19 / 98
1.絶海の孤島へ
16
しおりを挟む
「ほら、菱田先輩が呼んでるから行くよ」
これ以上、菱田達を待たせるのも申し訳ない。蘭はいまだに納得していない様子の安楽の袖を引っ張ると、地下への階段を降りた。名残惜しそうに何度も振り返る安楽がうっとうしい。
地下は思ったよりも狭く、特に天井が低かった。辺りには発電機が稼働する音が響き、ふんわりと油のにおいがするような気がした。地下室の壁際には、何段もの棚が作られていて、そこに食糧や飲み物が置いてあるようだった。
「ハイネケンにバドワイザー、でこいつはミソスか。ピルスナーに、黒ビールのシュヴァルツ。フィックスに……なんか世界のビール大集合だな」
棚には缶ビールだけではなく、瓶ビールも置いてあった。蘭はあまり詳しくはないのだが、細川は随分と詳しいらしい。多分、ビールのあてにポテチを食べているに違いない。しかも、ポテチにはチーズを挟んでだ。だから太るのだ。
「いや、ビールだけじゃない。ワインにブランデー、それに紹興酒に焼酎まで用意してある。管理人さんに気を遣わせちゃったね」
続いて榎本が、紹興酒の瓶を手に呟く。とにかく、酒に困ることは当分ないだろう。くわえて、船に乗る前に買い出しもしてあるから鬼に金棒だ。
「食べ物は――やっぱり別荘ってこともあって、保存が効くものばかりだな。缶詰めばっかりだ。買い出しの必要はないって管理人さんは言ってたけど、やっぱり買い出ししておいて正解だったな」
菱田はそう言って缶詰に手を伸ばす。缶詰めには少しばかり埃が積もっていたらしく、辺りに埃が舞った。
「水の蓄えも充分だな。こんな離島だから、当然ながら水道なんて通ってないだろうからな。水はあるに越したことはない」
みんなはお酒やら、酒のあてになりそうな缶詰に興味を示したが、安楽は水のストック量に胸を撫で下ろしたようだ。棚の一部を占領するかのごとく、これでもかと水の入ったペットボトルが並んでいる。ふと、それを見た蘭には疑問がひとつ。
「水道も通ってないってことは――お風呂とかどうすればいいんだろう? それに、トイレも流せないってこと?」
インフラが整っておらず、電気は発電機で賄っているが、しかし水道はそうもいかない。となると、真っ先に心配になるのが風呂とトイレだ。人間、しばらく風呂に入らなくても死にはしないが、乙女としては死活問題である。
「いや、水道は通っていないけど、雨水をためて、それをろ過したものを生活用水に使っているみたいだから、トイレは心配いらないよ。雨水に抵抗があるなら、簡易式のポンプシャワーを貸してやるから言ってくれ」
これ以上、菱田達を待たせるのも申し訳ない。蘭はいまだに納得していない様子の安楽の袖を引っ張ると、地下への階段を降りた。名残惜しそうに何度も振り返る安楽がうっとうしい。
地下は思ったよりも狭く、特に天井が低かった。辺りには発電機が稼働する音が響き、ふんわりと油のにおいがするような気がした。地下室の壁際には、何段もの棚が作られていて、そこに食糧や飲み物が置いてあるようだった。
「ハイネケンにバドワイザー、でこいつはミソスか。ピルスナーに、黒ビールのシュヴァルツ。フィックスに……なんか世界のビール大集合だな」
棚には缶ビールだけではなく、瓶ビールも置いてあった。蘭はあまり詳しくはないのだが、細川は随分と詳しいらしい。多分、ビールのあてにポテチを食べているに違いない。しかも、ポテチにはチーズを挟んでだ。だから太るのだ。
「いや、ビールだけじゃない。ワインにブランデー、それに紹興酒に焼酎まで用意してある。管理人さんに気を遣わせちゃったね」
続いて榎本が、紹興酒の瓶を手に呟く。とにかく、酒に困ることは当分ないだろう。くわえて、船に乗る前に買い出しもしてあるから鬼に金棒だ。
「食べ物は――やっぱり別荘ってこともあって、保存が効くものばかりだな。缶詰めばっかりだ。買い出しの必要はないって管理人さんは言ってたけど、やっぱり買い出ししておいて正解だったな」
菱田はそう言って缶詰に手を伸ばす。缶詰めには少しばかり埃が積もっていたらしく、辺りに埃が舞った。
「水の蓄えも充分だな。こんな離島だから、当然ながら水道なんて通ってないだろうからな。水はあるに越したことはない」
みんなはお酒やら、酒のあてになりそうな缶詰に興味を示したが、安楽は水のストック量に胸を撫で下ろしたようだ。棚の一部を占領するかのごとく、これでもかと水の入ったペットボトルが並んでいる。ふと、それを見た蘭には疑問がひとつ。
「水道も通ってないってことは――お風呂とかどうすればいいんだろう? それに、トイレも流せないってこと?」
インフラが整っておらず、電気は発電機で賄っているが、しかし水道はそうもいかない。となると、真っ先に心配になるのが風呂とトイレだ。人間、しばらく風呂に入らなくても死にはしないが、乙女としては死活問題である。
「いや、水道は通っていないけど、雨水をためて、それをろ過したものを生活用水に使っているみたいだから、トイレは心配いらないよ。雨水に抵抗があるなら、簡易式のポンプシャワーを貸してやるから言ってくれ」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
紙の本のカバーをめくりたい話
みぅら
ミステリー
紙の本のカバーをめくろうとしたら、見ず知らずの人に「その本、カバーをめくらない方がいいですよ」と制止されて、モヤモヤしながら本を読む話。
男性向けでも女性向けでもありません。
カテゴリにその他がなかったのでミステリーにしていますが、全然ミステリーではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる