転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第ニ章 ガルドの街

第55話

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 やってきましたボロガデル商会。シアのやつ採用ですね。

 商業ギルドのすぐ近くという好立地にある大きな建物がそうみたい。
 表には綺麗な花壇があり、門構えは重厚な雰囲気で、かつ細やかな装飾彫りが施された立派な造りをしています。

 「いらっしゃいませ!ブランデル商会へようこそ!」

 中に入ると美人なお姉さんが明るく声をかけてきます。
 おっ!獣耳!後ろからチラッと見えるフワっとした尻尾と耳の形からすると犬っぽいかな…

 「わたくし、総合案内担当のミレイと申します。
 商品お探しのお手伝いから、仕入れの商談まで、なんでもサポートさせて頂きますね!
 本日はどういったご用件でしょうか?」

 「えーと、実はちょっと珍しい物を入手してましてね、ブランデルさんとは顔見知りなんで可能なら商談をと思ってるんです。会頭は御在室ですか?」

 我ながらよく言うよね!

 「これは失礼を!会頭とお知り合いの方でしたか。
 失礼ですがお名前と、お持ち込みの商品をお教え下さいますでしょうか?
 丁度本日は執務室におりますので、ご案内いたします」

 「それはありがとうございます。僕はユーマと言います。
 商品については、ブランデルさんを驚かせたいので内緒にって事でよろしくお願いしますね」

 ミレイさんにそう伝えると、ちょっと驚いた顔をしつつもニッコリ微笑んで、承知しましたと案内してくれます。
 ちょっと罪悪感。後で怒られるだろうなぁ、彼女。



 「あちらが会頭の執務室です。お呼びしますので…」

 「あ、いや、驚かせたいって言いましたでしょ?
 ここまでで大丈夫です。ありがとうございました」

 「えっ?あ、そうでしたね!では失礼いたします!」

 …うーん、また罪悪感が。
 すっごい素直な子だよなぁ…ほんとごめんなさい。

 ミレイさんが下に戻るの確認した後、執務室の扉前まで向かいます。
 中からは、数人の話し声が漏れ聞こえてきていました。

 「…というわけじゃ。あんたがたにはそいつを捕まえてもらって、その妖精と一緒に連れて来てもらう。
 男の方は好きなだけ痛めつけてくれて構わんが、連れの女は大した別嬪じゃったから出来れば傷は付けて欲しくはない。
 といっても妖精ほどの価値はないじゃろうから、抵抗するようであれば多少は眼をつぶる。
 首尾よく妖精を手に入れてきたなら、女の方は好きにさせてやろう。もちろんワシの後でじゃがなっ!」

 「そんな簡単な仕事で金貨20枚と女かよ!こりゃあ、やりがいのある仕事じゃねーか。
 じゃあ、決行は今日の夕方ってとこだな。マーサの宿に入られたらややこしい事になるから、その前にやってやるよ。
 ブランデルさんは楽しみに待っといてくれ」

 …おぉう。ビンゴじゃーん。完全なる悪巧みの真っ最中とか、最高のシチュエーションです。ウマウマ。
 早速扉をノックノック。

 「誰じゃ?今来客中じゃぞ?急ぎ以外は待たせておけ!」

 残念、急ぎです。
 誰何の声を無視して扉を引っ張ります。
 …あ、鍵壊れたっぽい。

 「どうもー!お邪魔しまーす!」

 「なにっ!?お、お前は昨日の!ここまでどうやって?
いや!そんな事よりもお前ら!こやつが話した目標じゃ!」

 「なんだって!?おいっ!妖精もいるじゃねーかっ!女まで!よし!お前らやるぞ!」

 部屋の中には昨日見たおっさんと、どう見てもマトモじゃないチンピラ風の男が6人。
 男達はそれぞれ短剣やダガーなどで武装しています。

 「ユーマさん!危ない!」

 …あ、メアリの事忘れてた。

 「なっ!?おい!てめぇ達、あいつはやべぇ!鬼のマーサの娘だぞっ!絶対手を出すな!」

 大丈夫でした。マーサさんって凄い。

 「さぁお前達、その小僧はどうなってもいいからな!やれっ!」

 ブランデルの声とほぼ同時に、ダガーを持った男が2人襲いかかってきます。
 正直言って喧嘩すらまともにやった事がない僕は、対人の戦い方なんてものは知りません。
 という訳で発動、威圧眼。
 かかって来た2人の足が止まりました。
 これって戦意のある相手でも効果あるんだね。というか、見ている2人は明らかに戦意を失って怖気付いてるみたい。

 「ひぃっ…」

 「またそれか!何をしてるんだ!やってしまえ!」

 無責任なブランデルの声にもその2人は反応出来ず、ついにはダガーを取り落とし震えながら後退りしていきます。

 「なんなんだこの女!なんで刃が通らねぇ?化け物かよっ!」

 「ありえねぇ…刃が欠けちまった」

 「可憐な乙女に向かってバケモノなぞ、言うて良い言葉ではないのじゃ!我泣いちゃう」

 シアに向かって行った短剣持ちの2人は、攻撃が通らない事に絶賛混乱中みたい。
 シアって硬いんだねぇ…知らなかった。

 「ユーマ様!そんな目で我をみてはダメなのじゃ!」

 おっと危ない。見ない様にしないとね。
 それはそれで良いのじゃぁとか聞こえません。

 「なんなんだよこいつら?おいブランデルさんよ!こんなの聞いてねぇぞ?」

 「何を腑抜けた事を!金貨20枚惜しくないのかっ!やれ!」

 おっさんが喚くものの、チンピラ達からはもう戦意を感じて来ないです。よし、とどめの威圧眼。
 ブランデル以外の6人は、顔を青ざめさせながら震え、すでに立っているのもままならない様子になりました。
 これならもう大丈夫かな。

 「なぁ、おっさん。どうする?あんたの手駒は使い物にならなくなったみたいだけど?」

 「ワシが何をしたと言うのじゃ!貴様が素直にその妖精を寄越しておれば、こんな事には….」

 「は?なんて?」

 威圧感を込めた視線を送ると、今にも意識を飛ばしそうになります。気を失わせるわけにはいかないよね。

 「最後の警告って事にしてやるよ。今日だって悪巧みさえしてなかったら、こうはなってなかったんだからな。
 で、どうする?もっと強そうなの探すかよ?結果は同じだろうけど」

 「ひいっ!わ、わかった!もう何もせん!いや、ワシが悪かった!慰謝料でもなんでも払うから許せ!いや許してくれ!この通りじゃ!」

 ブランデルは床に頭を擦り付けながら謝ってきました。
 これって絶対その場しのぎのパターンだよね。
 あ、そうだいい事思いついた!
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