転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第ニ章 ガルドの街

第50話

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 ギルドを出た時には日も傾き始め、辺りからは夕食の香りが漂ってきていました。

 「ずいぶん長い事おったんじゃなぁ。我もう腹ペコじゃ」

 「あんたねぇ、精霊のクセにお腹空かせてんじゃないわよ!」

 「あふぅん!この姿じゃとヒトと変らぬのじゃからして…」

 「まぁシアの反応は置いといて。僕も結構お腹空いたしさ。今夜はどこで食べようか?」

 「ユーマ様まで何気にスルーして…ふぁっ!!」

 勝手に悶えてるシアは、限界まで放置する方が面倒なので、まともに対応しましょう。

 「シアの決めたとこにしようか。シアの鼻に任せる」

 『殿!鼻はそれがしの役割ではござらんか!?それがしの存在価値が…』

 「いや、銀の鼻で食事は決められないでしょ?違う時に頼るから」

 気持ちはありがたいけどねぇ… 
 流石に当てにするわけにもいかないからなぁ。

 『ぐっ…確かに否定は出来んでござるよ。次の機会にはぜひそれがしを!』

 「大丈夫よ!銀!そのダメトカゲと違って、あんたの事はちゃんと頼りにしてるから!乗り物として」

 『おぉ!そうでござるな!旅の際はお任せくだされ!』

 ネルさんナイスフォローと言いたいけどさ、いまのフレーズダメトカゲでシアに追撃が入ってんだけど…

 「んふっ!腰に力が…」

 「シア?崩れたら運べないから困る。早く食べる所探して?」

 「ぐむっ…わかったのじゃ。しばし待つのじゃよ」

 ネルの口の悪さも嫌いじゃないんだけど、ちょっとタイミングを考えてくれないと困るよね。

 「わかったわよ。街中では控えておくわ。ダメ…いや、シアに足止めされても厄介だし」

 小声でも多分聞こえてるよ?ほら、ちょっとピクッとしたし。

 「ユーマさん?シアさん具合悪いの?顔が火照ってるみたいに見えるけど?」

 「メアリ、大丈夫だよ。シアはいつもあんな感じだからさ。
 それよりシアが見つけたお店、知ってる所なら言ってね?」

 「え?…あ、うん!もちろん!この辺にも変なお店あるからさ、もしそういうお店だったら言うね。
 でもシアさん、多分あたしの知ってるお店に向かってるっぽいの。ママのお料理にも負けないくらい美味しいとこ」

 へぇ…思い付きでシアにやらせてたけど、食い意地張ってんのかな?

 「ユーマ様!決めたのじゃ!ここ!この店じゃ!
 なんとも胃袋が呼ばれておるような良い匂いがする」

 「わぁ!凄い!ほんとに来ちゃった…
 ここはねぇ、ケビンさん達が、大っきな依頼達成した時に打ち上げで使うお店なんだって。
 結構お値段が高いみたいだからあたしは入った事ないんだけどさ。って言うか、あたしは先に帰ろうか?」

 「気にしなくていいって、ご馳走するから。慰謝料が明日貰えるし気にせず食べよう。手持ちで足りれば問題ないよ」

 「ほんと!?ありがとう!実は気になってたんだ!」

 素直が一番だよね!

 その店は食堂兼酒場という感じではなく、いわゆるレストランと言った趣きの洒落た外装です。
 確かに高級感はあるね。ドレスコードとかあったらどうしよう?

 「いらっしゃいませ。えーと…3名様でございますね?
 申し訳ありません、お連れの狼は従魔かと思いますが、皆様一様にお連れのままでの入店はお断りしております。 
 専用スペースにお預け頂けますようお願い申し上げます」

 「わかりました。そこで食事させるのは構わないですよね?あと、この妖精もですか?」

 「なんと!妖精をお連れの方は初めてでございますが、そちらはご一緒で結構です。では、3名様でご案内致します」

 「4名って言いなさいよ!失礼ね」

 「おっと、これは大変失礼を致しました。4名様ご案内致します」

 言い切るネルも凄いけど、咄嗟に対応出来た店員さんもなかなかのものだね。
 僕は先に銀と風羽花を預け、2人の夕食用にオーク肉の塊を渡してから入店しました。

 店の内装は、ぱっと見た感じでも落ち着いた雰囲気の内装で、既に3組の先客が騒ぐこともなく上品に食事していました。
 ネル以外が着席するとすぐ、店員さんがメニューを持って来ます。行き届いてるね。

 「当店にお越しくださいましてありがとうございます。
 当店はコースのみのご提供で、こちらが本日のメニューでございます。
 メインのみ肉と魚からお選びいただけますが、どちらになさいますか?肉は草原短角牛のフィレ、魚は虹色イワナのソテーになります」

 「肉よ肉!」

 ネルが一番食い意地が張ってるし….

 「シアは肉だよな、メアリは?」

 「あたしも肉がいいな!」

 「みんな肉なら僕は魚にしておくよ。ネルが食べ切れなかったら肉わけてよね」

 注文も決まり雑談しながら待つ事しばし、テーブルの上には前菜、スープと次々に運ばれて来ます。どれも確かに美味しい!
 しかもやはり塩以外に調味料や香辛料が使われてるのは間違いない。
 うーん…やっぱりなんとかその辺も手に入れたいよね。

 「お待たせしました。本日のメインになります」

 来た来た!見た目からして美味しそうだね!
 ただ一つだけ問題が…

 「ネル?なんで残らないのさ?いったいその身体のどこにあの量がはいるんだよ?ってゆーか、肉もう無いし!?」

 「どこって、そんなの知らないわよ。いいじゃない美味しいんだから食べたって」

 「ユーマさん、あたしのお肉お裾分けしますから」

 メアリが優し過ぎて泣く。
 って言うか、ネルががっつき過ぎだって。これが女神様って宗教関係者が知ったらみんな泣くんじゃないの?
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