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すれ違う狂気
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「天野、ちょっと調べたいことがあるんだ。手伝ってくれよ」
「別にいいけど、何をすればいいのぉ?」
桂の依頼に、きっと昼食の後で眠いのだろう。大きな欠伸をする雅。
「簡単だよぉ。ちょっとホテルの部屋に入って中で待機していて欲しいんだ。ちなみに、こっちから声をかけるまで出てこないようにね」
モーテル方式で連なっているホテルの一棟に目をやる桂。遺体が発見された現場から一番近い棟だから、きっと中畑が逃げ込んだ部屋である。他の捜査の手が入っているからであろう。部屋の鍵は開いているようで、何事もないかのように雅はモーテルの中へと姿を消した。他の捜査員からお咎めがないのは、良くも悪くも腫れ物扱いされているからなのかもしれない。
堀口は事件を改めて振り返ってみる。中畑の証言によると、事件が発生した経緯はシンプルだったはず。まず、ホテルから出てきた中畑と被害者を、犯人が襲撃した。被害者が犯人に襲われている隙に、中畑は出てきたばかりのホテルの部屋へと引き返し、そこから警察に通報した。中から施錠をしたおかげで、犯人は中畑を殺害できずに逃走し、けれども女性を助けることもできず、片割れのほうだけが殺害されるという状況となってしまった。
すでに遺体は鑑識のほうに回されているし、現場に残された遺留品なども押収されてしまっているはず。もはや事件の残骸しか残っていない現場から、果たして何を得ることができるのか。
雅がホテルの中へと入ってから数分。桂に促されて雅のいる部屋の前へとやってきた一同。まだ自分の意図を話そうとしない桂は、腕時計に視線を落とした。
「そろそろいいかな――。田之上、彼女に電話してやってくれよ。もう出てきていいってさ」
桂はホテルの外観を眺めながら、電話で雅を呼び出すように田之上へと指示を出した。田之上は面倒そうにしながらもスマートフォンを取り出し、雅に電話をかける。
「雅、もう戻ってきてもいいぞ――」
桂に言われた通り、雅に電話をかける田之上の姿を眺めつつ、なぜだか笑みを漏らす桂。
「くくくくくくっ――。やっぱりそうだよねぇ。曲がりなりにもラブホテルなんだから、外から中の音が聞こえるわけがないんだよ。となると、犯人の行動にはどうしても矛盾が生じる。その矛盾を解消する手段は恐らく……」
何かを確信したかのような桂と、田之上に連絡を受けて戻ってきた雅。桂は戻ってきた雅へと問う。
「天野、ひとつだけ聞かせてくれよ。中にいる時、外の音は聞こえたかい?」
「別にいいけど、何をすればいいのぉ?」
桂の依頼に、きっと昼食の後で眠いのだろう。大きな欠伸をする雅。
「簡単だよぉ。ちょっとホテルの部屋に入って中で待機していて欲しいんだ。ちなみに、こっちから声をかけるまで出てこないようにね」
モーテル方式で連なっているホテルの一棟に目をやる桂。遺体が発見された現場から一番近い棟だから、きっと中畑が逃げ込んだ部屋である。他の捜査の手が入っているからであろう。部屋の鍵は開いているようで、何事もないかのように雅はモーテルの中へと姿を消した。他の捜査員からお咎めがないのは、良くも悪くも腫れ物扱いされているからなのかもしれない。
堀口は事件を改めて振り返ってみる。中畑の証言によると、事件が発生した経緯はシンプルだったはず。まず、ホテルから出てきた中畑と被害者を、犯人が襲撃した。被害者が犯人に襲われている隙に、中畑は出てきたばかりのホテルの部屋へと引き返し、そこから警察に通報した。中から施錠をしたおかげで、犯人は中畑を殺害できずに逃走し、けれども女性を助けることもできず、片割れのほうだけが殺害されるという状況となってしまった。
すでに遺体は鑑識のほうに回されているし、現場に残された遺留品なども押収されてしまっているはず。もはや事件の残骸しか残っていない現場から、果たして何を得ることができるのか。
雅がホテルの中へと入ってから数分。桂に促されて雅のいる部屋の前へとやってきた一同。まだ自分の意図を話そうとしない桂は、腕時計に視線を落とした。
「そろそろいいかな――。田之上、彼女に電話してやってくれよ。もう出てきていいってさ」
桂はホテルの外観を眺めながら、電話で雅を呼び出すように田之上へと指示を出した。田之上は面倒そうにしながらもスマートフォンを取り出し、雅に電話をかける。
「雅、もう戻ってきてもいいぞ――」
桂に言われた通り、雅に電話をかける田之上の姿を眺めつつ、なぜだか笑みを漏らす桂。
「くくくくくくっ――。やっぱりそうだよねぇ。曲がりなりにもラブホテルなんだから、外から中の音が聞こえるわけがないんだよ。となると、犯人の行動にはどうしても矛盾が生じる。その矛盾を解消する手段は恐らく……」
何かを確信したかのような桂と、田之上に連絡を受けて戻ってきた雅。桂は戻ってきた雅へと問う。
「天野、ひとつだけ聞かせてくれよ。中にいる時、外の音は聞こえたかい?」
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