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1.絶海の孤島へ

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「ほら、菱田先輩が呼んでるから行くよ」

 これ以上、菱田達を待たせるのも申し訳ない。蘭はいまだに納得していない様子の安楽の袖を引っ張ると、地下への階段を降りた。名残惜しそうに何度も振り返る安楽がうっとうしい。

 地下は思ったよりも狭く、特に天井が低かった。辺りには発電機が稼働する音が響き、ふんわりと油のにおいがするような気がした。地下室の壁際には、何段もの棚が作られていて、そこに食糧や飲み物が置いてあるようだった。

「ハイネケンにバドワイザー、でこいつはミソスか。ピルスナーに、黒ビールのシュヴァルツ。フィックスに……なんか世界のビール大集合だな」

 棚には缶ビールだけではなく、瓶ビールも置いてあった。蘭はあまり詳しくはないのだが、細川は随分と詳しいらしい。多分、ビールのあてにポテチを食べているに違いない。しかも、ポテチにはチーズを挟んでだ。だから太るのだ。

「いや、ビールだけじゃない。ワインにブランデー、それに紹興酒に焼酎まで用意してある。管理人さんに気を遣わせちゃったね」

 続いて榎本が、紹興酒の瓶を手に呟く。とにかく、酒に困ることは当分ないだろう。くわえて、船に乗る前に買い出しもしてあるから鬼に金棒だ。

「食べ物は――やっぱり別荘ってこともあって、保存が効くものばかりだな。缶詰めばっかりだ。買い出しの必要はないって管理人さんは言ってたけど、やっぱり買い出ししておいて正解だったな」

 菱田はそう言って缶詰に手を伸ばす。缶詰めには少しばかり埃が積もっていたらしく、辺りに埃が舞った。

「水の蓄えも充分だな。こんな離島だから、当然ながら水道なんて通ってないだろうからな。水はあるに越したことはない」

 みんなはお酒やら、酒のあてになりそうな缶詰に興味を示したが、安楽は水のストック量に胸を撫で下ろしたようだ。棚の一部を占領するかのごとく、これでもかと水の入ったペットボトルが並んでいる。ふと、それを見た蘭には疑問がひとつ。

「水道も通ってないってことは――お風呂とかどうすればいいんだろう? それに、トイレも流せないってこと?」

 インフラが整っておらず、電気は発電機で賄っているが、しかし水道はそうもいかない。となると、真っ先に心配になるのが風呂とトイレだ。人間、しばらく風呂に入らなくても死にはしないが、乙女としては死活問題である。

「いや、水道は通っていないけど、雨水をためて、それをろ過したものを生活用水に使っているみたいだから、トイレは心配いらないよ。雨水に抵抗があるなら、簡易式のポンプシャワーを貸してやるから言ってくれ」
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