転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第一章 異世界に来ちゃいました

第27話

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 三度目ってあるんですよ?やっぱり…

 「いちいちビクンビクンするのやめなさいよっ!」

 「じゃってー!我の身体が勝手にっ!あふっ!」

 ネルとシアが楽しそうにやり取りしています。

 「だ、れ、がっ!楽しそうなのよっ!あー!もう!離れろーぉ、このアホトカゲっ!」

 「それがクルのじゃよぉー!はふぅーん!」

 知らない見えない聞こえなーい。

 「こぉぅるぁーユーマー!どうにかしなさいよっ!」

 「いや、そこはお任せしますので!よろしくっ!」

 ネルを抱きしめて離さないシアはほっといて、僕は拠点の小屋を再度設置しようと思います。
 太陽は徐々に高度を下げ、谷間の滝壺周辺は既に影の部分が多くなり始める時間になってきました。

 今日は朝からシアに出会ったり、オークの襲撃があったり、覚醒したシアに振り回されたり…濃いわぁ

 ここに来て結構な疲労感と空腹感を感じています。
 そういえばバタバタで昼休憩も取ってなかったもんね。

 もう時間も余裕ないし、夕食は昼間に大量取得したオーク肉を焼いて食べようと思います。
 まぁある意味弔いメシみたいなもんだね。オーク肉は美味いらしいので楽しみではあります。

 もう焼くだけと決めたので、下拵えだけ簡単にしておいて焼肉パーティーって事にすればいいよね。楽だし。主に僕が。

 肉は切り方を変えたものを用意します。
 ネルや風羽花が食べやすいのは薄切り肉なので、切り分けた肉を例の謎人参を刻んだものと塩で味付けしておきます。
 僕はちょっと厚切り。
 銀達は分厚く切り分けたのと、塊と、骨付き肉を用意しておきます。彼らは生でも食べるしね。
 薄切り肉と違うのは謎人参を摩り下ろして、焼いてから塗るようにする事かな。脂や肉汁が多い分その方がよりサッパリするだろうと思います。

 次に鉄板を用意します。
 先日作ったものはサイズが小さ過ぎるので、改めて魔力で加工し、少し薄くなりましたがサイズアップさせます。

 で、やっぱり金網だよね。
 収納に入れてあった鉄の塊を薄く延ばして、さらに細く針金状に切り分けて網状構造に組み上げます。それに魔力を通して一気に交点を融合させれば完成です。網は今のうちに空焼きして、オークの背脂でコートしておきました。



 すべての準備を終えた頃にはすっかり日は落ちて、空には残光が浮かぶ程度になっていました。

 焼肉パーティなので会場は当然外。暗過ぎるのも嫌なので篝火を数箇所に設置して灯りを確保しました。
 簡易のカマドで薪を燃やし炭にしたら鉄板と金網を温めて、さぁ、焼肉を始めよう!


 「オーク初めて食べたけど美味いな!」

 「あんた昼のあのスプラッタ見てて、よくそんなにガツガツ食べれるわね」

 「それとこれとは話が違うからね。全然平気だよ。
 そう言ってるわりにネルだって結構ガッツリいってんじゃん」

 「私はほら、食の経験が少ないからよ?別に平気なわけじゃないんだからっ!」

 『ふうかもオークは初めてなのです!おいしーです!』

 「我も焼いて食べる手間をかけたことはなかったからのぅ。生よりも美味いのじゃ。そして調理されるとまたこれほどの美味になるんじゃな!」

 『我らもオーク肉はたまのご馳走でござったゆえ、これほど大量に食べたのは初めてでござる』

 オーク肉は想像よりも一段も二段も上。薬味の謎人参の働きもあり、飽きる事なくお腹いっぱいになるまで堪能できたので、ほんと良かった。
 みんなも初めてだったりして喜んでるから、作る側としては嬉しいよね!頑張った甲斐がある。まぁある意味手抜きな部分もあるけどさ。
 好評だった上に、幸いなことに大量にストック出来たし。収納のおかげでしばらくオーク肉は楽しめそうです。いつか、香辛料が手に入ったらもっと違う味も試さなきゃね!


 焼き肉パーティーは大成功に終わり、有り難いことに殲滅戦の衝撃を引きずらずに済んだので、いい経験になりました。
 みんな満腹で、昼の戦闘や後始末の疲れが出たんだろうね。風羽花はもちろんのこと、銀や配下狼達までもうおやすみモードに入っています。

 僕も少し疲れはあるものの、やっぱりあれだけの事があったから、ちょっと面倒だけどお風呂に入ってサッパリしようと思います。それにここの岩風呂も最後だしね。

「うあぁぁぁー…やっぱり気持ちいいなぁ」

 声出ちゃいますよねー、絶対。特に肉体的にも精神的にも疲労感があったから余計に。
 広い湯船に肩まで浸かって手足をのばすと、疲れがお湯に流れ出て行くような心地良さがたまりません。ネルも浅く作った部分に浸かってご満悦の様子。

 「ねぇ、ユーマ。今日は大変だったでしょ?お疲れ様」

 「ん、ありがと。ネルも頑張ってくれて助かったよ。こちらこそありがとうだって」

 「ううん、違うの。ユーマが元いた世界だとこんな事絶対なかったでしょ?それなのにあんな風に頑張ってくれて…ちょっと申し訳ないなって」

 「ネルは優しいね。でも大丈夫!もう覚悟は済ませたし。
 それにさぁ、やっぱりみんなを守りたいって気持ちが強いから。もちろんネルを一番に守りたいけど」

 「…ばか。急に恥ずかしい事いわないでよねっ。でも嬉しい」

 見上げれば満天の星空。ネルとの心の距離がぐっと縮まったような気がして、お風呂の温度以上に気持ちが温かくなりました。

 そんな2人の雰囲気に割り込むように、まさかの三つ目の事件が起こったんです。

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