巣喰ＲＡＰ【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

明け方のラブホテルにて

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　被害者は井之川隆太いのかわりゅうたと高橋瞳子たかはしとうこ、両名共に21歳。バイト先で知り合った恋人同士で、 バイトの仲間内では冷やかしが絶えないほど仲が良かったらしい。

　死因はやはり焼死。女性の子宮は現場に残されておらず、もはやトレードマークとも呼べるプレートも現場に残されていた。

　動きを封じるためか、男性の左大腿部に裂傷あり。柄の溶けてしまった一般家庭用の包丁が発見された。包丁は大手メーカー製で全国流通しているため、そこから犯人の足跡を追うことは難しく、プロファイリングに基づいた捜査も、真っ向から否定する堅物の刑事が多く、一向に進展しない。捜査は暗礁に乗り上げ、それを尻目にカップルが次々と犠牲となって行く。

　警察だって未然に被害を防ぐために、現場周辺のパトロール強化は当然のこと、日々の坂全域に渡って警戒態勢をとっていた。しかし、犯人らしき不審な人物は引っかからず、まるで警察の動きを知っているかのように神出鬼没で犯行が繰り返されていたのであった。

　第三と第四の事件は同月に発生しており、また第五と第六の事件も同月内に発生。これまでとは比べ物にならない異例のペースで、今月に入ってからすでに四件もの事件が発生しているのである。

　今月に入ってから三件目となる第五の事件は、第三と第四の事件より、さらに短いスパンで発生した。しかも、恐るべきことに第四の事件と全く同じ森林公園にて発生したのである。

　被害者は柏木陸斗かしわぎりくと21歳と伊藤奈美恵いとうなみえ20歳。第四の事件に関しての捜査もあらかた終わり、現場の封鎖を解いた直後に発生した事件であった。こちらも両名共に大学生であり、恋人同士であったことが分かっている。ただ男のほうがやや遊び人気質だったなんて話もあるが。

　――いずれかの事件で犯人が被害者に反撃されたかして学んだのか、今度は男性の右大腿部に裂傷が残されており、第四の事件で使用されたものと同様の包丁が発見された。この辺りから、男性の身動きを封じてから犯行に及ぶという方向修正の跡が見られる。ただ手口の本筋は変わらない。

　力のある男性を殺害してから、ゆっくりと女性のほうに手をかけ、乱暴を加えた後に子宮を切り取り、男性と同様に焼き殺す。男性の遺体にだけ生活反応が見られるのは、そこに犯行目的がないから。最初から用がないから、生きている内に焼き殺してしまう。一方、女性に対しては強姦目的と、子宮を切り取るという異常性の高い犯行目的が存在する。これらを終えてから焼くため、その段階ですでに女性が死亡しており、だから生活反応も出ないのだ。