転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第一章 異世界に来ちゃいました

第7話

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 「この沢を下った先に街があったのよ」

 ネルと風羽花で上空から偵察して貰った結果、今一番知りたかった情報が手に入った。

 「やっぱり、2人に頑張って貰って良かった」

 「そうね!街が見つかったのも良かったけど、ふーちゃんと空を飛ぶのも想像以上に楽しかったわ。ちょっと怖かったけど…」

 「ちょっと羨ましいかな。そんな経験ないし」

 実際のところ、先輩社員が山奥の現場に行く時にヘリで行くのを見送った経験しかなくって、いつか自分もって思ってたから余計に。

 「ユーマの場合そのうち飛びそうな気がするけど…」

 「もしかしてそういう魔法ってある!?」

 「さぁ?どうかしらねー?知ってても絶対教えないけど!」

 ネルが意地悪だ。

 「あんたの場合教えるのが不安すぎるのよ!非常識過ぎて!」

 「ひどいなぁ…常識とか知らないに決まってるじゃん。さっき来たばっかしなんだからさぁ」

 「それでもよっ!人として少しは考えなさいっ!」

 ネルがそういうのも、2人が偵察に行ってる間に僕がやらかした魔法の実験のせいらしい。

 「あのね?確かに魔法の常識を最初に教えてない私にも非があるとは思うわ。それでもね!どういう風に考えたら、この短い時間にこんな小屋ができるわけっ?」

 塩が出たんだから他にもなんか出来ないかなぁって、色々試してる内に、木を切ってみようとか、板にしてみようとか、組み立てられるかな?とか思っただけじゃんか…
 それにもうすぐ日が沈むし、野宿もアレだしなぁって思ったからこそ、小屋を作ってみただけだし。

 「魔法って便利だねっ!」

 「そんな魔法ないわよっ!」

 怒られました。

 「ユーマの場合、魔法使いって言うより『魔力使い』って言う方がしっくりくるのよ。
 ガイアスにはそんな職業勿論ないんだけどね、普通の魔力の使い方じゃないもの。魔力そのものを運用してるって感じかしら」

 「正直、僕にはよくわからないんだけどさ。まぁ、出来たもんはしょうがないって事にしてよ」

 移動するのには陽が落ちてからではリスクが高いからって理由で、結局僕が作った小屋で一晩過ごす事にして、今は夕食後の雑談タイムだ。
 夕食の材料集めには風羽花が大活躍してくれて、みんな満足出来る夕食になりました。

 「でもまさか、鉄板やらお皿やらコップまで作るとは、全く想像しなかったわ…」

 「石の加工は意外と簡単だったけどね。鉄板はちょっと苦労したかも!」

 「何をどうやったかは聞かないわ…」

 「えー?聞いてよ!砂鉄集めて溶かして板にするの大変でさ」

 「あーあーあー!きーこーえーなーいー!」

 ちょっと酷くない?
 まぁ、そのせいで魔力切れって言うらしいけど、しばらく意識無くなってたみたいで、ネルにも心配かけたから仕方ないけどさ。

 「まぁそんな話は置いておいても、これだけの小屋なら使い捨てにするのも勿体ないわよね。仕方ないとは言っても」

 「そんな話って…もう別にいいけどさぁ。ちなみにこの小屋使い捨てにはしないよ?」

 「は?どういう事?もしかしてココを拠点にするって事?」

 「あぁそっか、そういう考え方も出来るのか。そうじゃなくてさ、これ持ち運びしたらまた使えるじゃん?」

 そうなんだ。この小屋って実は土台に据え付けてるわけじゃないから、移動する時に動かせるようになってる。

 「え?そりゃまぁそうだけど、こんな大きいもの引きずって移動するわけ?仮に分解するにしたって、軽くなるわけじゃないのよ?」

 「いや、そのまま持ってく。あ!そっか!ネル、ちょっと外付き合って?」

 なんだかわけわからないっていう顔のネルを連れて外にでる。

 「さてと…いくよっ!!しゅーのー!」

 「…んなっ!?なんて事してんのー!?今の、ぜっっったいにダメなやつだからっ!」

 「え?そうなの?」

 「収納魔法自体はあるわよ?でもね!普通は小屋とか入らないからっ!」

 …この世界の普通とか知らないってば。

 ネルが言うに、収納魔法を使える人自体は割といるらしい。大体普通規模の集落なら1人や2人はいるレベルだから、0.5%前後って感じ。
 問題なのは容量で、ほとんどの人の場合だと精々大きめのスーツケース2個分くらい。
 極々稀に荷馬車1台分ほどの容量があって、そういう人は自分が商人をやるか、大きな商会に好待遇で雇われているかだそうだ。
 しかも容量の大小は、魔力量だとか経験や慣れに関係なく生来の才能みたいな要因で決まるという認識だとの事。
 だからこそ、小屋一棟かそれ以上の容量があるなどと他人にバレた場合、最悪身体の自由を奪われて、便利な倉庫か輸送コンテナ扱いされてしまう可能性だってあるかもしれない。

 「超高額で雇われるとかじゃないの?」

 「容量が大き過ぎるのよ。それの価値以上に引き抜きや裏切りの不安が出てくるわ。
 それであれば、ありとあらゆる手段で奴隷化しようとするでしょうね。そうすれば逃げられない」

 そうだ、この世界には奴隷なんて制度があるんだった。うっかり騙されて犯罪奴隷になんてされたら、合法的に身柄を押さえられてしまう。確かに絶対にバレたらダメなやつだ。

 「そっか…ネル、ありがとう。そんな事ちっとも思いつかなかったよ」

 「うん…まぁ仕方ないわ。貴方のいたところは平和過ぎるんだもの。やっぱり他人の悪意に対して無防備なのよ。
 私としては好きなんだけどね!そういう所」

 ネルは慰めてくれたけど、僕自身がもう少ししっかりしなきゃだね。自分の為にも…

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