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3.深まる謎と疑惑
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随分と回りくどい言い方になっているが、すなわち窓の鍵が内側からかかっていたのであれば、外から部屋に侵入することは不可能だったことになる。
「そして、部屋には鍵がかかっていた。こいつは部屋の中からツマミを回して施錠するタイプのものだ」
当たり前にことを安楽は言っただけ。でも、思わず蘭は口にする。
「窓と扉には鍵がかかっていた。だとしたらどうやって犯人は部屋の外に出たの?」
あまりにもテンプレートな密室に、つくづく安楽の巻き込まれ体質を心配する。なぜ、彼はこうも、ザ・ミステリと言っても過言ではない状況に巻き込まれてしまうのか。
「確かに密室の件も気にはなるが、それ以上に気になっていることがある。それは――どうして神楽坂さんの遺体が部屋に移されていたかだ。犯人には、わざわざ神楽坂さんの遺体を部屋に運び、しかも加能さんの遺体と同様にバラバラにする必要があった。一体なぜだ? なぜ、そんなことをする必要がある?」
安楽は部屋のツマミを眺めつつ、そしてベッドのほうを一瞥する。ベッドの上には、残念ながら蘭の荷物が散乱していた。正直、あんまり散らかっていても気にはならない。
「いや、待てよ。可能性としては――それもあり得るか。そう考えると、一応筋は通ってしまうけど。それも考慮して考えてみるべきなのかもしれない」
安楽は自分で自分を納得させるかのごとく呟き落とすと、英梨と蘭のほうへと向き直る。
「一度、みんなのところに戻ろうか。ちょっと確認しておくべき事柄が出てきた。みんなにも意見を聞きたいし、それに……こんな時でも腹が減るから困るな」
人というのは単純なもので、そう言われてみると急にお腹が空いたように思えるから不思議だ。英梨と顔を見合わせると「彼の言う通りだね」と英梨。
安楽と共に部屋を後にすると、食堂へと向かう。菱田の提案により、蘭達を除く全員が食堂で待機しているはず。なにやら雲行きが怪しくなってきたのは、エントランスに出た時のことだった。
「そして、部屋には鍵がかかっていた。こいつは部屋の中からツマミを回して施錠するタイプのものだ」
当たり前にことを安楽は言っただけ。でも、思わず蘭は口にする。
「窓と扉には鍵がかかっていた。だとしたらどうやって犯人は部屋の外に出たの?」
あまりにもテンプレートな密室に、つくづく安楽の巻き込まれ体質を心配する。なぜ、彼はこうも、ザ・ミステリと言っても過言ではない状況に巻き込まれてしまうのか。
「確かに密室の件も気にはなるが、それ以上に気になっていることがある。それは――どうして神楽坂さんの遺体が部屋に移されていたかだ。犯人には、わざわざ神楽坂さんの遺体を部屋に運び、しかも加能さんの遺体と同様にバラバラにする必要があった。一体なぜだ? なぜ、そんなことをする必要がある?」
安楽は部屋のツマミを眺めつつ、そしてベッドのほうを一瞥する。ベッドの上には、残念ながら蘭の荷物が散乱していた。正直、あんまり散らかっていても気にはならない。
「いや、待てよ。可能性としては――それもあり得るか。そう考えると、一応筋は通ってしまうけど。それも考慮して考えてみるべきなのかもしれない」
安楽は自分で自分を納得させるかのごとく呟き落とすと、英梨と蘭のほうへと向き直る。
「一度、みんなのところに戻ろうか。ちょっと確認しておくべき事柄が出てきた。みんなにも意見を聞きたいし、それに……こんな時でも腹が減るから困るな」
人というのは単純なもので、そう言われてみると急にお腹が空いたように思えるから不思議だ。英梨と顔を見合わせると「彼の言う通りだね」と英梨。
安楽と共に部屋を後にすると、食堂へと向かう。菱田の提案により、蘭達を除く全員が食堂で待機しているはず。なにやら雲行きが怪しくなってきたのは、エントランスに出た時のことだった。
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