上 下
1 / 11

普通を求めて異世界へ

しおりを挟む


夕暮れの茜に染った世界
一人の少年が眼下に雲が漂っている光景を納めながら高速で落下していた。
通常ならば命はない場面だが少年には焦りはない。「あ~少し濡れるかもなぁ」なんて呟きながら全く動じた様子は無い。
そのまま上から雲に突っ込むがすぐに雲の下からボバッと音をたてながら雲を引き流星の様に落下を続ける。横目に見える夕焼けに少し眩しそうに目を細めるが直ぐに下にある緑の広がる美しい光景に頰を緩めるも少し瞑目し先程までいた故郷を振り返る。しかし、思い返した故郷は辛く苦しいことの方が楽しい記憶よりも多く苦笑いを浮かべ直ぐに目を開き振り返った故郷を頭の隅に追いやると今度こそはと再度決意を新たにする。




急速に近づく地面は鮮明に見える様になり空の旅の残り時間がもう僅かしか残っていない現実を理解させられてしまう。目測ではおよそ1000メートルを切ったところだろうか。
流石に俺がいくら人外染みた能力を持っていようとこのまま地面に激突すれば無事では済まないだろう。
良くて骨折、打ち所が悪ければ死ぬ事もあるかもしれない。

…骨折で済む可能性がある自体がおかしいかもしれないが自分から傷付きたい訳でも無いのでそろそろ着地に向け体勢を整えつつ勢いを殺していく。
「【風壁】」
普段なら矢なども凌げる正に壁とも言えるものなのだが圧縮されているの風を逆に展開してやればエアクッションになる。
ちょっとした衝撃と共に徐々に落下速度が落ちていくのを確認してこのままいけば怪我はせずに済みそうだなと安堵する。
大分落ちた速度と草の葉一本一本が鮮明に見える距離まで来た時にもう一つの魔法を使用する。
「【氷華】」
この魔法も普段ならば攻撃に使う様なものだけれども俺と地面の間に薄い花弁の様な氷を作り最後の勢いを殺していく。実際はこの魔法を使わなくても多分怪我はしないだろうけども一応念のためという事で展開した。
【風壁】の時よりも強い衝撃を感じながらも一枚目の氷の花弁に着地する。
パリンッ
と、軽やかな音と共に砕ける氷の花弁は夕焼けの世界と相まってとても幻想的だったけれども余韻に浸るまでもなく次の氷の花弁に着地する。一枚目と変わらない音をたてながらも大分減速することができそのまま三枚目四枚目と続けていく。

最後の十枚目を割り地面に着地する時には上空数千メートルからダイブしたとは思えないほど軽く着地を決め降り立った新たな新天地の感触を確かめる。

先程まで展開していた氷の花弁の欠片が夕日に照らされキラキラと舞う中異世界の勇者である少年ノアはティターニアに降り立った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

リアルにファンタジーのほうがやってきた! ~謎の異世界からやってきたのは健気で可愛いモフモフでした~

ねこのにくきう
ファンタジー
これは日本に住む一人の人間と謎の異世界から来た一匹のモフモフが紡ぐ物語。 現代日本に生きる一人のしがない人間と、そこに突然現れた一匹?のモフモフが出会うとき、一つの物語が動き出す。 どうやらこのモフモフはタイジュ様とやらに言われてここに来たらしい。えっ、なんで、モフモフがしゃべってるの?新種の生物発見なの!?どうやら目的は口にくわえて持ってきた木の枝を育てることとある場所を訪れることらしい。なんか、厄介ごとの匂いがプンプンなんですが・・・。 司が出会ったモフモフの正体とは?謎の異世界に待ち受ける真実とは?そして、司はそれを知った時にどんなことを思い、考え、どんな行動をとるのだろうか。モフモフ系ほのぼのファンタジー開幕です。 ※お気に入り登録ありがとうございます。読んでいただいている方々に感謝いたします。応援頂けると励みになります。 ※あらすじ、タイトルについては変更する可能性があります。R15は保険です。1話おおよそ1500~2000文字としています。更新は基本的に2日に1回ほど、19時を目安に更新します。 ※小説家になろうさんでも掲載しています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~

秋鷺 照
ファンタジー
 強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)

元孤児の魔王様は女王殿下を嫁にする

あかべこ
ファンタジー
15歳の誕生日に魔族の国の王になったものの気が弱い甘ちゃんと舐められ血気盛んな部下に命を狙われるノアは、血を流さずに王としての実績を積むため人間の国の女王・アイリスを妻にして王配として征服者になることをもくろむ……! 不定期更新予定。 表紙はぴくるーの百合メーカーで作りましたhttps://picrew.me/image_maker/59568

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

国を建て直す前に自分を建て直したいんだが! ~何かが足りない異世界転生~

猫村慎之介
ファンタジー
オンラインゲームをプレイしながら寝落ちした佐藤綾人は 気が付くと全く知らない場所で 同じオンラインゲームプレイヤーであり親友である柳原雅也と共に目覚めた。 そこは剣と魔法が支配する幻想世界。 見た事もない生物や、文化が根付く国。 しかもオンラインゲームのスキルが何故か使用でき 身体能力は異常なまでに強化され 物理法則を無視した伝説級の武器や防具、道具が現れる。 だがそんな事は割とどうでも良かった。 何より異変が起きていたのは、自分自身。 二人は使っていたキャラクターのアバターデータまで引き継いでいたのだ。 一人は幼精。 一人は猫女。 何も分からないまま異世界に飛ばされ 性転換どころか種族まで転換されてしまった二人は 勢いで滅亡寸前の帝国の立て直しを依頼される。 引き受けたものの、帝国は予想以上に滅亡しそうだった。 「これ詰んでるかなぁ」 「詰んでるっしょ」 強力な力を得た代償に 大事なモノを失ってしまった転生者が織りなす 何かとままならないまま チートで無茶苦茶する異世界転生ファンタジー開幕。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...