探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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2.長い夜の始まり

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【3】

 風の音。風が窓を覆った板を叩く音。定期的に繰り返されるそれが、風が窓を叩く音ではないことに気づいた蘭は、ゆっくりと瞳を開ける。見たことのない天井。そこが別荘の客室であることに気づくのには、そこまで時間はかからなかった。自然と枕元に置いてあった腕時計に視線をやる。午前3時。まだ外は暗いし、起きるには少し早い。

 中途半端に寝たせいか、妙に頭がぼんやりとしている。思考がまとまらず、思わず二度寝をしそうになってしまった。それでも、定期的に響くノックの音が、辛うじて蘭をベッドから引きずり落とした。

「はーい、こんな時間にどうしたの?」

 まだ夢の中に半分足を突っ込んだままだった蘭は、眠い目をこすりながら扉のほうへと向かう。化粧は完全に落としており、俗にいうすっぴんだった。しかし、それすらも気にならないほど、眠気のほうが勝っていた。

「ごめんね、こんな時間に……」

 相手を確認する前に、無意識で鍵を開けようとしていた自分に気づかされる。扉の向こう側からした声は聞き覚えのあるもの。英梨だった。

「どうしました? 怖くて眠れないとか?」

 この時の蘭には、まだ冗談を言える余力があった。扉の向こう側が英梨だということもあり、なんの疑いもなく鍵を開ける。扉を開けると、そこには英梨だけではなく、真美子の姿もあった。派手目な化粧がなりを潜めていたから、一瞬誰かと思ったが。珍しい組み合わせというか、別々の大学の英梨と真美子がセットになっているというのは、なんだか違和感があった。

「いや、その――ちょっと隣の部屋から変な音が聞こえてさ。ね?」

 真美子の言葉に英梨が頷く。

「えっと……2人の隣の部屋って」

 正直なところ、他人の部屋割りまで把握していない。なんとなく、英梨が角部屋ということを覚えているくらいだ。

「亜純。さっき、なんか変な音が聞こえたっていうか、なんだか争っている音? とにかく、妙な音がずっと聞こえていて、それで、どうしようかと思っていたら、こちらの方と廊下でばったり会って」

 呼び方がよそよそしいことから、おそらく英梨は真美子の名前すら、しっかりと把握できていないらしい。ますます、夜中に揃って起こしにくるには不自然な組み合わせだ。

「私、中々寝付けなくてさ。やっとうとうとし始めたと思ったら、隣から変な音がし始めたんだよね。それで、直接部屋に声をかけに行くにしても、私は彼女とあまり面識ないし、どうしようって廊下に出てみたら、たまたま一緒になって――」
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