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第ニ章 ガルドの街

第37話

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 風呂はいいねぇ リ◯ンの文化の極みだよ。

 …どうも僕です。

 せっかく沸かしたお風呂が冷めたら勿体ないので、急いで入って気付きました。
 入ったままで調整できんじゃね?

 えぇ、出来ました。追い炊き機能付のお風呂。
 まぁ僕が湯沸かし器なんですが。

 「便利ねぇ…ユーマ」

 否定は出来ないけどイヤです。

 ネルも一緒に入っています。彼女も肌を晒す事に前より抵抗がなくなって、今は僕の手の平に乗っかって寛いでいます。
 ちっちゃいからそこまで気になるわけじゃないんですが、小さくてもメリハリボディは健在です。

 「知らない人が見たら、お風呂で人形遊びしてる変態ね」

 …沈めてやろうかな?

 「あ、嘘よ嘘!ちょっとした冗談だから!いーやぁぁー!」

 まぁ沈めませんけどねっ!

 「ほんとごめんなさいって!ね?」

 「大丈夫だって。やらないから」

 「…本気で考えてたじゃない」

 考えが読み取れるんだから慌てなくてもいいのに。

 「考えずに行動するのだけはやめてよね?お願いだから」

 「へいへい」

 お風呂はいいですね。癒されます。

 「我、もうダメ。この放置感…あっ、あっ!」

 変態ダメトカゲがそろそろヤバい感じに出来上がってきてるので、ちょっと相手をしておきましょう。

 「シア?僕達上がるから、お風呂はいりなよ?温度上げとくね」

 「はぅん!このタイミングで!?堪らん…」

 …あ、トドメ刺したみたい。何がスイッチになるか、もうわからなくなってきました。

 

 どういう訳かぐったりとしたシアを、熱めの湯船に放り込んで、ネルと2人ソファーで涼んでいます。
 シアは湯に沈んで行きましたが、人の姿をしているだけの竜なので溺れたりしないと思います。多分。

 「さっきの話に戻るんだけどさ、魔法を使う場合の魔力の制御って、何をする事なの?」

 「そうね。簡単に言えば、どれだけの量をどの程度の範囲に向けて魔法の効果として発現させるのかを決めるって事ね。
 強化魔法なら範囲は全身なのか部位なのか、量は強化する度合いによって調整するわ。
 射出系の魔法はわかると思うけど、効果の強さや目標までの距離、その数なんかを調整するの。
 だから魔力制御が上手なら、魔法自体も強力になるのよ」

 「例えば、僕が使う火弾や岩弾って事?」

 「まさにそうなの。複数の弾を安定させられるのも魔力制御の技術レベルが高いって事だし、それを目標に正確に当てるのもそうだわ。
 ユーマみたいに、別々の目標に同時に当てるなんて芸当は、なかなか難しい水準なのよ」

 どうやら僕が考えなしでやった事は、ガイアスの魔法使いからすれば、そう簡単には出来ない事だったみたいです。

 「ちなみに、魔力眼ってやつもそうよ?通常は単純に部位強化って意味で使われる言葉でね、魔力腕とか魔力脚とかもあるわ。
 普通は部位か全身かのどちらかしか出来ない技術だし、部位も決まった一部分だけっていうのが一般的な上、その強化度合いをイジれるのは稀なの」

 「じゃあ身体強化魔法っていうのは?」

 「魔力制御での強化を、魔法という定型文を使って、サポートするのよ。
 普通に魔力だけで強化し続けようとしたら、その制御と維持にそれなりの意識を割く必要があるわ。しかも解除するまでは魔力の垂れ流しみたいなものだから、うっかりすると魔力切れで気を失うわね。
 だから戦闘中に使おうと思ったら、魔法として強化した方がリスクが少なくなるわけよ」

 なるほどね。改めてネルの説明を聞いてみると、彼女が自重しなさいとか考えてやりなさいって言う理由もよくわかる。
 魔力制御の技術のレベルが高すぎて、すぐには真似されなかったとしても、それが出来る事がわかれば、出来る様になるまで研鑽する人も出てくる可能性もあるって事だ。
 もっと言えば、僕自身を利用しようと考える人だって必ず出てくるはずだし。

 「そういう事なら魔力制御が得意だってばれない様に気を付けるよ。あと言い訳も考えとかないとね」

 「だから、自重しなさいって…こら!なに目を逸らせてんのよ!ちゃんとこっち見なさいよっ!ユーマ!」

 …先程、耳が休暇に入りましたので。


 …コンコン

 ネルとの楽しいオハナシの時間はノックの音で中断されました。
 あっ!ネルに羽根付けなきゃ!

 「ユーマさーん!夕食の準備そろそろ終わりますよっ!お湯注文無かったですけど大丈夫だったー?」

 扉の向こうからメアリの声がします。 
 あの子の性格だといきなりドア開けそうだけど、きっとマーサさんがしっかり教育してるんだろうね。

 「メアリ、どうぞ入って?」

 「はーい!失礼しまーす!ってあれ?お風呂使ってる…」

 「あー!こう見えて魔法は得意だからね。悪いかなぁって思ったけど勝手にさせてもらったよ。
 もしかして自前で用意するのダメだった?」

 「ううん、全然大丈夫よ!ユーマさんって凄い魔法使いだったんだ?テイマーさんだって思ってた」

 「いや、僕じゃなくてシアがね。あれで彼女は優秀だからさ」

 「そうなんだ?凄い護衛さんなんだねー」

 「…まぁね!それですぐ降りたらいいのかな?」

 「もう大丈夫だよ!いつでもオッケー」

 「わかった。じゃあ身支度済ませたらすぐ降りるね。
 あ、それとこのオーク肉、銀に届けてもらってもいいかな?あいつきっと待ってるからさ」

 「はーい!かしこまりー!じゃあすぐに始められるようにしとくね!」

 さぁ僕達も身支度しなきゃね。
 そういえば、ネルと話し込んでて忘れてたけどシア大丈夫かな?

 「水中は我の得意な場所じゃからして」

 …おぅっ!?いつの間に。
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