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第ニ章 ガルドの街
第49話
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「実はアレンのやつは先代ギルマスの縁戚でな…」
今回処分されたアレン氏は、5年前に引退したギルドマスターの娘婿だそうです。
そのギルマスが在任中は、苦情が上がる程の傍若無人ぶりで、ギルマスの権限で不正を見逃される事幾多だったらしい。
反面、そのギルマスの引退後は表立っての悪質行為はなく、与えられた仕事程度は卒なくこなすくらいには優秀な職員でもあったみたい。
ただ、その裏では部下の粗探しをして弱味を握り、嫌がらせや、小さな横領に加担させたりまでしていたそうで。
今回の動機にもなっていたソフィさんにも、度々アプローチをかけては断られ、気を引く為にか、または恩を売るためにか意気揚々と指示を出したようだ。
「悪い噂はちらほらあったんだがな、決定的な証拠もなかったから処分する事もなかったんだわ。
で、今回の件では逃げ道がなくなっただろ?その途端、今までの悪質行為が次々と報告として上がってきやがった。
まぁ、怨みなんかも入ってんだろうけど、ギルドとしては、かばい立てする理由もないからな」
膿を出すいい機会になったってことみたいだね。
そういう事情なら処分された方がみんなの利益になるか。
「なるほど。よくわかりました。それなら処分に異存はないですね。遠慮なくやっちゃって下さい」
「あの…失礼します」
ノックの音と共に女性の声。
「あぁ、ソフィが来たらしい。いいぞ!入ってこい」
「お話し中失礼いたします。あの…ユーマ様!この度は私の不手際で大変ご迷惑をお掛けいたしました。
ギルドからも処分が下りましたけど、本当に責任を痛感致しまして、退職という形でお詫びの気持ちを示させて…」
「おっとソフィ!そこまでだ。
つい先程だが、ユーマ殿から処分を軽減出来ないかって頼まれてな。ご自身の被害もなかったものとして扱って欲しいって事なんだよ。
被害者ご本人がそこまで言って下さったら、ギルドとしても無理に処分するわけにもいかなくてな。
だからソフィ。今回の処分については取り消し。新たに厳重注意処分として発表する事にした。
異動や減給などは一切なし、今後は同じ様なミスをしないように、十分注意して受付業務を遂行してくれ!以上だ」
ジークロフトさんの言葉に一瞬戸惑いの表情を見せたソフィさんだったけど、聞いた内容を理解したらしく驚いた後、涙をながしながら僕に感謝を伝えてくれました。
「ソフィさん。冒険者の方達にもお礼してあげて下さいね?
ちょっと気絶させちゃいましたけど、みんなソフィさんの為に必死になってくれてましたから」
まぁ、実際は自分達の為だったけど…
「わかりました!みなさん殆ど回復なさってましたから、今から行ってきますね!
ほんとにありがとうございました」
「おう、行ってこい!そのまま業務に復帰してくれ」
ソフィさんは深く頭を下げてから執務室を退出していきました。
「これで騒ぎが収まるといいですね」
「まぁ一件落着って事にしてくれよな」
外から歓声が上がってるのが聞こえてきました。多分ソフィさんが報告したんだろうけどね。
「全く騒がしい連中だ。だが改めて助かった。ありがとう」
「丸く収まったなら良かったですよ。それじゃあ僕達もお暇させて…」
「いや、ちょっと待ってくれ。これはあくまでも俺の個人的な興味だから無理強するわけじゃないんだが…」
ジークロフトさんはネル達に興味あるんだってさ。
「私も正直よくわからないのよね。
気を失ってたところをユーマに拾って貰って、魔力をわけてもらったらテイム状態になったんだし。
それより前の事も気を失った理由も全然思い出せないんだから」
「そうか…妖精については、姿を見なくなって随分年月もたっているって事になってたからなぁ。
せめて集落があるのかどうかわかれば、ギルドとしても捕獲禁止なり、保護なり対策をうちだせるんだが…」
「ほっておけばいいんじゃないかしら?どうせ探したって見つからないんでしょうし。
私はユーマの旅にくっついてあちこち行けば、何かわかるかなぁって思ってるだけだし、今楽しいからこのままでいいのよ」
まぁ女神様なんだけどね。
「そういう事なんで、妖精については特に何も必要ないと思います。
僕達も今夜と、明日もう一泊したら街を出る予定ですし。
あ、そうだ!大切な事忘れてました!
実は持ち歩いてた地図を無くしてしまったんですよね。昔行商してたらしい身内から受け継いだ地図だったんですけど。
このあたりの地図を譲っていただけませんか?」
「地図ならギルドが管理してるこの地方のものにはなるが…一応ギルド員のみって決まりなんだよな。
だが、他ならぬユーマ殿の頼みだ。俺の責任で提供させてもらうよ。今回の不始末の詫びも込みって事で。
あーそうだ、忘れてた。今回の謝罪として、ギルドから慰謝料を支払う事になってるんだがな、その金額がケビン達の報酬減額分って規定があるんだわ。
本来なら、毎月ケビン達の成果から計算して毎月末に支払うんだが、明後日には出発するんだよな?」
「そうですね。ただお金はあって困るもんじゃないので、出来れば頂けたらありがたいです」
「わかった。だったら俺の裁量で、ケビン達の過去直近半年間の報酬合計の5割を計算して支払おう。
どうせあいつらはこの先半年間、高額報酬ばっかり狙って受注するはずだからな。ギルド側からみればむしろありがたいって事になる。
明日の日が昇るまでには計算も終わるだろうから、いつでも受け取りに来てくれ」
そりゃありがたい話だね。また寄らせて貰おう。
こうして冒険者ギルドでの騒動は幕を下ろしたんです。
今回処分されたアレン氏は、5年前に引退したギルドマスターの娘婿だそうです。
そのギルマスが在任中は、苦情が上がる程の傍若無人ぶりで、ギルマスの権限で不正を見逃される事幾多だったらしい。
反面、そのギルマスの引退後は表立っての悪質行為はなく、与えられた仕事程度は卒なくこなすくらいには優秀な職員でもあったみたい。
ただ、その裏では部下の粗探しをして弱味を握り、嫌がらせや、小さな横領に加担させたりまでしていたそうで。
今回の動機にもなっていたソフィさんにも、度々アプローチをかけては断られ、気を引く為にか、または恩を売るためにか意気揚々と指示を出したようだ。
「悪い噂はちらほらあったんだがな、決定的な証拠もなかったから処分する事もなかったんだわ。
で、今回の件では逃げ道がなくなっただろ?その途端、今までの悪質行為が次々と報告として上がってきやがった。
まぁ、怨みなんかも入ってんだろうけど、ギルドとしては、かばい立てする理由もないからな」
膿を出すいい機会になったってことみたいだね。
そういう事情なら処分された方がみんなの利益になるか。
「なるほど。よくわかりました。それなら処分に異存はないですね。遠慮なくやっちゃって下さい」
「あの…失礼します」
ノックの音と共に女性の声。
「あぁ、ソフィが来たらしい。いいぞ!入ってこい」
「お話し中失礼いたします。あの…ユーマ様!この度は私の不手際で大変ご迷惑をお掛けいたしました。
ギルドからも処分が下りましたけど、本当に責任を痛感致しまして、退職という形でお詫びの気持ちを示させて…」
「おっとソフィ!そこまでだ。
つい先程だが、ユーマ殿から処分を軽減出来ないかって頼まれてな。ご自身の被害もなかったものとして扱って欲しいって事なんだよ。
被害者ご本人がそこまで言って下さったら、ギルドとしても無理に処分するわけにもいかなくてな。
だからソフィ。今回の処分については取り消し。新たに厳重注意処分として発表する事にした。
異動や減給などは一切なし、今後は同じ様なミスをしないように、十分注意して受付業務を遂行してくれ!以上だ」
ジークロフトさんの言葉に一瞬戸惑いの表情を見せたソフィさんだったけど、聞いた内容を理解したらしく驚いた後、涙をながしながら僕に感謝を伝えてくれました。
「ソフィさん。冒険者の方達にもお礼してあげて下さいね?
ちょっと気絶させちゃいましたけど、みんなソフィさんの為に必死になってくれてましたから」
まぁ、実際は自分達の為だったけど…
「わかりました!みなさん殆ど回復なさってましたから、今から行ってきますね!
ほんとにありがとうございました」
「おう、行ってこい!そのまま業務に復帰してくれ」
ソフィさんは深く頭を下げてから執務室を退出していきました。
「これで騒ぎが収まるといいですね」
「まぁ一件落着って事にしてくれよな」
外から歓声が上がってるのが聞こえてきました。多分ソフィさんが報告したんだろうけどね。
「全く騒がしい連中だ。だが改めて助かった。ありがとう」
「丸く収まったなら良かったですよ。それじゃあ僕達もお暇させて…」
「いや、ちょっと待ってくれ。これはあくまでも俺の個人的な興味だから無理強するわけじゃないんだが…」
ジークロフトさんはネル達に興味あるんだってさ。
「私も正直よくわからないのよね。
気を失ってたところをユーマに拾って貰って、魔力をわけてもらったらテイム状態になったんだし。
それより前の事も気を失った理由も全然思い出せないんだから」
「そうか…妖精については、姿を見なくなって随分年月もたっているって事になってたからなぁ。
せめて集落があるのかどうかわかれば、ギルドとしても捕獲禁止なり、保護なり対策をうちだせるんだが…」
「ほっておけばいいんじゃないかしら?どうせ探したって見つからないんでしょうし。
私はユーマの旅にくっついてあちこち行けば、何かわかるかなぁって思ってるだけだし、今楽しいからこのままでいいのよ」
まぁ女神様なんだけどね。
「そういう事なんで、妖精については特に何も必要ないと思います。
僕達も今夜と、明日もう一泊したら街を出る予定ですし。
あ、そうだ!大切な事忘れてました!
実は持ち歩いてた地図を無くしてしまったんですよね。昔行商してたらしい身内から受け継いだ地図だったんですけど。
このあたりの地図を譲っていただけませんか?」
「地図ならギルドが管理してるこの地方のものにはなるが…一応ギルド員のみって決まりなんだよな。
だが、他ならぬユーマ殿の頼みだ。俺の責任で提供させてもらうよ。今回の不始末の詫びも込みって事で。
あーそうだ、忘れてた。今回の謝罪として、ギルドから慰謝料を支払う事になってるんだがな、その金額がケビン達の報酬減額分って規定があるんだわ。
本来なら、毎月ケビン達の成果から計算して毎月末に支払うんだが、明後日には出発するんだよな?」
「そうですね。ただお金はあって困るもんじゃないので、出来れば頂けたらありがたいです」
「わかった。だったら俺の裁量で、ケビン達の過去直近半年間の報酬合計の5割を計算して支払おう。
どうせあいつらはこの先半年間、高額報酬ばっかり狙って受注するはずだからな。ギルド側からみればむしろありがたいって事になる。
明日の日が昇るまでには計算も終わるだろうから、いつでも受け取りに来てくれ」
そりゃありがたい話だね。また寄らせて貰おう。
こうして冒険者ギルドでの騒動は幕を下ろしたんです。
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