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2.長い夜の始まり
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「あ、私も行きます」
地下室にはお酒もツマミも山ほどあった。蘭はそこまで酒を飲むわけではないが、毎日飲む程度には依存している。昨日は事情があって飲めなかったが、それだけでも酒に対する欲求が強く出ている。いや、こんな状況が、なおさらに飲酒欲求を強めているのだろう。
「だったら、僕も行こうかな」
「私も……」
考えることは誰でも同じなのだろう。見ず知らずの土地で起きてしまった殺人事件。しかも殺害されたのは見知った仲間内の人間だ。そして、犯人もまた仲間内にいる可能性が高い。このような状況で飲酒など危険極まりないが、しかし施錠をした部屋の中で、気絶するほど飲みすぎなければ、時として酒は良薬になるのではないか。結局のところ、ほとんどの人間が地下室に酒を取りに行くことになった。
「ねぇ、安楽君。私、多分怖くて眠れないから――」
それぞれ、部屋に持ち帰る分の酒を選んで抱える。安楽はついて来ただけのようで手ぶらだ。そこに亜純が猫撫で声を出す。それに気づいた蘭が視線を飛ばすと、亜純は言葉をひそめた。残念ながら「安楽君の部屋に行ってもいい?」という文言は、しっかりと耳に届いたのであるが。
「やめておいたほうがいいと思うよ。そいつ、馬鹿みたいにお酒弱いし、1杯でも飲もうものなら寝ゲロするから。その辺りも含めて考えたほうがいいと思う」
別に誰が安楽の部屋に遊びに行こうが勝手ではあるが、状況が状況なのだ。今日は大人しく部屋にいたほうがいい。それに、安楽が酒に弱いのは紛れもない事実だったはず。昼間の船酔いを見ているから、連想するのは簡単であろう。
「あ、だったら今日は遠慮しておこうかなぁ」
亜純も安楽の世話まではしたくないのであろう。他の人達がどうするつもりなのかは分からないが、しかし今日みたいな日は、それぞれ個室で過ごしたほうが確実に安全なのではないか。
「――別に誰かと一緒に飲みたければ、そうすればいいと思う。俺達は大人なんだし、それくらいの自己判断はできるだろ? もちろん、なにかがあったら自己責任だけどね」
安楽の部屋に亜純が行くのを諦めたことで、自分にもチャンスが回ってきたと思ったのか、それぞれの部屋で集まっての飲酒を否定しない菱田。極論から言ってしまえば、菱田の言葉に収束してしまう。誰かの部屋で集まって飲むのは結構だが、なにかがあった時は自己責任。新たなる犠牲者が出たとしても、その責任は当事者達にある。リーダーシップを発揮する菱田が認めたものの、しかし全員が大人しく部屋に戻ったようだった。少なくとも螺旋階段をのぼった女性陣はいなかったし、螺旋階段をのぼらなかった男性陣もいない。とりあえず蘭が確認できた時点での話にはなってしまうが。
地下室にはお酒もツマミも山ほどあった。蘭はそこまで酒を飲むわけではないが、毎日飲む程度には依存している。昨日は事情があって飲めなかったが、それだけでも酒に対する欲求が強く出ている。いや、こんな状況が、なおさらに飲酒欲求を強めているのだろう。
「だったら、僕も行こうかな」
「私も……」
考えることは誰でも同じなのだろう。見ず知らずの土地で起きてしまった殺人事件。しかも殺害されたのは見知った仲間内の人間だ。そして、犯人もまた仲間内にいる可能性が高い。このような状況で飲酒など危険極まりないが、しかし施錠をした部屋の中で、気絶するほど飲みすぎなければ、時として酒は良薬になるのではないか。結局のところ、ほとんどの人間が地下室に酒を取りに行くことになった。
「ねぇ、安楽君。私、多分怖くて眠れないから――」
それぞれ、部屋に持ち帰る分の酒を選んで抱える。安楽はついて来ただけのようで手ぶらだ。そこに亜純が猫撫で声を出す。それに気づいた蘭が視線を飛ばすと、亜純は言葉をひそめた。残念ながら「安楽君の部屋に行ってもいい?」という文言は、しっかりと耳に届いたのであるが。
「やめておいたほうがいいと思うよ。そいつ、馬鹿みたいにお酒弱いし、1杯でも飲もうものなら寝ゲロするから。その辺りも含めて考えたほうがいいと思う」
別に誰が安楽の部屋に遊びに行こうが勝手ではあるが、状況が状況なのだ。今日は大人しく部屋にいたほうがいい。それに、安楽が酒に弱いのは紛れもない事実だったはず。昼間の船酔いを見ているから、連想するのは簡単であろう。
「あ、だったら今日は遠慮しておこうかなぁ」
亜純も安楽の世話まではしたくないのであろう。他の人達がどうするつもりなのかは分からないが、しかし今日みたいな日は、それぞれ個室で過ごしたほうが確実に安全なのではないか。
「――別に誰かと一緒に飲みたければ、そうすればいいと思う。俺達は大人なんだし、それくらいの自己判断はできるだろ? もちろん、なにかがあったら自己責任だけどね」
安楽の部屋に亜純が行くのを諦めたことで、自分にもチャンスが回ってきたと思ったのか、それぞれの部屋で集まっての飲酒を否定しない菱田。極論から言ってしまえば、菱田の言葉に収束してしまう。誰かの部屋で集まって飲むのは結構だが、なにかがあった時は自己責任。新たなる犠牲者が出たとしても、その責任は当事者達にある。リーダーシップを発揮する菱田が認めたものの、しかし全員が大人しく部屋に戻ったようだった。少なくとも螺旋階段をのぼった女性陣はいなかったし、螺旋階段をのぼらなかった男性陣もいない。とりあえず蘭が確認できた時点での話にはなってしまうが。
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