探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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3.深まる謎と疑惑

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 英梨が部屋から出てきて間もなく、トレーを持ったままの菱田が螺旋階段を降りてくる。しきりに首を傾げているし、細川に拒絶でもされてしまったのか。

「――どうしたんだ? 彼とうまい具合に仲直りできなかったみたいだけど」

 まだ湯気のたつスープをトレーに乗せた菱田。食事の提供を拒絶されたのか。榎本の問いにも首を傾げる。

「いや、何度か扉をノックしてみたけど反応がなくて――。どうしたものかと思って戻ってきてみたんだ」

 どうやら、菱田は細川に会えなかったらしい。いくら立腹していたとしても、訪れてきた菱田をまる無視というのは酷いのではないだろうか。本当に部屋に引きこもるつもりか。そういう意味で考えると、返事をしないということは徹底していると考えることもできるが。

「そうか。だったら、僕も一緒に行こう。もしかすると、変なプライドが邪魔をしているだけかもしれないし、僕が話したほうが応じてくれるかもしれない」

 実はこの時点で、蘭の脳裏には嫌な予感が漂っていた。返事がないのは、反応がないのは――もしかすると、返事をしたくとも返事ができないのかもしれない。反応したくとも、もう反応できないのかもしれない。ここは、あえて細川が妙な意地を張っていると思いたい。

「あぁ、すまないね」

 菱田はそう言いつつ蘭達のほうへと視線を向けてくる。この2人はどうしようか――そのまま榎本のほうに向けられた視線は、そのような相談をしているかのように見えた。そして、あたかもその通りだったかのごとく榎本が答える。

「彼女達にも同行を願おうか。食堂に残してきた男性陣は安楽君だけだ。いざ、なにかあった時に、彼だけで女性全員を守るのは難しい。こっちはこっちで責任を持つべきだ」

 てっきり、危険だからと先に食堂に帰されると思っていたのだが、榎本は判断は違うらしい。あえて女性陣を分散させることで、リスクを軽減させる狙いがあるのだろう。

「じゃあ、私達はあなた達についていけばいいのね?」

 英梨が榎本に確認を取り、榎本が「その通りだ」と首を縦に振る。こうなると、大勢で細川の部屋に押しかけることになってしまうが大丈夫だろうか。逆に彼を刺激して、部屋から出てこないなんてことも考えられるのでは。

「それじゃ、改めて行こうか。ひねくれた天照を岩戸から引きずり出してやるんだ。まぁ、冗談ではあるが」

 榎本の冗談は、多少の教養を求められるものが多く、意味が分からない人間には、とことん分からないのではないだろうか。いや、意味が分かったところで、さほど面白くないというのが最大の欠点か。
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