巣喰ＲＡＰ【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

明け方のラブホテルにて

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　田之上と雅のことは最初からあてにはしていないのであろう。桂の視線は堀口のほうに向けられていたし、だから自分はしっかりと話を聞いていると、何度も相槌を打ってやっていた。

｢はーい！　もっと分かりやすく説明しやがれクソ野郎ー！」

　やっぱり三人の中では桂がもっともまともである。手を挙げて冗談交じりで暴言を吐く雅の姿に、堀口はそんなことを改めて思った。いいや、もっというのであれば、自分が一番まともなのであろうが。

｢もう少し自分で考えるということをしたほうがいいねぇ。いいかい？　一連の事件を引き起こした犯人の最大の動機は、恐らくカップルや夫婦に対する歪んだ嫉妬心だと思われる。だから、これまで犯人は確実にカップルや夫婦にターゲットを絞って犯行を重ねてきた。でも、今回の事件に限って、二人の関係性は援助交際という金だけの繋がりなんだ。ここが明らかにおかしいと思わない？」

　雅の衝撃的な折り紙のせいで体を起こしたついでと言わんばかりに煙草に火を点ける田之上。

｢これまでは狙い澄ましたかのようにカップルか夫婦が標的にされてきた。だが、今回は援助交際だけで繋がっていた二人が標的とされた……。そもそもの動機がカップルや夫婦に向けられた歪んだ嫉妬心なら、中畑達が狙われたのは筋が通らねぇってことか｣

　田之上の言葉に桂は頷くと、残っていたビールを一気に飲み干した。一方では煙草を吸いながら、もう一方ではビールを片手に、またもう一方は折り紙をしながら――こんな捜査会議は初めてだ。

「では、どうしてこんなことになったと思う？　これまでの事件では確実にカップルや夫婦を狙うという周到さを見せている犯人だ。単純に間違ったとは思えない」

　あえて答えを言わずに周囲へと問う桂。

｢犯人が典型的な秩序型だから――だね。もしかすると、この辺りで警察の捜査を撹乱したかったのかも」

　折る紙がなくなってしまったようで雅は仕方がないといった様子で、実につまらなそうに口を開いた。

　秩序型と無秩序型。堀口も知識としては知っていた。これはＦＢＩで導入されたのが初めといわれているが、プロファイリングにおける犯人像の分類法で使われる言葉である。秩序型と無秩序型……大まかに分類すると、犯罪者はこのどちらかのタイプに帰属するというものだ。

　無秩序型の犯行はいたって気まぐれで、殺す標的に目的を伴っていない場合が多い。また、計画性を著しく欠いており、衝動的な犯行である場合がほとんどであるため、殺す相手を選ぼうとしない。圧倒的な体格差があり、相手を自由にコントロールできなかろうが、下手をすると逆に殺されてしまうような相手でも迷うことはない。それゆえ、無秩序型の被害者は抵抗することが多く、その痕跡である防御創ぼうぎょそうが見られるケースが多い。