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はがれた化けの皮
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「そして、僕が覚えている限り、どちらが先に殺されたのか明白になっているのは、例の重要参考人の事件しかない。あの事件は男性である中畑が生き残っているけど、そもそもあれは行きずりの関係だから最愛の人なんて言葉は出てこない。一方、他の事件に関しては、殺された順序なんて犯人以外分かりっこない。天野が解剖結果の詳細さえ持ってきてくれれば、簡単に立証できると思うよ。彼は資料の情報からではなく、自分の目で見たことを述べていると……」
桂の推測は良い線行っていると思う。もちろん、これだけで動けるとは思っていないだろうが、田之上は念のために口を挟む。
「でもよ桂。それだけで堀口を逮捕に踏み切るわけにはいかねぇだろ? お前が言ってるのは情況証拠で、証拠能力は正直なところ低い。もう少し有力な証拠がなければ、結局身動きが取れねぇだろ? 一課の連中もこの程度じゃ動きたがらねぇだろうな」
桂の推測は、確かに堀口が犯人であることを裏付けてくれている。けれども、それだけで堀口を逮捕に踏み切るには、色々と弊害があるのだ。ただでさえ、一度誤認逮捕のようなことをやってしまっているがゆえに、世間から向けられる警察への目は厳しいものになっている。六課単体で動くことはできても、すでに失態を晒してしまった捜査一課は、よほどの確証がなければ動かないはずだ。
「そんなことは言われなくても分かってるよぉ。今回の事件に関して、現段階で彼を逮捕できる材料は少ない。だから、こちらから証拠を作り上げてしまおうと思っていてねぇ――。早い話、彼を欺いてやろうってわけ」
時折見せる気味の悪い笑みは、まるで自己陶酔したナルシストのように見えるから気味が悪いのだろう。まぁ、基本的に桂は言っていることも、さらりと物騒だったりするのだが。
「彼は独身だが警察寮には入っていない。どこか別のところに部屋を借りて一人暮らしをしているみたいだ。実家のマンションには両親が住んでいて、どうやら両親のところへはしょっちゅう顔を出しているみたいだ。事情は可能な限り伏せてでも、両親に接触する価値はあると思う。うまく話を進めて、彼の部屋を調べることができればベストだ」
独身者のリストを出した時、当たり前であるが田之上もリストに載ったし、桂や凡場もリスト入りした。例外なく堀口もまたリストに含められていたわけだが、リストの作成を手伝っている際は、まさかこんな結末になるとは、田之上も思ってはいなかったのだった。
桂の推測は良い線行っていると思う。もちろん、これだけで動けるとは思っていないだろうが、田之上は念のために口を挟む。
「でもよ桂。それだけで堀口を逮捕に踏み切るわけにはいかねぇだろ? お前が言ってるのは情況証拠で、証拠能力は正直なところ低い。もう少し有力な証拠がなければ、結局身動きが取れねぇだろ? 一課の連中もこの程度じゃ動きたがらねぇだろうな」
桂の推測は、確かに堀口が犯人であることを裏付けてくれている。けれども、それだけで堀口を逮捕に踏み切るには、色々と弊害があるのだ。ただでさえ、一度誤認逮捕のようなことをやってしまっているがゆえに、世間から向けられる警察への目は厳しいものになっている。六課単体で動くことはできても、すでに失態を晒してしまった捜査一課は、よほどの確証がなければ動かないはずだ。
「そんなことは言われなくても分かってるよぉ。今回の事件に関して、現段階で彼を逮捕できる材料は少ない。だから、こちらから証拠を作り上げてしまおうと思っていてねぇ――。早い話、彼を欺いてやろうってわけ」
時折見せる気味の悪い笑みは、まるで自己陶酔したナルシストのように見えるから気味が悪いのだろう。まぁ、基本的に桂は言っていることも、さらりと物騒だったりするのだが。
「彼は独身だが警察寮には入っていない。どこか別のところに部屋を借りて一人暮らしをしているみたいだ。実家のマンションには両親が住んでいて、どうやら両親のところへはしょっちゅう顔を出しているみたいだ。事情は可能な限り伏せてでも、両親に接触する価値はあると思う。うまく話を進めて、彼の部屋を調べることができればベストだ」
独身者のリストを出した時、当たり前であるが田之上もリストに載ったし、桂や凡場もリスト入りした。例外なく堀口もまたリストに含められていたわけだが、リストの作成を手伝っている際は、まさかこんな結末になるとは、田之上も思ってはいなかったのだった。
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