転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第一章 異世界に来ちゃいました

第17話

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 風羽花の覚醒については、ネルとオハナシしないといけないなぁと思いながら、彼女の捕まえてきた魚で夕食の準備を始めました。
 そろそろ焼く以外も試してみたいなぁと思ってみたり。

 …調味料欲しい。

 「ねぇ、ネル?ちょっと教えて?」

 「何かしら?まともな事?」

 …ひどい。

 「泣くよ?マジで…そんな言い方しなくてもさぁ」

 「なによ?自分の行いを省みなさい?」

 「返す言葉もありません。…じゃなくて!
 調味料の事聞きたかったんだってば。ガイアスにも塩以外の調味料ってあるんだよね?ずっと塩味ってのも味気ないなぁって思うんだけど」

 「まともじゃない?頭の調子悪いの?大丈夫?」

 …まともを心配されました。泣いてもいいですか?

 「ごめんなさいってば!冗談だからっ!ねっ?
 あー…調味料でしょ?あるわよ!あるある!胡椒とかの香辛料もあるわよっ!名前も地球とほぼ同じだからっ!」

 必死で取り繕うネルの言葉に安心しました。一生塩味だけとか流石にきついからなぁ…

 「とは言っても、特に胡椒なんかは遠方との交易でしか手に入らないから超高価よ?
 数量も大量には入ってこないから、それこそ王族とか一部の貴族や富豪しか使わないわね。普通の人は 一生口にしない事もざらよ」

 やっぱりそうなんだね。地球でも中世ヨーロッパでは同量の金と同じ価値だったとか習った記憶があるし。そうなんじゃないかなぁとは予想してたけど。

 でもそうなると、ハーブ的な野草を探さないとダメってことになるよね。
 とは言え、そんな野草博士みたいに詳しくはないわけで…
 まぁ焦らず探せばきっと見つかるだろうし。食べられるかどうかは魔力眼で判断はつくから、食べられる野草を片っ端から試してみれば徐々に見つかるはず。
 そんな野草のリストを作ってみてもいいかもね。 

 なんて事を考えながら、魚を捌いて3枚におろします。今夜は切り身をスープに入れる予定。
 それに塩を振って、仔鹿の脂身から溶かし出した油で焼き目をつけてから一旦火からおろします。
 余熱で火が通るまで休ませてる間に、スープに入れる野菜を取りに行く事にしました。

 滝壺の周りに足を運んで、魔力眼を発動。
 そこに生えている野草は意外な事にどれも赤表示。近くの物を引き抜いてみたんだけど…

 「なんだこりゃ?」

 思わず声が出ちゃいました。
 だって根元が人型をしてて、かつ動いてるんだもん。

 …気色悪いわっ!

 伝説のマンドラゴラみたいに叫ぶわけでもなく、根も赤表示。けど、食べづらいってば。
 草をしばらく眺めてると段々動きが無くなって、そのうちぐったりしました。

 …あ、死んだ。

 まさにそんな感じ。すると赤かった表示がたちまち灰色に…
 え?まさかそういう事?
 もう一度同じ草を引き抜いてみると、やはり同じ流れになりました。

 …踊り食い一択じゃん。

 仕方ないので覚悟を決めて、引き抜いた草をすぐに滝壺の水でさっと洗ってパクリ。

 …!!?

 あらいやだ、美味しいじゃありませんか。草の踊り食いって斬新な経験でした。
 しかも結構香りが高く、少しワサビの様な爽やかな辛味もあって、肉の付け合わせにしても良く合いそうな感じ。
 鮮度が命って事かなぁと思ったんだけど、実は動いている間に葉を切り取ると、止まってからも食べられる事も判明しました。多分動いている内に品質が低下しちゃうんだろうね。
 この草は多めに収穫して、スープに入れる事にしました。

 付近の探索を続けると、昨日も採った芋も見つかったし、運良くバジルの様な香りの野草も見つかりました。
 今日の夕食はなかなか期待出来るね。

 炊事場に戻るとさっきの続きです。
 まずは魚のアラを水に投入、塩を加えてしばらく煮出します。
 アクを取りつつ、香りが出てきたらアラを取り出し刻んだ謎人参を投入。火を弱めて葉物の野草を数種類入れ、全体的に火が通ったら、焼き色を付けた切り身を入れて一煮立。
 これでスープは完成。

 次に3枚おろしの魚に、刻んだバジルっぽい葉っぱを塗して、塩を振り仔鹿油でソテー。

 イモは茹でてから仔鹿油で軽く色が付く程度に炒めてっと。

 今日の夕食完成です!

 「何よ!?凄いじゃない!初日に食べた焼いただけの魚とはえらい違いね!」

 「でしょ?さっき話してたハーブっぽい葉っぱとか香味野菜的な謎人参が見つかったからさ、ちょっと頑張ってみた」

 「冷めない内に食べましょうよ!いただきまーす」


 ネルの口にも合った様で、みごとに完食してくれました。

 「ユーマが言ってた、調味料とか香辛料ってやっぱり大切ね。これならよく理解出来るわ。
 きっと胡椒なんかがあれば、もっとバリエーションが増えるのよね?」

 「そういう事!だからいつか必ず手に入れるつもり」

 「私も賛成するわ!もっと美味しい物食べさせてね?」

 今日収穫した野草は後で多めに確保して、保管庫にストックする事にしました。
 収納の時間経過が遅れるって凄い価値があるんだなぁと実感する事になりました。

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