巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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明け方のラブホテルにて

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「第六の事件は捜査を撹乱させるために、あえてこれまでとは違うパターンで犯行に及んだ可能がある。秩序型であるがゆえに、自分への嫌疑を晴らそうと目論んだのかもしれねぇなぁ」

 態度は目にあまるところがあるものの、しっかりと会議には参加しているし、それらしい意見を言う田之上。やればできる子――というのは、正しく彼のような人間に向かって使われるのであろう。

「その通り。それでは犯人の立場になって考えてみましょう。これまでの一連の流れとはパターン異なる犯行現場。それを演出した犯人が、もっとも疑われぬようにどんな行動をとるのか。私ならこうするわね……。あえて自らも被害者になって疑いの目をそらしてしまう」

 六課に女性の透き通った、それでいて威厳のある声が響いた。振り返った桂は「やぁ、これはこれは」と歓迎をし、逆に田之上は桂の視線の先――勝手に開けられてしまった六課の出入口へと視線を向けて舌打ちをする。堀口がつられて視線をやった先には、腕組みをした若そうな女性の姿があった。

 髪は肩にかからない程度のセミロングで、わずかにウエーブがかかっている。デジタルパーマとでもいうのだろうか。スーツをまとった体は細く、スーツ越しでも女性的な曲線を描いていた。顔立ちも整っており、普通にしていれば男受けしそうなタイプではあるが、その眉間にはしわが寄せられ、鋭い視線はどうやら田之上に向けられているようだった。

「どうしてあなた達が例の事件の話なんてしているのかしら? 六課らしくないわね」

 日々の坂署捜査一課所属、進藤亜紀警部。堀口からすれば遥か天の上にいる人物であり、誰もが一目置いているキャリア組だ。彼女のことは以前の署でも有名だった。

「俺達に事件を丸投げしたくせに良く言うぜ。で、亜紀――こんなところに何の用だ?」

 田之上は大きな欠伸と共にソファーから立ち上がると、階級が遥か上の人間に対して

「事件を六課に丸投げした覚えはないわ。それに、もう私のことを下の名前で呼ばないでって、何度言ったら分かってもらえるのかしら?」

 そんな田之上に対して、さらに眉間のしわが深くなる進藤警部。

「あ? 一度は同じベッドの上で語り合った仲じゃねぇか。どうだ? 久しぶりに今夜一緒に飯でも」

 この二人はかつて特別な関係にでもあったのだろうか。警部のことを下の名前で呼び、しかも気安く肩に手を回した辺りから、なんとなくそんな空気を察した。

「直訳すると、久しぶりに今晩一発やらせろという意味であります! 進藤警部!」

 眉間にしわを寄せるどころか、こめかみに血管を浮かび上がらせる警部に対して、実に仰々しい敬礼をし、とんでもないことを口にする雅。
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