転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第一章 異世界に来ちゃいました

第13話

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 「おかえり、ユーマ。状況はふーちゃんから報告を受けたわ。なんかごめんね…」

 帰るなり、ネルが労いの言葉をかけてくれました。

 「いや、ネルが気にする必要はないよ。僕もヤル気で出たんだしさ。
 こういう結果になったのも偶然だしね」

 実際、リーダーが負傷してたとかでなければ殲滅すべき敵だったはずだ。

 「もしアイツ達がまた襲って来たとしたら、その時は容赦する気もないし。ネルと風羽花は僕が守るよ」

 「そっか、わかった。その時は頼むわね!それでお風呂は入れそうかしら?」

 …そこかい。ブレないねー

 「大丈夫だよ多分。すぐに準備してくる」

 外に戻って湯船を取り出しお湯を沸かした頃には、狼達の姿は見えなくなっていたから、きっと森に戻ったんだと思います。

 「準備できたよ!先に入るから」

 僕もさっきの闘いで疲れたからさ…

 昨日の反省を受けて、湯船には段差部分を作るように改良した結果、僕の両手は無事解放されました。
 まぁネルの登り降りはやらなきゃいけないし、今日も目潰しの恐怖と戦いながら、腕の微妙な感触にドキドキしたのはネルに筒抜けだったけど。
 明日はネル用の階段と脱衣場を作ろうと思います…

 『主人様!ふうかはお風呂めっちゃ好きです!』

 昨日と違ったのは、風羽花が話せるようになった事で、思いの外賑やかな入浴時間になった事。
 風羽花にも使える様に浅い所を作ったのに、何度も僕の手や曲げた膝の上に移動して来て、風呂の良さをしきりに訴えてきます。
 かわいいから癒されるんだけどさ。

 風羽花は元々綺麗好きらしくて、テイムされる前も毎日欠かさず水浴びしていたそうだ。
 お風呂も水浴びのつもりで突入したら、お湯が余りに気持ちよくて水浴びが物足らなくなったらしいです。

 『今日もふうかは水浴びしたです。冷たいのも悪くないでしたけど、お風呂には敵わないのです!』

 『ふうかはすっかりお風呂のとりこなのです!』

 『お風呂は最強なのです!』

 ずっと喋ってる感じだね。
 でも実は昨日も同じ様にしてたみたいです。今日からは会話が成立する様になったってだけだった。

 僕も戦闘の疲れもあって、ちょっとだけ長湯したけど、風羽花のおかげもあってものすごく癒されました。

 お風呂から上がって水を飲む時に、思い付きで冷やそうと試すと、キリッと冷えた冷水になって美味しかったけど、やっぱりまたネルに怒られました。そのわりにネルも嬉々として飲んでたけどさ。


 振り返れば今日は、昼夜2回も戦闘があったり風羽花と話せる様になったりと結構濃い一日だった気がするよね。
 それに、地味に回復魔法が使える様にもなったし、攻撃魔法も、火弾に岩弾に風刃それと痺雷も使えた。
 まだ荒削りだけど、このガイアスの中で生き抜く力が付き始めたってことなのかも。
 毎度毎度ネルには怒られるけど。

 「ねぇユーマ?まだ起きてる?」

 ベッドに入って横になってたらネルから声をかけられました。

 「そろそろ寝そうだったけど何?」

 「…ごめん。寝る前に一つだけ聞かせて?ここに連れてきた事、不満に思ってたりする?」

 …何かと思えば

 「いや全然。逆にネルには感謝しかないよ。おやすみ…すーっすーっ」

 「え?もう寝たの?でも。ありがと。私もユーマで良かった…」

 最後のは聞いてなかった事にしとこうかな。




 『主人様!おはよー!』

 「うー…風羽花おはよう。ネルは?」

 『ネルお姉さんもさっき起こしたです!』

 どうやら風羽花が1番早起きさんらしいです。

 「ふわぁ…ゆーまおはよー」

 どうやらネルが一番寝起きが悪いようだ。

 さぁ今日も一日中頑張って、早いとこ街に着こう!
 そう思って、顔を洗いに川まで行こうとドアを開いたところで思わず固まってしまいました。

 「ユーマ?そんなトコで何突っ立ってんのよ?顔洗いにいかないの?」

 後ろからのネルの声で我に返って思わず叫んじゃった。

 「何事!?」

 だってそこには、ピシッといい姿勢で座りながら尻尾をフリフリしてる狼が4匹、行儀よく並んでたから。




 『それがし、殿の懐の深さと優しさ、そして去り際に仰った力強いお言葉に心服致しましてございます!あのあとこれらの者共にもそれがしの心持ちを伝え、1人殿の御許に馳せ参じるつもりでございましたが、この者共も共に参ると申しまして、殿のお許しを頂けますれば、それがし共々我等こそ殿の刀となるべく、早朝より失礼承知の上、まかり越しましてございます!どうか!どうかご慈悲をもちまして殿の御許の末席を頂戴致したく御願い申し上げます!』

 ….うわぁ。またやらかしたぁ

 朝から小屋の前に行儀良く並んでるのを見て、どうやら敵意は無いだろうと手を伸ばすとスッと頭を下げるから、そのまま撫でてみると嬉しそうに尻尾をフリフリ。
 もしかしてって思ったから

 「一緒にいたいの?」

 って聞いて見たら、僕の言葉がわかるみたいで尻尾の振りが三倍速になったんだよね。
 だから風羽花にしたのを一つに纏めて魔力を流してみたんだけど『撫で撫で嬉しいでござる!』って。

 …ござる?

 一瞬疑問符が頭をよぎったんだけどさ、つい「嬉しいの?」って聞いちゃったんだよね。
 そしたらめっちゃ興奮した声で

 『殿!?殿はそれがしの声が聞こえるでござるか?なんと!さすが殿でござる!』

 ってさ…

 その後がさっきの台詞なわけで…

 暑苦しい仲間が増えましてござるよ…



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