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迫る毒牙
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「今回の一件で、彼女もかなり逆風に晒されたみたいだからねぇ。キャリアってことで元から叩き上げの連中から良く思われていなかったみたいだし、今回の一件で孤立した部分もあるだろうね。本音では僕達の力を借りたいけど、立場と今回の失態があるから、堂々と協力を要請することができない。その結果がこれなんだと思うよ。口では六課を毛嫌いしているようなことばかり言うけど、今回の失態でなりふり構っていられなくなったってところかな」
桂は亜紀が置いて行った資料を片手に、小さく肩をすくめた。
「あんだけ無理な捜査をやれば、お咎めなしってことにはならねぇことくらい分かるだろうにな。キャリアだからって、つけあがっていた証拠だな。高飛車にはいい薬だ」
田之上はそう呟きつつ、煙草をケースから取り出そうとする。しかし、中身が無くなっていたことに気付いて、舌打ちと一緒にケースをくしゃりと握り潰す。
「解剖の結果だけど……。正直、これまでとほとんど変らないね。両犠牲者の遺体が焼かれているため、正確な死亡推定時刻は割り出せていない。女性のほうには生活反応がほとんどなく、殺害された後に遺体が焼かれたと考えられる。一方、男性のほうは肺に煤などの生活反応あり。これまでのケースと同じで、生きたまま焼き殺された可能性が高い」
桂は資料に目を通しながら、なんとなく既視感のある解剖結果を読み上げていく。これまでの事件とほとんど同じだ。
「唯一、これまでと異なるのは、男性の口内に女性の子宮が詰め込まれていたことか――。この子宮は被害に遭った女性のものだと断定されている。つまり、犯人は男性が丸焦げになった後に、改めて刻んだ子宮を男性の口内に詰め込んだってことだね」
「それまで犯人はじっと待っていたってことか――。頭のネジが外れているなんてレベルじゃねぇな」
田之上の言葉に堀口が無言で頷いた。頭のネジが外れてるなんて、言わずとも分かりきったことなのかもしれない。
「なんにせよ、犯人に繋がる決定的な証拠は遺体から見つからなかったってことだろ? 亜紀の奴も、こんな役に立たないもんを持って来なくてもいいのによ」
そう言って田之上は大欠伸をする。珍しく真面目に働いてしまったせいで、明らかに寝不足である。そりゃ、元恋人に悪態のひとつでもつきたくなる。もっもと、完全に八つ当たりだが。
「いいや、どうやらそうでもないみたいだよ――」
資料に目を通していた桂が、ふと顔を上げた。
桂は亜紀が置いて行った資料を片手に、小さく肩をすくめた。
「あんだけ無理な捜査をやれば、お咎めなしってことにはならねぇことくらい分かるだろうにな。キャリアだからって、つけあがっていた証拠だな。高飛車にはいい薬だ」
田之上はそう呟きつつ、煙草をケースから取り出そうとする。しかし、中身が無くなっていたことに気付いて、舌打ちと一緒にケースをくしゃりと握り潰す。
「解剖の結果だけど……。正直、これまでとほとんど変らないね。両犠牲者の遺体が焼かれているため、正確な死亡推定時刻は割り出せていない。女性のほうには生活反応がほとんどなく、殺害された後に遺体が焼かれたと考えられる。一方、男性のほうは肺に煤などの生活反応あり。これまでのケースと同じで、生きたまま焼き殺された可能性が高い」
桂は資料に目を通しながら、なんとなく既視感のある解剖結果を読み上げていく。これまでの事件とほとんど同じだ。
「唯一、これまでと異なるのは、男性の口内に女性の子宮が詰め込まれていたことか――。この子宮は被害に遭った女性のものだと断定されている。つまり、犯人は男性が丸焦げになった後に、改めて刻んだ子宮を男性の口内に詰め込んだってことだね」
「それまで犯人はじっと待っていたってことか――。頭のネジが外れているなんてレベルじゃねぇな」
田之上の言葉に堀口が無言で頷いた。頭のネジが外れてるなんて、言わずとも分かりきったことなのかもしれない。
「なんにせよ、犯人に繋がる決定的な証拠は遺体から見つからなかったってことだろ? 亜紀の奴も、こんな役に立たないもんを持って来なくてもいいのによ」
そう言って田之上は大欠伸をする。珍しく真面目に働いてしまったせいで、明らかに寝不足である。そりゃ、元恋人に悪態のひとつでもつきたくなる。もっもと、完全に八つ当たりだが。
「いいや、どうやらそうでもないみたいだよ――」
資料に目を通していた桂が、ふと顔を上げた。
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