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4.この際、探偵は誰でもいい
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「ダイイングメッセージに、直接犯人の名前を書くなんて初めて見るな。推理ドラマとかじゃ絶対にありえない」
そう言いながら、どこか嬉しそうな菱田。犯人が判明したことが嬉しいのかもしれない。
「実際のダイイングメッセージなんて、そんなもんじゃないか? 気の利いたものや捻ったものなんて、死の間際が訪れた奴には思いつけるもんじゃない。あぁいうのは、推理作家の先生が、散歩がてらに煙草をふかして思いつくもんなんだよ」
細川は捻りもなにもないダイイングメッセージを残した。漢字で、しかもフルネームでだ。そう、それは確かに蘭でも知っている名前だったし、その人物が犯人だと考えれば、これまでのアリバイの問題も全てクリアする。
「でも……私は信じられない。あの麗里ちゃんが人殺しだなんて」
ここに来てからも滅多に口を開いたことのない香純が、やや感情的に言葉を漏らした。もう一度、細川の動画を見返してみる。もう、その映像で全てを納得した者が多かったのか、蘭の手元を覗き込んでいるのは、麗里が犯人ではないと信じて疑わない様子の香純だけだった。
「いや、残念ながら神楽坂が犯人だと考えると、色々筋が通ってしまう。第一の事件だって、見方が大きく変わってくると思うんだが」
全員にアリバイがある状態で、麗里がリネン室にて殺害された。しかし、麗里を殺害することが可能であり、なおかつアリバイを作る必要のない人物が、確かに1人だけいたのだ。それは――被害者となるはずの麗里本人だ。
「第一の事件によって自分を殺すことで、表舞台から姿を消し、そして第二と第三の事件を起こした。つまり、最初の事件は自分の存在を消すための、彼女の自作自演だったってことか!」
菱田が興奮した様子で唾を飛ばす。榎本は小さく、しかし自信がありげに頷いた。
「その通り。そう考えると、例の悲鳴の意味も変わるだろ? あれは、自分が何者かに殺害されたことを印象づけるためのお芝居だったんだ。そして、自ら殺されたふりをする。おそらく、ピアノ線など、それらしいものが残されていたのは、さも第三者が、アリバイのある状態で、なんとかして彼女を殺そうとした――と僕達に思い込ませるための細工だったんだ」
そう言いながら、どこか嬉しそうな菱田。犯人が判明したことが嬉しいのかもしれない。
「実際のダイイングメッセージなんて、そんなもんじゃないか? 気の利いたものや捻ったものなんて、死の間際が訪れた奴には思いつけるもんじゃない。あぁいうのは、推理作家の先生が、散歩がてらに煙草をふかして思いつくもんなんだよ」
細川は捻りもなにもないダイイングメッセージを残した。漢字で、しかもフルネームでだ。そう、それは確かに蘭でも知っている名前だったし、その人物が犯人だと考えれば、これまでのアリバイの問題も全てクリアする。
「でも……私は信じられない。あの麗里ちゃんが人殺しだなんて」
ここに来てからも滅多に口を開いたことのない香純が、やや感情的に言葉を漏らした。もう一度、細川の動画を見返してみる。もう、その映像で全てを納得した者が多かったのか、蘭の手元を覗き込んでいるのは、麗里が犯人ではないと信じて疑わない様子の香純だけだった。
「いや、残念ながら神楽坂が犯人だと考えると、色々筋が通ってしまう。第一の事件だって、見方が大きく変わってくると思うんだが」
全員にアリバイがある状態で、麗里がリネン室にて殺害された。しかし、麗里を殺害することが可能であり、なおかつアリバイを作る必要のない人物が、確かに1人だけいたのだ。それは――被害者となるはずの麗里本人だ。
「第一の事件によって自分を殺すことで、表舞台から姿を消し、そして第二と第三の事件を起こした。つまり、最初の事件は自分の存在を消すための、彼女の自作自演だったってことか!」
菱田が興奮した様子で唾を飛ばす。榎本は小さく、しかし自信がありげに頷いた。
「その通り。そう考えると、例の悲鳴の意味も変わるだろ? あれは、自分が何者かに殺害されたことを印象づけるためのお芝居だったんだ。そして、自ら殺されたふりをする。おそらく、ピアノ線など、それらしいものが残されていたのは、さも第三者が、アリバイのある状態で、なんとかして彼女を殺そうとした――と僕達に思い込ませるための細工だったんだ」
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