転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

文字の大きさ
上 下
4 / 170
第一章 異世界に来ちゃいました

第3話

しおりを挟む
 ネルは少しだけ憂いを帯びた声で話してくれました。

 「ユーマが来てくれたから、これから回復に向かうはずなんだけど、このガイアスは徐々に衰退していってたの。
 その原因がリソースってモノ。
 どんな世界でも、その世界自体の存在を維持する為にこのリソースを消費してるのね。それでも、色々な活動の結果として新しくリソースは生成されるから、世界は維持される仕組みになってる。
 でもガイアスはリソースの消費量が徐々に増えて行ってるの。
 なんでかっていうと、制約が少な過ぎたから。
 私は、私の管理してるこの世界を豊かにしたくて出来るだけ全ての現象に制限をかけたくなかった。
 だから世界は発展したわ。
 でもユーマのいた世界と違って、色々な種族や生物、魔法まであるこのガイアスは、タスクが多い分リソースの消費量が増え過ぎた。
 でも、すごく良い世界だって偉い神様も認めてくれて、なんとかテコ入れしようって決めてくれたの。
 元々決まってるルールは変えられないから、その隙間を縫ってリソースを補充することで滅びを遅らせて、その間に収支のバランスを取れる様に発展の方向を調整しなさいって。
 私はこの世界が大好き!だからこそ滅びの流れを変えたい。
 ユーマがガイアスに飽きて、生きるのをやめたら十分なリソースが補充されないんだ。
 だから、ユーマには楽しみながらこの世界で寿命が尽きるまで生きてもらいたいのよ。
 私も精一杯協力するから!」

 ネルはさっきよりも明るい表情で僕を見つめてる。
 「なっがいセリフだなぁ…」

 「はぁっ?ちょっと!人がせっかくいい事言ってんのに、なんて反応するのよー!」

 …照れ隠しだよ。言わすな。

 「冗談だって!僕もせっかく来たんだし、ネルが協力してくれるんでしょ?
 何歳が寿命なのかわからないけど、目一杯楽しんで生きてやる」

 「…ありがとう」

 こうしてガイアスで、第二の人生を送ることを決めた僕だった




 …だったよ。

 …ねえ?やっぱなかった事にしてもいい?

 「ダメに決まってるでしょ!何情け無い事言ってんのよー!」

 「だったらこの状態をなんとかしてくれ!」

 「むーりーでーすー!なんの力も無いって説明したわよねー?ユーマが頑張るしかないんだから!」

 そう、僕達は現在全力疾走しています。
 なんでかって?
 それはね、追われてるから…でっかいイモムシに。
 イモムシの癖に速いんだなこれがまた。

 きっかけは、ネルだ。

 「ねぇユーマ?私地上に降りたの初めてなのよ」

 「それがどうかした?」

 「うん、知らなかったんだー!お腹空くの…」

 「そっかー!いい勉強になったねー!」

 ネルはどうやら、地上に降りて神力を封じられたことで 女神様じゃなく、ただのちっちゃい人になったらしい。

 「もうむーりー!お腹空き過ぎて歩けなーい!ねーねー!ごーはーんー!」

 ….歩けないって、アンタ最初からずっと僕の肩の上に座ってるだけじゃん。

 「僕だって結構空腹なんだって。そもそもこんな何も無い森の中に転移させたの誰だっけ?」

 「うっ!…そ、それはまぁ私だけどさぁ。だって仕方ないじゃない!転移してくるところなんて誰にも見せられないしさ」

 「それならそれで、前もって森を抜けるルートとかさ、せめて街のある方角とかしらべておく事位出来たんじゃ…」

 「忘れてない?私、女神様よ?なんでそんな雑用みたいなことしなくちゃいけないわけ?」

 「もうその女神様だって事自体が、信用出来ない様な気がしてきてるって事は内緒ね」

 「うんわかってる…っていうわけないでしょ!どういう意味よー!」

 てな具合に、空腹によるイライラを誤魔化しつつ、スタートの森をあてもなく彷徨ってたんだ。

 「ねぇユーマ?私そろそろ声出す元気もなくなってきたわ…」

 「僕だって、ネルと違って歩いてる分、限界が近いから…」

 「あっ!見てユーマ!アレって果物なんじゃない?」

 そう言うネルの指し示す先には、よくわからないけど、パッと見た感じ林檎のような雰囲気の赤い何かがいくつか揺れてた。

 「そうかもしれないけど…」

 「間違いないわ!私の勘がアレは果物だって言ってるもの!さぁ早く取りなさい!」

 とはいえ、僕の勘は違うと囁いてる。だって微妙にゆさゆさ揺れてるから…

 「もぅ!じれったいわね!」

 そう言うと、ネルは僕の肩からふわりと飛び降りて駆け寄って行く。

 …あ、白だ。

 そんな事を思いながら、ネルの向かう方へと足を運びかけた瞬間

 「ぎにゃー!!!」

 ちょっと女性としてはどうなんだろうかと思う様な叫び声が聞こえ、それと同時に、やはり女性としてどうかと思う様な顔をしたネルがこちらに向かってダッシュして来ました。

 「ユーマ!逃げて!アレは無理!絶対ダメなやつ!」

 咄嗟に僕はネルを拾い上げて、彼女が来た方向に目をやると

 「うわっ!なんだアレ!気色悪っ!」

 そこには紫色と緑色のまだら模様のイモムシがコッチに向かって進んでるのが見えたんです。
 しかも推定1メートル位のが3匹…

 「シギャー!!」

 なんだか嗤った様な気がする…


しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...