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第ニ章 ガルドの街

第31話

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 改めまして、僕です。

 初めて訪れる場所って興奮しませんか?
 だからといって、旅の恥はかき捨てっていうのはどうなんだろうなっていつも感じます。



 ついにガイアスに転移して来て初の街に辿り着く事が出来ました。
 街は防衛の為だろう頑丈そうな石壁に覆われ、街道に繋がる入り口には槍を構えた門番が両脇を固めています。

 「ユーマ様、ここは我に任せるのじゃよ。ユーマ様は旅の若旦那ということにしておく」

 「わかった。シアに任せるね」

 ダメトカゲの称号を返上したいのかな?

 「その場に止まれ!何用か?」

 守衛の人は2人ともよく鍛えられて引き締まった身体つきで、油断なく僕らを観察してるみたいです。

 「特段の用向きではないのじゃが、街内で宿を取りたくて参ったのじゃ」

 「旅の者か。後ろの男は何者だろうか?」

 「少々訳ありではあるが、さる大店のご子息じゃ。今は見聞を広めるために各地を漫遊しておる」

 「名前を聞いても?あー勿論、家名は都合があれば明かさずともよいが」

 「我は護衛のシア、彼はユーマ様と申す。テイマーの力がありその銀狼はユーマ様の従魔じゃな」

 銀の姿を見た守衛達もテイマーという言葉で納得はしたみたいだね。少し警戒の表情を緩めてる。

 「わかった!街への入場を許可する。ただし、騒動を起こした場合は罰金を徴収し、ただちに追放する規則となっている」

 「承知したのじゃ。さぁ若様参りましょう」

 「「ようこそ辺境の街ガルドへ!!」」

 守衛達に見送られ門をくぐると、いつかファンタジー映画で見たような石と木材とで作られた街並みが僕達を迎えてくれました。
 全体的に石材が占める割合が多いせいか、街並みには落ち着いた雰囲気があって、そのぶん建物の入り口や窓枠周りには鮮やかな花が飾られていたり、鮮やかに染められた布地を街灯に吊るされたりしていて気分が上がります。
 街は中心に噴水がある広場を作り、そこを中心にして四方に石畳の道を作っているようです。
 僕達が入って来たのは東門にあたるのかな?
 街路脇に東通りと書かれた看板が立っていました。

 「ん?日本語?」

 「違うわ。転移して来るときにガイアスの標準語の読み書きが出来る様にはしてるの。でないと不便でしょ?」

 胸元に入ったネルが小さな声で教えてくれました。
 そっか、さっきの守衛さんの言葉も違和感なく聴こえてたもんなぁ。気付かなかった。

 「やっぱり窮屈だわ。何かいい方法ないかしらね?」

 「そうだよね…ごめん、ネル。宿に入るまで我慢してね」

 ネルも流石に身動きしづらい状態はきついよね。
 早く宿に…って、宿代とかないじゃん!シアが持ってるわけないし、どうしよ?

 「ねぇ?シア。宿に泊まるお金持ってたりする?」

 「そんなものあるわけないのじゃ。
 じゃが、心配はいらぬよ。今からギルドに行くつもりなんじゃ。
 そこで銀達が先に捕らえたウサギでも売れば良いかと思っておるよ」

 「そうなんだ?シアが別人みたい」

 「それはどういう意味なんじゃろか?我は結構しっかりものじゃよ?」

 どの口がって言いそうになったのは内緒です。

 「何カッコつけてんのよ?ダメトカゲ」

 「はぅん!」

 あちゃ…ネルの呟きもしっかり拾うあたりがダメトカゲだわ

 「ところでシアはここに来たことあるの?さっきからどんどん進んでるけど」

 「ぬ?初めてじゃよ?ギルドどこじゃろなぁって思うとったところじゃもん」

 …じゃもんって、おい!

 「じゃあさ、とりあえず向こうの噴水のとこまで行ったら聞いてみない?」

 「そうじゃな、それがよいじゃろ。さっきの守衛に訊けば良かったのぅ!あっはっは!」

 笑ってるし…


 僕達は東通りを抜け、噴水の広場に辿り着きました。

 …ん?

 噴水は大きな水瓶から水を吐き出していたんだけど、その水瓶に寄り添っている像に見覚えが。

 …ネルだよね。どう見ても。

 「当たり前じゃない。あんた、すぐ忘れるけど私は女神様よ?しかも主神よ?豊穣の女神ネールドリアなんだからね?」

 「あ、やっぱり?あのサイズだと見慣れないから違和感しかないけど」

 …痛っ!抓らなくてもいいじゃん

 でも、ほんと造形が素晴らしいせいもあって、まんまネルを大きくした感じ。って、あれ?
 なんでこんなに容姿が知れてんの?

 「あーそれね。ほら私って神託降ろせるじゃない?昔すっごい優秀な芸術家がいたのね。そいつに私の美しさを広めなさいって神託したの。その時に私の姿を見せてあげたのよっ!」

 「思いっ切り地上に干渉してんじゃん…」

 「なっ!?これはセーフなのっ!顕現したわけじゃないし、神託は許されてるんだからっ!
 それに他のみんなもやってたしさぁ…ともかくっ!信仰心を上げる為だから、セーフったらセーフなのよっ!」

 限りなく黒に近いグレーだと思われ…痛ったー!また抓られたし。

 小声でそんなやり取りしながら噴水に近づくと、花籠を傍に置いた少女が声をかけて来ました。

 「こんにちは!もしかして旅の方ですか?お花はいかがですか?ガルドの周辺にしか咲かないミストの花なんですよっ!」

 柔かな表情をした可愛らしい少女でした。
 ちょっと服装がみすぼらしいのが気になるんだけどね…
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