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すれ違う狂気
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【2】
「桂、もう充分だろ? 現場のことなんて資料に書いてあるんだからよぉ」
空には青空が広がり、さんさんと照りつける太陽は、何もしていなくとも体力をじりじりと奪っていく。先ほどまでは人造的な森の中にいたおかげで、そこまで日差しは気にならなかった。しかし、公園を抜けて駐車場へと戻る頃には、ワイシャツが汗でじっとりと湿っていた。
「やっぱり現場を見てみないと分からないことがあったりするよぉ。まぁ、ここは充分だねぇ。それにしても喉が渇いた。自動販売機どこかにないかなぁ」
少し前を歩く桂の背中を眺めつつ、明らかにへばった様子で田之上が愚痴をこぼす。
「あいつ、どんだけ元気なんだよ……。もういくつ現場回ったと思ってるんだ」
その愚痴に、ふらふらとした足取りの雅が合いの手を入れる。
「ヒョロヒョロのもやしメンなのに、なんか体力あるんだよねぇ――。雅隊員はもう限界であります」
「田之上防衛庁長官も限界であります」
実に情けないことを口にする田之上と雅であるが、その隣で沈黙したまま歩く堀口もまた、正直なところ息が上がっていた。
事件の現場を洗い直そうという話になったのが、今朝の話。思い立ったが吉日と言わんばかりに、そのまま六課ごと桂に連れ出され、まだ午前中だというのに例の連続殺人事件が発生した四つ目の現場………森林公園までハードスケジュールで回って現在にいたる。
「桂ぁ、自販機あったぞ。自販機。じゃんけんしようぜ。ジュースじゃんけん」
部活帰りの中学生のようなノリで提案する田之上。桂は「やるならガチでやるよ」となぜか乗り気だ。雅もノリノリであるし、ここでじゃんけんに参加しないわけにはいかないだろう。
「いいか? 負けたやつが全員の分をおごりだ」
「それと、家と土地の権利書も失う」
田之上の言葉に雅が冗談じみた感じでかぶせ、それに対して田之上は真面目な反応を見せてしまう。
「いや、大袈裟だから! どこの黙示録? ねぇ、それどこの博打黙示録なの?」
自動販売機の前でじゃんけんごときに揉めている大人達。まさか、刑事だなんて誰も思わないであろう。
「とにかく、最初はグーだ。それ以外は認めないからねぇ。じゃあ、さっさと始めようか」
大の大人達による一発勝負。その結果は――。
「最初はグー! じゃんけんぽん!」
一発で決まる。田之上、グー。雅、グー。桂、グー。そして堀口……チョキ。
「圧倒的勝利!」
なんかどこかで聞いたようなフレーズに寄せて勝利を喜ぶ田之上。たかだかジュースくらいで大袈裟である。しかし、自分以外のジュースも購入するとなるとかなりの出費となる。堀口は自分の運の悪さを呪った。
「桂、もう充分だろ? 現場のことなんて資料に書いてあるんだからよぉ」
空には青空が広がり、さんさんと照りつける太陽は、何もしていなくとも体力をじりじりと奪っていく。先ほどまでは人造的な森の中にいたおかげで、そこまで日差しは気にならなかった。しかし、公園を抜けて駐車場へと戻る頃には、ワイシャツが汗でじっとりと湿っていた。
「やっぱり現場を見てみないと分からないことがあったりするよぉ。まぁ、ここは充分だねぇ。それにしても喉が渇いた。自動販売機どこかにないかなぁ」
少し前を歩く桂の背中を眺めつつ、明らかにへばった様子で田之上が愚痴をこぼす。
「あいつ、どんだけ元気なんだよ……。もういくつ現場回ったと思ってるんだ」
その愚痴に、ふらふらとした足取りの雅が合いの手を入れる。
「ヒョロヒョロのもやしメンなのに、なんか体力あるんだよねぇ――。雅隊員はもう限界であります」
「田之上防衛庁長官も限界であります」
実に情けないことを口にする田之上と雅であるが、その隣で沈黙したまま歩く堀口もまた、正直なところ息が上がっていた。
事件の現場を洗い直そうという話になったのが、今朝の話。思い立ったが吉日と言わんばかりに、そのまま六課ごと桂に連れ出され、まだ午前中だというのに例の連続殺人事件が発生した四つ目の現場………森林公園までハードスケジュールで回って現在にいたる。
「桂ぁ、自販機あったぞ。自販機。じゃんけんしようぜ。ジュースじゃんけん」
部活帰りの中学生のようなノリで提案する田之上。桂は「やるならガチでやるよ」となぜか乗り気だ。雅もノリノリであるし、ここでじゃんけんに参加しないわけにはいかないだろう。
「いいか? 負けたやつが全員の分をおごりだ」
「それと、家と土地の権利書も失う」
田之上の言葉に雅が冗談じみた感じでかぶせ、それに対して田之上は真面目な反応を見せてしまう。
「いや、大袈裟だから! どこの黙示録? ねぇ、それどこの博打黙示録なの?」
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一発で決まる。田之上、グー。雅、グー。桂、グー。そして堀口……チョキ。
「圧倒的勝利!」
なんかどこかで聞いたようなフレーズに寄せて勝利を喜ぶ田之上。たかだかジュースくらいで大袈裟である。しかし、自分以外のジュースも購入するとなるとかなりの出費となる。堀口は自分の運の悪さを呪った。
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