探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

文字の大きさ
26 / 98
2.長い夜の始まり

2.長い夜の始まり 1

しおりを挟む
【1】

 予定されていた交流会は、残念ながら中止ということになってしまった。嵐は酷くなる一方であり、時折強い風が窓を叩く。せっかくのバカンスとなるはずだったのに、しかしどうやら今日は休めないらしい。もうこの際、雨水をろ過したものでも構わないからシャワーを浴びたいし、そろそろベッドにダイブもしたい。さすがに長旅で疲れているところに、まさか殺人事件が起きてしまうなんて。今さらながらに蘭は後悔していた。面白半分で安楽を誘うんじゃなかった――。

 麗里の遺体が発見されてからというもの、妙に周囲からの視線が痛いような気がする。確かに、安楽と蘭が一緒にいると何事かに巻き込まれてしまうジンクスはある。しかしながら、面白いから連れて来いと言い出したのは菱田や英梨であり、いざ連れて来て本当に事件が起きたら、なんだか自分達のせいで何かが起きてしまったと思われるのは違う気がする。

「本気か? こんな嵐の中、外に出るなんて馬鹿げてるぞ」

 地下室で見つけたらしい雨合羽に身を包み、これまた地下室で見つけたという工具箱と木の板を抱える菱田を、細川が必死に止めようとしていた。

「いや、俺達は住んでいる地域柄、嵐がどれだけ恐ろしいのか知らないんだよ。九州のほうなんて、風で車が浮いたり、家が倒壊するなんて当たり前のようにある。だから、事前に対策はしておきたい」

 菱田を突き動かしているのは、ここに到着してから勢力を強め続けている嵐である。確かに、このまま放っておけば、窓のひとつくらい割れてもおかしくはなさそうだ。

「申し訳ないけど僕はやらないからね。これだけの風だと、例え板を打ち付けたとしても焼け石に水だと思うし、2階部分を含めて窓を全部フォローするのは難しい。中途半端に対策しても無駄だし、外に出て怪我でもされたらたまったもんじゃない」

 榎本の言葉は、菱田のことを案じて、というものではないように思える。菱田が外に行くとなれば、他の男はどうするのだ――ということになる。それを必死になって阻止しているように思えた。

「悪いけど、何かしていないとおかしくなりそうなんだ。幸いなことに外はまだ明るいし、今なら照明がなくても作業ができる」

 麗里が殺害されてしまった。彼女をどうするべきか議論をした蘭達であるが、のちに警察を呼ぶことを考え、現場に残してある。真美子が持ってきてくれた白いシーツが被せられているものの、彼女の時間は息途絶えた時からずっと止まったままだ。おそらく、リネン室を使おうとする者もいないことだろう。嫌でも彼女と対面してしまうことになるのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...