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3.深まる謎と疑惑
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【2】
「後頭部に複数の打撲痕。そのうちのひとつが脳挫傷まで引き起こしたか。現場の状況からして、細川はこの地下室で何者かに襲われたらしい。それは、壁や棚に飛び散った血液で分かる。しかも、最初の一撃では死なずに、しばらく息があったのだろう」
うつ伏せに倒れた細川の頭部付近は、彼の頭から流れ出たであろうもので血だまりができていた。その血だまりから一本の赤い筋が伸びている。
「だろうね。そうでなけりゃ、ダイイングメッセージなんて残そうとは思わないだろうから」
赤い筋の先には細川の指があり、その指から先に、血だまりとは少し違う血の広がりがあった。たっぷりと血液を広げた――というより、限りある血液を薄く乱雑に伸ばし広げたような跡。まるで、そこに書かれていた血文字を足でもみ消したような痕跡である。
細川の死体が発見されたあと、榎本と安楽、そして蘭の3人は、細川の死因などを調べるべく地下室に残った。真美子と香純を落ち着かせるため、菱田と英梨は、彼女達と共に食堂で待機することになったのだった。
「凶器は――なんだって考えられる。そこの工具箱の中にはハンマーとかも入っているしな。とにかく、鈍器のようなもので殴られたことに間違いはないね」
榎本の言葉に耳を傾けつつ、おそらくはもみ消されたであろうダイイングメッセージの跡を眺める安楽。ゆっくりと立ち上がった。
「そもそも、俺はダイイングメッセージというものに疑問を抱いていてね。例えば、死の間際だってのに、どうしてわざわざ暗号にして犯人の名前を伝えなきゃならないんだろうね? いっそのこと、犯人の名前を書けばいいと思うのは俺だけなんだろうか」
ミステリ小説などで扱われるダイイングメッセージは、それこそ探偵が頭を捻りに捻った結果、ようやく辿り着けるような難解なメッセージが多い。それを、死の間際に思いつけるような頭の回転の速さを持つものならば、そもそも自分が助かるために脳のリソースを使いそうだ。とにもかくにも、ダイイングメッセージというのは、いかにも謎解きっぽい感じがして、蘭も現実的だと思ったことがない。
「まぁ、犯人の名前を言ってしまったら、ミステリでもなんでもなくなるからね」
苦笑いを浮かべつつ、安楽の疑問に対してわざわざ反応してやる優しさを見せる榎本。周囲が気を遣ってくれているのというの、まるでそれに気づけない。ある意味図太すぎる神経は、彼の強みでもあり、また弱みでもあろう。
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うつ伏せに倒れた細川の頭部付近は、彼の頭から流れ出たであろうもので血だまりができていた。その血だまりから一本の赤い筋が伸びている。
「だろうね。そうでなけりゃ、ダイイングメッセージなんて残そうとは思わないだろうから」
赤い筋の先には細川の指があり、その指から先に、血だまりとは少し違う血の広がりがあった。たっぷりと血液を広げた――というより、限りある血液を薄く乱雑に伸ばし広げたような跡。まるで、そこに書かれていた血文字を足でもみ消したような痕跡である。
細川の死体が発見されたあと、榎本と安楽、そして蘭の3人は、細川の死因などを調べるべく地下室に残った。真美子と香純を落ち着かせるため、菱田と英梨は、彼女達と共に食堂で待機することになったのだった。
「凶器は――なんだって考えられる。そこの工具箱の中にはハンマーとかも入っているしな。とにかく、鈍器のようなもので殴られたことに間違いはないね」
榎本の言葉に耳を傾けつつ、おそらくはもみ消されたであろうダイイングメッセージの跡を眺める安楽。ゆっくりと立ち上がった。
「そもそも、俺はダイイングメッセージというものに疑問を抱いていてね。例えば、死の間際だってのに、どうしてわざわざ暗号にして犯人の名前を伝えなきゃならないんだろうね? いっそのこと、犯人の名前を書けばいいと思うのは俺だけなんだろうか」
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「まぁ、犯人の名前を言ってしまったら、ミステリでもなんでもなくなるからね」
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