転移先で世直しですか？いいえただのお散歩です

こうたろう

文字の大きさ

大中小

16 / 170

第一章異世界に来ちゃいました

第15話

しおりを挟む

　朝イチから銀達を受け入れてたからすっかり忘れてました。
　朝ごはんまだでした。

　所帯が一気に倍以上になったから、準備する量が大変だなぁと思ってたんだけど、銀達は自分で確保するんだってさ。

　『我等これまで通りに、食糧は自力で確保いたしますゆえ、殿のお手を煩わせる事はありませぬ』

　配下を連れて森の方へ駆けていっちゃいました。
　まぁ、助かるけどさ。

　それなら今のウチに、ってな具合で手早く済ませます。

　今日は僕がさっき仕留めた、仔鹿っぽい獣の肩ロース辺りを細かく刻んで、香りの良い野草と塩で炒めたものと、やっぱりサラダにしました。
　そのうちドレッシングとか作ろうかな？

　さすがに肉は食べ切れる量ではないので、さっき作った保存箱に大雑把に切り分けてしまっておきます。

　「ねぇユーマ？責めるつもりはないから、その箱の事説明してくれるかしら？」

　「えーとね、簡単に言えば保冷庫っていうのかな。箱の内側に薄く延ばした石を貼り付けてあってさ、その石に魔力を込めて冷たくなるようにしてみた」

　「へぇ、なかなか面白い発想ね。冷気を発生させる石なんて、今まで見たことないっていうのが唯一の問題ね。
　まぁ、この小屋の中だけで使う分には特に気にしない事にするわ」

　…凄く遠回しに責めてるんですけど？

　「まぁ正直言えばさ、収納の時間停止が確認出来たら不要だとは思うんだけどね。まだ一回だけだから一応念の為。
　それにさぁ、もしアイスとか作れたら必須だと思うし」

　「アイスって何よ？」

　「あー、元いた所のお菓子の名前」

　「ふーん…そうなんだ？初めて聞いたわ。作れそうなの？」

　「多分ね。バニラはあるかわかんないけど」

　ネルは興味なさそうな顔と態度してたけど、あれは間違いなく期待してるはず。上手いこと材料集めて実験しなきゃね。

　そんなやりとりもしながら、朝食と片付けを終えて街へと向かうのを再開しました。

　小屋を収納してネルを拾い上げたところで、森の方から銀と連れの狼達が駆け寄ってきます。

　『殿！お待ちしておりました！これより我等一同、先行するとともに露払いなどさせていただくでござる』

　「そうなの？でも先行偵察は風羽花がしてくれるよ」

　『それにつきましては、風羽花殿と打ち合わせいたしました。
　この者達が風羽花殿の手足となり、風羽花殿は目と我が殿への連絡役をいたします』

　『銀おじさんとお話したです！』

　どうやら僕とネルが話をしている時に、役割を話し合ってたみたい。

　『この辺りは元々、我等一族のナワバリでござった。
　しかしてさほど気を配る必要も無いのでござるが、どうしても先だってそれがしが手傷を負わされた様なハグレの獣や、魔獣供が入り込む事もありますゆえ』

　「そっか、2人ともありがとう。そういう事ならお願いするね。
　でも、安全第一なのを忘れないで？銀の配下達にも何かあれば悲しいからさ。
　もし、手に負えないような敵が見つかったら、まずは一度合流するようにしてね。どう対処するかはまた考えればいいから」

　風羽花と連携してくれるなら、索敵については多分大丈夫だと思うし。

　『我が殿のご配慮に感謝いたします。それがしは、殿のお側にてお2人を護衛させて頂くでござるよ』

　「わかった。頼むね！」

　風羽花と狼達が先行したのを見て、僕達も沢を下り始めたんだけど、ここに来て嬉しい出来事が。

　「銀！アンタの毛皮いいわね！ユーマの肩より快適だわ！」

　そうです！なんとネルの精神攻撃から開放されたんです！
　隣を歩く銀を見ていたネルが、背中に乗りたいと言い出した時は一瞬喜びそうになって焦りました。

　「銀？お願いしてもいい？」

　『もちろんでござる！ネル様に乗っていただけるとは、光栄の極みでござるよ！』

　「良かったね、ネル！」

　なんとか悟られる事なくネルを移し終えた時に、危うくニヤケてしまいそうになるのを取り繕いながら、内心ではガッツポーズしてしまったのは、多分生涯の秘密です。

　ネルは銀の首元あたりの長い毛に包まれるように、全身でしがみ付く姿勢で寛ぐことにしたみたいです。
　ただあのままだと、多分ウッカリ居眠りでもした拍子には落っこちる可能性が高そう。
　今夜にでも銀にハーネスを装着して、ネル専用の座席を取り付けてあげようかと思います。

　そんな事を考えていると、風羽花から連絡が。

　『主人様！大変なのです！滝なのです！高いのです！』

　どうやらこの先には、比較的に落差がある滝があるようです。

　「風羽花ありがとう！狼達と滝の辺りで待機してね。まずは一度合流しようか」

　『了解なのです！』

　滝までは特に危険もなく到着しました。
　ぱっと見ただけでも、恐らく落ちれば生きてられない落差があるようで、ここをどう抜けるか思案のしどころ。
　とりあえずみんなの意見も聞いてみたいし、相談がてら休憩にしよう。

しおりを挟む