巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

文字の大きさ
76 / 95
迫る毒牙

14

しおりを挟む
「堀口、申し訳ないけど六課に残ってもらえないだろうか? そこのソファーで休んでもらっていても構わないからさぁ」

 どうやら、白羽の矢は堀口へと立ったようだった。堀口とてしばらくハードワークが続いていた。ここでごねられたら面倒だが、そこは先輩と後輩という立場の差を利用して押し切ってやるつもりだった。

「はい、僕は一向に構いません。むしろ志願しようと思っていたところです。なにかあったら連絡しますので、ゆっくりと休まれてください」

 どうやって堀口に仕事を押し付けるか。そんなことを考えていた田之上からすれば完全に肩透かし。それどころか、どこか誇らしげな表情さえしている堀口。あれだ、刑事の鑑である。田之上から見れば、正しく警察の犬にしか見えないが、本人も六課に残る気でいるようであるし、あえて余計なことは言わないようにする。

「それじゃあ田之上、お言葉に甘えて休ませてもらおうか。ただし、それぞれ自宅待機で連絡があったら直ぐに動けるようにしておくこと」

 桂はそう言いながら欠伸を噛み殺す。桂とて人間であり、やはり徹夜というのは相当に堪えているのであろう。

「ちなみに、携帯の電源オフにするとか無しね――」

 解散の流れとなった時、まるで田之上の心の中を読んだかのごとく、事前に釘を刺されてしまった。署を出ると同時に電源を盛大にオフにしてやろうと思っていた田之上は、まさしく図星で声が少しばかり上擦ってしまった。

「お、俺がそんなことするわけねぇし」

 ――こうして、堀口を残して桂と田之上が帰宅する流れになった。さっさと署を後にして、田之上は自分の車のほうへと向かって早足で歩く。車が見えてくると、そのそばに佇んでいる人影に気づいた。誰かと思い近寄ってみると、さきほど署内で別れたばかり桂だった。

「田之上、ちょっと話があるんだけどいいかい?」

 桂はそう言うと、ほんの少しばかり気味の悪い笑みを浮かべた。こういう時の桂は、大抵が良からぬことを考えている時だ。

「――断る」

 桂を回避し、そのまま車に乗り込もうとしたが、しかし肩を掴まれた。

「大事な話なんだよ。これ以上、あの事件の犠牲者を増やすべきじゃないしね」

 そう漏らした桂の表情は、どこか陶酔しているかのように見えて、やはり気味が悪かったのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

処理中です...