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3.深まる謎と疑惑

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「大体、料理に毒が入っているかもしれないと思うなら、食べなきゃいいだけだろう? それなのに、なんでわざわざ別行動を取って孤立したがる? 周囲が食べてるのを我慢して見ていられないのか?」

 本人はきっとあおっているつもりはないのだろう。しかしながら、その言葉は細川の手痛いところを突いたらしい。しばらくすると、細川は「ひっ、1人になりたいんだよ」と呟いた。

「止めはしない。止めはしないが、殺人鬼を警戒するあまり部屋に引きこもったやつ、翌朝死体で見つかる説があるくらいだからな。自己判断に任せはするけど、どうぞ気をつけて」

 引き止めておきながら、あえて突き放す。おそらく、そこまで考えて物事を言ってはいないのだろうが、その安楽の駆け引きは、多少なりとも有効だったらしい。細川がゆっくりと戻ってくる。

「べ、別に部屋にこもってもいいんだけど、そこまで言うなら……」

 思ったよりもあっさりと、安楽の提案をのんだ細川。しかし、そうは問屋が卸さない。きっと声だけは食堂にも届いていたのであろう。菱田が食堂から顔を出すと、細川に向かって「どの面下げて戻ってくるつもりだ?」と唾を飛ばす。

「ちょっと、なにがあったか分からないけど、こういうことやめようよ……」

 英梨が止めに入るが、しかし菱田は首を横に振る。

「いいや、こういうタイプの人間は集団にいるべきじゃない。特にこんな緊急時に統率がとれないのは困るしな」

 売り言葉に買い言葉。一度は落ち着いたかのように見えた細川も、菱田につられるかのように表情を強張らせる。そして、改めて言い争いが始まった。

「だから、統率をとってくれって誰がお願いしたんだよ? 大体、昨日今日会ったばかりの人間を信用して、なおかつ言うことを聞けなんて無理な話なんだよ! まぁ、あんたにそれだけのリーダーシップがないってだけの話だけどさ!」

 わざわざ状況を察せずとも、なにが起きたのは安易に分かる。菱田は元より、他人より上に立とうとしたがるところがある。大学のサークルでは歳上ということもあるし、また男性ということもあって、それについて自然とみんな受け入れたというか、そもそもサークルを引っ張っていこうとする人間が他にいなかったから、上手く回っていたのだと思う。それと同じ気になって、菱田がここでもリーダーシップを取ろうとした。しかしながら、そこに細川が噛み付いたという形なのであろう。

「こういう時だからこそ団結すべきなんだ! 力を合わせて――」
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