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第一章 異世界に来ちゃいました
第19話
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『主人様!ヤツが!ヤツが現れたです!』
朝の目覚ましはそんな風羽花の叫びでした。
『昨日のあいつなのです!今度こそ仕留めるです!』
風羽花はそう言いながら、今にも飛び出して行きそうな様子をしています。
「ちょっと待って、風羽花。慌てないで?僕も一緒に確認するから」
風羽花を窘めながら窓から様子を伺うと、それは滝壺の中にいました。
「蛇?」
まだ朝靄が立ち昇る夜明け寸前の時間。しかも朝日を遮る木々のせいもあり、シルエットのみの姿は鎌首を持ち上げた大蛇の様に見えます。
仲間達を起こさないように静かに小屋を出て、滝壺の畔へと慎重に足を運ぶと、こちらに気付いたようにシルエットが移動し始めました。
水面から頭まではおよそ2メートル程度。水中にある身体のサイズは予想すら出来ない状況です。
『我が住まいによく参った。そこな鳥とは昨日以来であるな』
シルエットは唐突に話かけて来ました。
「もしかして貴方はこの滝壺の主でしょうか?昨日から周辺を荒らしてしまって申し訳ないです」
一応棲家を荒らした事には後ろめたさもあり、一言詫びをいれてみました。
『なに、些細な事であるよ。気にする程のものではない。我が住まいと知って来たわけでもなかろう?』
「もちろんです。知らぬ事とはいえ、改めてお詫びを」
『ふむ、人の子らしからぬ応対。驚きが先だ。しかしてこの様な辺鄙な場所に何用であろうか?』
「この場に用事があるわけではありません。下流へ向かう道の途中、一晩の休憩場所としてここに滞在したまでです」
シルエットから敵意は感じません、むしろこちらに興味深々といった雰囲気を醸し出しているくらい。
『ではすぐに立ち去ってしまうと言うわけか…それは少々残念であるな。
昨日より、ぬしらの様子が気になっておったのだが。とはいえ我の都合で足止めするわけにもいかぬし』
「え?そうなんですか?でしたら急ぐ旅でもありません。もう1日この場所をお借りしても?」
実際今すぐ行かなきゃいけない理由もないし、連泊出来るならそれはそれで、やりたい事もないわけじゃない。
まぁウチの自称女神様がなんて言うかにもよるので、最終的な結論はそれからだけど。
『無論構わぬ。我の邪魔になるものでもないでな。であれば…』
「ヌシ様、申し訳ありません。僕には仲間がおります。その者の意見を確認する時間を頂けませんか?」
『な、なんとそうであるか…うぬ…それは仕方ないであろうな。であれば良い報告を待つとしよう。
我も急がねばならぬ都合もないゆえ、ぬしらの話がまとまれば我を呼ぶが良い。滝壺の畔に立ちこのベルを鳴らせ。すぐに参ろう』
そう言うと、僕の前に淡い光が浮かび上がります。光に触れると、それは花火の様にパッと舞い散り、僕の手のひらには美しい装飾が施された銀色のハンドベルが残されました。
『そのベルは、ぬしにやろう。人の子の言うところの贈り物じゃ。気に病む必要はないぞ?何も我の頼みを強制するつもりはないからの』
「そうなんですか?そう仰って頂けるのでしたらありがたく頂戴いたします」
『うむ。ではしばしの別れじゃ。ベルの音を首を長くして待っておるぞ、元から長いんじゃがなっ!あっはっはっ!」
そう言いながら、滝壺の主のシルエットは水中へと沈んでいきました。
最後なんか聞こえたけど…まさかの持ちネタ?
言葉遣いの感じよりも軽い性格な気がします。
「へぇ、なかなか面白いじゃない!そのヌシって見てみたいわね」
あの後小屋に戻ると、何事もなかったかのようにみな熟睡してました。警戒レベル低っ!
ただ、僕の動く気配を感じた銀が目を覚まして立ち上がったから、銀に寄りかかって寝ていたネルが床で頭を打って起きたのはご愛嬌です。銀には相当文句言ってたけど。
みんなが目を覚ましたので、とりあえず朝食を簡単に済ませてから、再度小屋に集合して早朝の出来事を報告する事に。
話を聞いた上でのみんなの意見を確認してみたんだけど、風羽花も銀も僕に従う姿勢だったし、ネルも興味深々の様子だったので、滝壺の主の要望を受け入れる形で滞在延長を決定しました。
「それで、さっき言ってたベルってどんなのよ?見せて」
「うん、いいよ!はい、コレ」
「へぇ!なかなか良さそうな…ってコレ竜鈴(りゅうりん)じゃない!」
「なにそれ?凄そうな名前だと思うけど」
めちゃくちゃ気軽にくれたから、そんな名前が付いてるとか想像すらしなかったです。
「竜鈴は、竜が心を許した相手に渡す宝物なのよ。
個体ごとに違う音色で、鳴らせば何処にいても駆けつけてくれるってされてるわね。本当なのかは私も知らないけど」
「それって本当ならとんでもない品物じゃん…」
「そうね。でもコレがあるってことは、そのヌシさっきの話だと蛇って聞いてたけど竜なのかもしれないわ」
「じゃあ、魔物ってことなんだ…?」
「あー、いや、それは違うわ。
簡単に言うとドラゴンと竜は別のモノなのよ。ガイアスでもほぼ混同されてるから、多分知ってる人は少ないんじゃないかしら。
ドラゴンは魔石を持った魔物なんだけど、竜は分類するなら精霊になるのよ」
「へぇ…そうなんだ?僕も違いはわからないかも」
「そうかもしれないわ。仮に戦ったとして、その攻撃力や方法、身体の硬さなんかもよく似てるの。
ただ、むしろドラゴンより竜の方が強いんじゃないかしらね」
ネルの説明はわかりやすかったけど、滝壺の主、竜だったのかな?
まぁ、実際に呼び出してみたらはっきりするか。
朝の目覚ましはそんな風羽花の叫びでした。
『昨日のあいつなのです!今度こそ仕留めるです!』
風羽花はそう言いながら、今にも飛び出して行きそうな様子をしています。
「ちょっと待って、風羽花。慌てないで?僕も一緒に確認するから」
風羽花を窘めながら窓から様子を伺うと、それは滝壺の中にいました。
「蛇?」
まだ朝靄が立ち昇る夜明け寸前の時間。しかも朝日を遮る木々のせいもあり、シルエットのみの姿は鎌首を持ち上げた大蛇の様に見えます。
仲間達を起こさないように静かに小屋を出て、滝壺の畔へと慎重に足を運ぶと、こちらに気付いたようにシルエットが移動し始めました。
水面から頭まではおよそ2メートル程度。水中にある身体のサイズは予想すら出来ない状況です。
『我が住まいによく参った。そこな鳥とは昨日以来であるな』
シルエットは唐突に話かけて来ました。
「もしかして貴方はこの滝壺の主でしょうか?昨日から周辺を荒らしてしまって申し訳ないです」
一応棲家を荒らした事には後ろめたさもあり、一言詫びをいれてみました。
『なに、些細な事であるよ。気にする程のものではない。我が住まいと知って来たわけでもなかろう?』
「もちろんです。知らぬ事とはいえ、改めてお詫びを」
『ふむ、人の子らしからぬ応対。驚きが先だ。しかしてこの様な辺鄙な場所に何用であろうか?』
「この場に用事があるわけではありません。下流へ向かう道の途中、一晩の休憩場所としてここに滞在したまでです」
シルエットから敵意は感じません、むしろこちらに興味深々といった雰囲気を醸し出しているくらい。
『ではすぐに立ち去ってしまうと言うわけか…それは少々残念であるな。
昨日より、ぬしらの様子が気になっておったのだが。とはいえ我の都合で足止めするわけにもいかぬし』
「え?そうなんですか?でしたら急ぐ旅でもありません。もう1日この場所をお借りしても?」
実際今すぐ行かなきゃいけない理由もないし、連泊出来るならそれはそれで、やりたい事もないわけじゃない。
まぁウチの自称女神様がなんて言うかにもよるので、最終的な結論はそれからだけど。
『無論構わぬ。我の邪魔になるものでもないでな。であれば…』
「ヌシ様、申し訳ありません。僕には仲間がおります。その者の意見を確認する時間を頂けませんか?」
『な、なんとそうであるか…うぬ…それは仕方ないであろうな。であれば良い報告を待つとしよう。
我も急がねばならぬ都合もないゆえ、ぬしらの話がまとまれば我を呼ぶが良い。滝壺の畔に立ちこのベルを鳴らせ。すぐに参ろう』
そう言うと、僕の前に淡い光が浮かび上がります。光に触れると、それは花火の様にパッと舞い散り、僕の手のひらには美しい装飾が施された銀色のハンドベルが残されました。
『そのベルは、ぬしにやろう。人の子の言うところの贈り物じゃ。気に病む必要はないぞ?何も我の頼みを強制するつもりはないからの』
「そうなんですか?そう仰って頂けるのでしたらありがたく頂戴いたします」
『うむ。ではしばしの別れじゃ。ベルの音を首を長くして待っておるぞ、元から長いんじゃがなっ!あっはっはっ!」
そう言いながら、滝壺の主のシルエットは水中へと沈んでいきました。
最後なんか聞こえたけど…まさかの持ちネタ?
言葉遣いの感じよりも軽い性格な気がします。
「へぇ、なかなか面白いじゃない!そのヌシって見てみたいわね」
あの後小屋に戻ると、何事もなかったかのようにみな熟睡してました。警戒レベル低っ!
ただ、僕の動く気配を感じた銀が目を覚まして立ち上がったから、銀に寄りかかって寝ていたネルが床で頭を打って起きたのはご愛嬌です。銀には相当文句言ってたけど。
みんなが目を覚ましたので、とりあえず朝食を簡単に済ませてから、再度小屋に集合して早朝の出来事を報告する事に。
話を聞いた上でのみんなの意見を確認してみたんだけど、風羽花も銀も僕に従う姿勢だったし、ネルも興味深々の様子だったので、滝壺の主の要望を受け入れる形で滞在延長を決定しました。
「それで、さっき言ってたベルってどんなのよ?見せて」
「うん、いいよ!はい、コレ」
「へぇ!なかなか良さそうな…ってコレ竜鈴(りゅうりん)じゃない!」
「なにそれ?凄そうな名前だと思うけど」
めちゃくちゃ気軽にくれたから、そんな名前が付いてるとか想像すらしなかったです。
「竜鈴は、竜が心を許した相手に渡す宝物なのよ。
個体ごとに違う音色で、鳴らせば何処にいても駆けつけてくれるってされてるわね。本当なのかは私も知らないけど」
「それって本当ならとんでもない品物じゃん…」
「そうね。でもコレがあるってことは、そのヌシさっきの話だと蛇って聞いてたけど竜なのかもしれないわ」
「じゃあ、魔物ってことなんだ…?」
「あー、いや、それは違うわ。
簡単に言うとドラゴンと竜は別のモノなのよ。ガイアスでもほぼ混同されてるから、多分知ってる人は少ないんじゃないかしら。
ドラゴンは魔石を持った魔物なんだけど、竜は分類するなら精霊になるのよ」
「へぇ…そうなんだ?僕も違いはわからないかも」
「そうかもしれないわ。仮に戦ったとして、その攻撃力や方法、身体の硬さなんかもよく似てるの。
ただ、むしろドラゴンより竜の方が強いんじゃないかしらね」
ネルの説明はわかりやすかったけど、滝壺の主、竜だったのかな?
まぁ、実際に呼び出してみたらはっきりするか。
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