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迫る毒牙
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「堀口、申し訳ないけど六課に残ってもらえないだろうか? そこのソファーで休んでもらっていても構わないからさぁ」
どうやら、白羽の矢は堀口へと立ったようだった。堀口とてしばらくハードワークが続いていた。ここでごねられたら面倒だが、そこは先輩と後輩という立場の差を利用して押し切ってやるつもりだった。
「はい、僕は一向に構いません。むしろ志願しようと思っていたところです。なにかあったら連絡しますので、ゆっくりと休まれてください」
どうやって堀口に仕事を押し付けるか。そんなことを考えていた田之上からすれば完全に肩透かし。それどころか、どこか誇らしげな表情さえしている堀口。あれだ、刑事の鑑である。田之上から見れば、正しく警察の犬にしか見えないが、本人も六課に残る気でいるようであるし、あえて余計なことは言わないようにする。
「それじゃあ田之上、お言葉に甘えて休ませてもらおうか。ただし、それぞれ自宅待機で連絡があったら直ぐに動けるようにしておくこと」
桂はそう言いながら欠伸を噛み殺す。桂とて人間であり、やはり徹夜というのは相当に堪えているのであろう。
「ちなみに、携帯の電源オフにするとか無しね――」
解散の流れとなった時、まるで田之上の心の中を読んだかのごとく、事前に釘を刺されてしまった。署を出ると同時に電源を盛大にオフにしてやろうと思っていた田之上は、まさしく図星で声が少しばかり上擦ってしまった。
「お、俺がそんなことするわけねぇし」
――こうして、堀口を残して桂と田之上が帰宅する流れになった。さっさと署を後にして、田之上は自分の車のほうへと向かって早足で歩く。車が見えてくると、そのそばに佇んでいる人影に気づいた。誰かと思い近寄ってみると、さきほど署内で別れたばかり桂だった。
「田之上、ちょっと話があるんだけどいいかい?」
桂はそう言うと、ほんの少しばかり気味の悪い笑みを浮かべた。こういう時の桂は、大抵が良からぬことを考えている時だ。
「――断る」
桂を回避し、そのまま車に乗り込もうとしたが、しかし肩を掴まれた。
「大事な話なんだよ。これ以上、あの事件の犠牲者を増やすべきじゃないしね」
そう漏らした桂の表情は、どこか陶酔しているかのように見えて、やはり気味が悪かったのであった。
どうやら、白羽の矢は堀口へと立ったようだった。堀口とてしばらくハードワークが続いていた。ここでごねられたら面倒だが、そこは先輩と後輩という立場の差を利用して押し切ってやるつもりだった。
「はい、僕は一向に構いません。むしろ志願しようと思っていたところです。なにかあったら連絡しますので、ゆっくりと休まれてください」
どうやって堀口に仕事を押し付けるか。そんなことを考えていた田之上からすれば完全に肩透かし。それどころか、どこか誇らしげな表情さえしている堀口。あれだ、刑事の鑑である。田之上から見れば、正しく警察の犬にしか見えないが、本人も六課に残る気でいるようであるし、あえて余計なことは言わないようにする。
「それじゃあ田之上、お言葉に甘えて休ませてもらおうか。ただし、それぞれ自宅待機で連絡があったら直ぐに動けるようにしておくこと」
桂はそう言いながら欠伸を噛み殺す。桂とて人間であり、やはり徹夜というのは相当に堪えているのであろう。
「ちなみに、携帯の電源オフにするとか無しね――」
解散の流れとなった時、まるで田之上の心の中を読んだかのごとく、事前に釘を刺されてしまった。署を出ると同時に電源を盛大にオフにしてやろうと思っていた田之上は、まさしく図星で声が少しばかり上擦ってしまった。
「お、俺がそんなことするわけねぇし」
――こうして、堀口を残して桂と田之上が帰宅する流れになった。さっさと署を後にして、田之上は自分の車のほうへと向かって早足で歩く。車が見えてくると、そのそばに佇んでいる人影に気づいた。誰かと思い近寄ってみると、さきほど署内で別れたばかり桂だった。
「田之上、ちょっと話があるんだけどいいかい?」
桂はそう言うと、ほんの少しばかり気味の悪い笑みを浮かべた。こういう時の桂は、大抵が良からぬことを考えている時だ。
「――断る」
桂を回避し、そのまま車に乗り込もうとしたが、しかし肩を掴まれた。
「大事な話なんだよ。これ以上、あの事件の犠牲者を増やすべきじゃないしね」
そう漏らした桂の表情は、どこか陶酔しているかのように見えて、やはり気味が悪かったのであった。
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