転移先で世直しですか？いいえただのお散歩です

こうたろう

文字の大きさ

大中小

3 / 170

第一章異世界に来ちゃいました

第2話

しおりを挟む

　衝撃の告白を受けた僕は、さすがに我が身の不運を嘆いて少し落ち込んだりもしました。
　でも、そんな僕の様子を見て流石にいたたまれなくなったらしい女神様が、必死になって励ましてくれたおかげもあって、今はさっきよりも前向きになってます。

　「ほんと、申し訳ないと思ってるから！だから色々とサービスしてるのよ？」

　女神様曰く
　   ・外見の調整
　   ・心身の強化
　   ・各種能力の付与
　   ・記憶の保持
　といった、通常の転移ではやらない様な処置がされているということだった。

　まだ実際に確認はしてないけど、見た目はこの世界の標準から言えば、10人中5人は二度見する位のややイケメンに。年齢も18歳になってるそうだ。
　
　そもそも、この世界で生きる事自体が僕に対しての償いでもあるからこそ、少しでも楽に生活出来るようにという計らいなんだって説明してくれた。

　「で、女神様。このガイアスって世界の事も説明してほしいんだけど？全く知らないわけだしさ」

　「えぇそれはもちろん！
　でもその前に、その『女神様』って呼び方やめて欲しいかも。
　私にもネールドリアって名前があるしさ、一応この世界では宗教的な主神って事になってるんだよね。だから、ネールドリア様って呼びなさいよ」

　「えーやだ長いし」

　「…長くないし！ね？お願い！」

　「いや、むしろ主神なんだろ？気軽に呼ぶ方が宗教的にまずい気がするわ。
　…そうだなぁ『ドリア』でいいんじゃない？美味しそうだし」

　「理由がイヤぁ…せめて『ネル』か『ネーデ』にして…」

　「仕方ないなぁ…じゃあ『ネル』でいいや」

　「投げやりね…もう」

　女神様的には雑な扱いに不満があるみたいだけどさ、自身の行いを顧みてから発言して欲しいところだよね。全く。

　「それでね、貴方の『酒井悠真』って名前もコッチには無い名前なのはわかるでしょ？これから生活してく上で違和感無い方がいいと思うの」

　「だからといって妙な名前にしたって、自分だって認識出来なくて、呼ばれた時に反応出来なかったら怪しまれるんじゃない？」

　「それもそうだし、名前って結構魂と深く結びついてるから偽名ってマイナス要素が多いのよ。
　だから『ユマ』とか『ユーマ』ならコッチでも違和感ないし、マイナスもないわ」

　「それなら『ユーマ』でいいよ。『ユマ』じゃ女の子みたいだしさ」

　そんな説明で名前も落ち着いた。

　それからガイアスについても話を聞いていく。

　「まずガイアスと元の世界の違いとかからね」

　ネルの説明はわかりやすかった。要はファンタジー小説的な世界観だって事。

　文化的には中世ヨーロッパ並みで、貨幣経済は成立してる。

　世界中には様々な人種がいて、エルフやドワーフ、獣人に魔族なんてのもいるそうだ。
    お互いに憎み合う様な関係ではないけど、やっぱり自分の種族が一番って意識はあって、過去には人種間戦争もあったらしい。
    今はそれほどでもなく普通に人種間の混血も違和感なく受け入れられてるようだ。

　また、動物も地球と同じ様な獣もいれば、魔獣と呼ばれる好戦的な動物や魔物もいるらしい。
　獣と魔獣の違いは主に特殊能力の有無で、魔物は魔力と魔石を体内に持っている存在なんだそうな。
　魔物は獣型だけじゃなく、お約束的な怪物はほとんど魔物に分類されてるみたいだ。例えば、アンデット系とかキメラ系、ドラゴン系がそれ。
　逆にオオカミなんかがわかりにくい例で、灰色狼は動物だけど銀狼は麻痺と恐慌の効果を持つ遠吠という特殊能力があるから魔獣、影狼は闇系の魔法を使い、魔石があるから魔物になるんだと。

　それから、社会的には階級制度があり奴隷も存在してるそうだ。
　ただし、奴隷については種族差別的な奴隷は表向きは無い事になってるらしい。この辺は各国家の方針により差があるから普遍的な常識ではないんだって。

　「なんとなく理解したよ。で、魔法があるって話だけどさ」

　「もちろんユーマも使えるわよ！一般的な魔法だけじゃなくて、ちょっとだけレアな魔法も使える様になってるはずだからねっ！」

　魔法に関しては割と使える人は多いそうだ。個人差や種族によって得手不得手があったり、特殊な背景がないと使えない魔法もあるらしいけど。

　「魔法が使えるかどうかで差別があった時代もかつてはあったんだけどね。　あ、でも国や地域によっては今でもあるみたい」

　「ネルの力で無くすとかは出来なかったの？」

　「先程も言った通り、直接的な影響を及ぼす事はルール違反なのよ。神託で具体的に明示するわけにもいかないし」

　「神様って言ってもままならないんだなぁ…」

    「まぁ管理神ってのはそういう存在なのよねぇ。限界が決められちゃてるの」

　やっぱりシステム的な設定とでも言う枠は超えられないんだろうな。

    「大まかにガイアスの事は理解してもらえた？それでね…」

　ネルはさっきまでとうって変わって、少し憂いを帯びた表情を見せながら、ガイアスの現状と僕を転移させた理由を語り始めたんだ。

しおりを挟む