!もう少しだけぇ…』
うん。知ってたよ。こうなるの…
マイラさんの店からずっとウキウキしてやがったからな!
それも滅多にない特殊な薬さ。とある病の進行を止める、あるいは品質によっては特効薬にもなるってシロモノなんだよ。
その薬の原料として、今足りないものが2つ。
それをユーマ君に入手して欲しいってのがアタシの頼みさ」
「そういう採取系ならギルドに依頼を出したらいいんじゃないんですか?
なんで僕を探してまで?」
「普通ならそうする。リミットはまだ先だからね。
だけど理由があるのさ。1つは依頼元がアタシにとって本当に大切な人だって事。リミットが先だからといって、病が進行するのは良くないし出来れば完治させたい方なんだよ。
もう一つの理由が、ユーマ君の収納さね」
なるほど。
完治させるためには高品質な薬が必要で、それを作るためには材料の鮮度が重要だってことだね。
僕の収納が時間経過を遅らせる特別な性能だって事は、マイラさんにはバレてたもんなぁ。
つまり僕が原料を入手すれば、必然的に新鮮な原料を手に入れられるってマイラさんは思ったんだろう。
「まさにその通りだよ。
どうかな?引き受けては貰えないだろうか?お礼はアタシが受け取る事になる報酬の半分をユーマ君に渡すと約束する」
「必要な2つがなんなのかって事によります。
それが僕でも入手出来るものであれば、心情的には引き受けたいと思ってますよ」
「やはり当然そうなるよな。1つは比較的容易く見つかるだろう。だがもう1つは…」
途端に言い澱むマイラさん。そんなに厳しいのか…
「この街でも何度か目撃されているから、恐らくそれ程遠くない場所にいるはずなんだが、水の精霊竜・水竜ルーテシアの鱗だ」
…あ、今ここにいますわソレ。
「探すのに時間がかかってしまう可能性は高い!それでもなんとか新鮮な鱗を持って帰れるのはユーマ君しかいないんだ!
だからお願いだ、どうか引き受けて…」
「あの…マイラさん。秘密守れます?」
「は?」
僕達は、マーサさんを手伝いに行くメアリだけ宿に送り届けると、街を出て黄昏時の草原を暫く進みます。
「ねぇ、ユーマ君。そろそろいいんじゃないかい?
ここまでくればゴブリン位しかいないんだ。その秘密とやらを教えてもらえないかい?」
「そうですね…でも、本当に守れますか?」
「もちろんさ!エルフの誇りに誓って秘密は守る!」
エルフの誇りに誓ってって言われてもなぁ…
「ユーマ、エルフの誇りに誓うっていうのはね、誓いをやぶったら両耳を斬り落として喉を潰す事でエルフとして生きる事をやめるって決意なの。信じてあげなさいよ」
「そっか、わかったよ。シア、やってくれ」
「うむ、わかったのじゃ」
瞬間、シアの身体が光り何日かぶりの水竜の姿を取り戻しました。
「…ふへぇっ?」
凄い美人のマイラさんが、ちょっと表現に困るような顔になってます。
「マイラさん、改めて紹介します。シアこと水竜のルーテシアです」
「…えぇぇぇぇぇぇっ!!!」
しばらく呆けていたマイラさんも、どうにか我を取り戻したようで、逆に物凄いテンションで喜び続けています。
「奇跡だよ!まさかこんな事が起きるだなんて!きっとネールドリア様が慈悲を下さったんだね!」
…あ、ソレもここにいますわ。しかも慈悲っていうかちょびっと助言しただけです。
はいそこ。何を偉そうな顔してんだい?
「いいじゃないそれくらい!」
しばらくして興奮も収まった様子のマイラさんが僕に頭を下げてくれました。
「ほんとうにありがとう!確かにとんでもない秘密だったよ。
それなのにアタシなんかの為に…君には感謝してもしきれないよ!あとは彼女から鱗を頂いて、もう1つの材料の辛味人参さえ入手したら薬が作れる!
あぁなんて幸運なんだ!」
「もう1つの辛味人参って言うのはどんな素材なんですか?」
「あぁそうだったね。辛味人参っていうのは清潔な水が豊富にあって、かつ魔力の濃い場所でしか育たない人参さ。
面白い事に、植物なのに引き抜くと暴れるんだよ。しかも暴れると薬効成分が失われてしまうっていう厄介な性質でね」
…ん?どっかで見たような
…あ。謎人参!
「マイラさん、コレですか?」
「そうそう!それだよ!そんな風にジタバタして…えっ?えぇぇぇぇ!?
なんで?なんであるのよっ?あっダメ暴れたら成分が!」
「こうすると止まります」
葉をもぎ取ると大人しくなる謎人参改め辛味人参。
「そうなのっ!?知らなかったわ…」
「こうしてもしばらく経つと辛味が無くなっちゃうんで、薬味にする時は出来るだけ早目に擦り下ろすのがおススメですね」
「まさか薬味にするなんて…」
調剤師のマイラさんには、薬味に使うって発想は無かったらしく、唖然としています。
「そうだ!それが必要なんだよ!君はどこで採取したんだい?すぐにでも取りに…」
「あ、まだいっぱいあります。採りたてのやつ」
「あ、あるのかい…?
ユーマ君、君に頼んだらこの数時間で全部解決してしまったよ…」
じゃあ、辛味人参は大丈夫かな。
そしたらシアから鱗を採取しなきゃね。…かなり不安。
『さあ、どこでも良いのじゃ。プチっとやっておくれ!』
…なんでノリノリなんだよ。はぁ…いくか。
『あっ!うひっ!はぁん!…あひっ!ふあっ!』
…全身毟り取ってやろうかな。
「ユーマ君…もう十分すぎると思うんだ」
『はぁん…もっと毟って欲しいのじゃ!もう少しだけぇ…』
うん。知ってたよ。こうなるの…
マイラさんの店からずっとウキウキしてやがったからな!
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