13 / 170
第一章 異世界に来ちゃいました
第12話
しおりを挟む
獣は狼で間違いないようです。
犬よりも一回り大きな身体に、鋭い牙。
特にこの群れのリーダーと思われるヤツは、他をさらにもう一回り上回るサイズをしてる。
僕が小屋を出ると、4匹がリーダーを守る様に位置し、その他は円状に囲いを作ってきました。
1、2、3、4…全部で15匹となかなかの数の群れなんじゃないかな。
「…悪いけど、鬼軍曹の命令なんだよ。大人しくやられてくれ」
…すっげぇ悪役の台詞っぽいわー。
そんな事も思いながら魔力を集めます。
狙いはリーダーの一択。作り上げた岩弾を最大速度で打ち出す。
きっと予想してなかったに違いない。リーダーは棒立ち状態。
よし、仕留めた!
と思ったんだけど、リーダーの前に飛び込んだ1匹の狼の身体に遮られてしまいました。
岩弾はそいつの胴体を弾けさせ、確実にその命を絶ったはずだけど、本命には傷一つ負わせる事が出来なかった。
しかも、この一撃で連中の警戒心はマックスになったみたいだ。不味いな…
最初の不意打ちで連中の頭を潰して、後は順次殲滅のプランだったけど完全に失敗です。
幸いさっきの攻撃で少し慎重になっているのか、まだかかってくる様子はなさそう。
とはいえ徐々に包囲の輪を縮めて来ているあたり、相当場慣れした動きなんだと思います。
きっと攻撃タイミングを読んでいるに違いない。
瞬間、リーダーの狼が叫び声を上げ、10匹の狼が一斉に飛び掛かって来ました。
…よし、予想通り。
僕は用意していた魔力を風に変換させると、周囲に風の刃を飛ばす。
その一撃で、半数が絶命し、残りの半数も脚を失うなり腹を裂くなりして戦闘不能状態となったようです。
しかし群れの惨状を見たはずのリーダーに撤退する様子は見えません。
彼我の戦力差は明確だと言うのに…
相当の自信があるのか、隠し球があるのか、まだ油断は禁物みたいだね。
見つめ合う事しばし、リーダーを守る3匹も含めて、全く動きが見られません。
こちらの疲労を待っているのかな?
いや、様子がおかしいです。
リーダー狼が身体をふらつかせたように見えた後、その場に横倒しになってしまいました。
なに何?なんだ?どうした?
周りの狼達もリーダーを心配する様に、代わる代わる顔を近づけては、またこちらを警戒する。
まさか、ここにくる前に負傷でもしていたんだろうか?僕はどうしても気になって近づいてみる事にしました。
もちろん周りの奴らは牙を剥いて威嚇してきます。噛み付かれるわけにもいかないから、ちょっと動けなくなってもらわないとね。
以前ネルから食らった神罰を思い出しながら、弱い雷で電気ショックを与えると、3匹とも舌を出して痙攣し始めました。まぁ、死ぬ事は無いだろうけど。
護衛達を無力化した事で諦めたのか、リーダーは牙を見せながら唸るだけで抵抗する気はないようです。
「よし、抵抗しないなら攻撃はしないからな?落ち着けよ」
そう語りかけながら様子を見ると、リーダーは脇腹に大きな裂傷があり、そこからはかなりの出血をしたような痕跡が残っていました。
恐らくここに来る前に、何かから攻撃を受けてかなり不味い状態になっていたんじゃないかな?
でも、群れの他の狼は怪我していたような様子はなかったよな。恐らく何か強力な敵に遭遇して、群れを守る為に戦って負傷したのかも。
それで群れを守り切ったものの、ここまで来て限界を迎えてしまったってとこじゃないかな。
そう思うと色々辻褄が合うなぁ…
もしかしたら僕は結構酷い事をしてしまったのかも…
僕は思わず、リーダーの脇の傷に手を当てて「治れ」と思いながら魔力を流します。
…出来た。そんな気はしてたけど。
淡い優しい光がリーダー狼の身体を覆うと、ざっくりと切り裂かれていた傷口がかなりのスピードで塞がっていきます。
ほんの少しの間に、すっかり傷はなくなったみたい。
そのせいか、リーダーの苦しげだった表情は落ち着きを取り戻し、荒かった呼吸も収まったように見えました。
「これで傷は大丈夫だと思うよ。ただ体力とか血は戻らないと思うから、しばらく大人しくしてたら元気になるはず。
あー、あと群れの連中はごめん。こっちも身を守らなきゃいけなかったし、そこはお互い様って事にしといて」
僕の言葉がどこまで理解できるかはわからないけど、リーダー狼に語りかけてみます。
「そこに倒れてる3匹は死んじゃった訳じゃないから、しばらくしたら復活すると思うよ。
キミもまだ本調子には程遠いと思うから無理せずじっとしておきな?もうこちらから攻撃するつもりはないから、みんな回復したら森に帰るといい。
もし、さっき死んだ連中の敵討ちしたいんなら、完全に体調戻ってから襲っておいで。
その時は手加減なく殲滅するから、その覚悟でね」
そう伝えると、リーダーは力無く丸くなる。どうやら休んで体力を回復するつもりでいるらしいです。
僕は振り返る事なく、小屋へと戻る事にしました。
犬よりも一回り大きな身体に、鋭い牙。
特にこの群れのリーダーと思われるヤツは、他をさらにもう一回り上回るサイズをしてる。
僕が小屋を出ると、4匹がリーダーを守る様に位置し、その他は円状に囲いを作ってきました。
1、2、3、4…全部で15匹となかなかの数の群れなんじゃないかな。
「…悪いけど、鬼軍曹の命令なんだよ。大人しくやられてくれ」
…すっげぇ悪役の台詞っぽいわー。
そんな事も思いながら魔力を集めます。
狙いはリーダーの一択。作り上げた岩弾を最大速度で打ち出す。
きっと予想してなかったに違いない。リーダーは棒立ち状態。
よし、仕留めた!
と思ったんだけど、リーダーの前に飛び込んだ1匹の狼の身体に遮られてしまいました。
岩弾はそいつの胴体を弾けさせ、確実にその命を絶ったはずだけど、本命には傷一つ負わせる事が出来なかった。
しかも、この一撃で連中の警戒心はマックスになったみたいだ。不味いな…
最初の不意打ちで連中の頭を潰して、後は順次殲滅のプランだったけど完全に失敗です。
幸いさっきの攻撃で少し慎重になっているのか、まだかかってくる様子はなさそう。
とはいえ徐々に包囲の輪を縮めて来ているあたり、相当場慣れした動きなんだと思います。
きっと攻撃タイミングを読んでいるに違いない。
瞬間、リーダーの狼が叫び声を上げ、10匹の狼が一斉に飛び掛かって来ました。
…よし、予想通り。
僕は用意していた魔力を風に変換させると、周囲に風の刃を飛ばす。
その一撃で、半数が絶命し、残りの半数も脚を失うなり腹を裂くなりして戦闘不能状態となったようです。
しかし群れの惨状を見たはずのリーダーに撤退する様子は見えません。
彼我の戦力差は明確だと言うのに…
相当の自信があるのか、隠し球があるのか、まだ油断は禁物みたいだね。
見つめ合う事しばし、リーダーを守る3匹も含めて、全く動きが見られません。
こちらの疲労を待っているのかな?
いや、様子がおかしいです。
リーダー狼が身体をふらつかせたように見えた後、その場に横倒しになってしまいました。
なに何?なんだ?どうした?
周りの狼達もリーダーを心配する様に、代わる代わる顔を近づけては、またこちらを警戒する。
まさか、ここにくる前に負傷でもしていたんだろうか?僕はどうしても気になって近づいてみる事にしました。
もちろん周りの奴らは牙を剥いて威嚇してきます。噛み付かれるわけにもいかないから、ちょっと動けなくなってもらわないとね。
以前ネルから食らった神罰を思い出しながら、弱い雷で電気ショックを与えると、3匹とも舌を出して痙攣し始めました。まぁ、死ぬ事は無いだろうけど。
護衛達を無力化した事で諦めたのか、リーダーは牙を見せながら唸るだけで抵抗する気はないようです。
「よし、抵抗しないなら攻撃はしないからな?落ち着けよ」
そう語りかけながら様子を見ると、リーダーは脇腹に大きな裂傷があり、そこからはかなりの出血をしたような痕跡が残っていました。
恐らくここに来る前に、何かから攻撃を受けてかなり不味い状態になっていたんじゃないかな?
でも、群れの他の狼は怪我していたような様子はなかったよな。恐らく何か強力な敵に遭遇して、群れを守る為に戦って負傷したのかも。
それで群れを守り切ったものの、ここまで来て限界を迎えてしまったってとこじゃないかな。
そう思うと色々辻褄が合うなぁ…
もしかしたら僕は結構酷い事をしてしまったのかも…
僕は思わず、リーダーの脇の傷に手を当てて「治れ」と思いながら魔力を流します。
…出来た。そんな気はしてたけど。
淡い優しい光がリーダー狼の身体を覆うと、ざっくりと切り裂かれていた傷口がかなりのスピードで塞がっていきます。
ほんの少しの間に、すっかり傷はなくなったみたい。
そのせいか、リーダーの苦しげだった表情は落ち着きを取り戻し、荒かった呼吸も収まったように見えました。
「これで傷は大丈夫だと思うよ。ただ体力とか血は戻らないと思うから、しばらく大人しくしてたら元気になるはず。
あー、あと群れの連中はごめん。こっちも身を守らなきゃいけなかったし、そこはお互い様って事にしといて」
僕の言葉がどこまで理解できるかはわからないけど、リーダー狼に語りかけてみます。
「そこに倒れてる3匹は死んじゃった訳じゃないから、しばらくしたら復活すると思うよ。
キミもまだ本調子には程遠いと思うから無理せずじっとしておきな?もうこちらから攻撃するつもりはないから、みんな回復したら森に帰るといい。
もし、さっき死んだ連中の敵討ちしたいんなら、完全に体調戻ってから襲っておいで。
その時は手加減なく殲滅するから、その覚悟でね」
そう伝えると、リーダーは力無く丸くなる。どうやら休んで体力を回復するつもりでいるらしいです。
僕は振り返る事なく、小屋へと戻る事にしました。
0
お気に入りに追加
536
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる