巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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明け方のラブホテルにて

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「あのさ、ちなみに捜査支援分析センターが出した犯人像はどんな感じ?」

 雅の口から飛び出した専門用語に、堀口は驚いた。雅はかつて交通課にいた婦警にすぎなかったはずだが、どうしてそんな機関のことを知っているのか。

 彼女の言う捜査支援分析センターの犯人像とは、俗にプロファイルと呼ばれるものを指す。日本ではFBIのように心理分析官などという明確なポストを設けていないため、プロファイリングは捜査支援分析センターという一括りでの仕事となるのだ。プロファイリングだけに頼った捜査法に、日本人がどれだけ懐疑的なのかが分かる例であろう。もっとも、過去の事件の中では、見事に期待を裏切ったプロファイルデータもあるため、信用されないのも仕方がないのだが。

「資料にも書いてあるんだけど、捜査支援分析センターのプロファイリングによると犯人は男性。現場に精液が残されていることも決定的だけど、男女二人を相手に、これだけの凶行に及ぶとなると女性の力では不可能だろうね。これはプロファイリングなんかに頼らなくても分かることだと思う。年齢は性犯罪の定石から考えて二十代後半から三十代前半くらいというのも妥当だろうねぇ」

 桂はプロファイリングと自分の見解を交えて、事件の説明を続ける。そこに田之上や雅が当たり前のように意見をして、事件が次々と整理されていく。

 現場に残された精液や、男女二人を相手に凶行へと及んでいることから、考察するまでもなく犯人は男性であると考えられる。続いて犯人の年齢であるが、これは異常性を有した性犯罪者に見られる、共通の傾向を元に割り出されているそうだ。異常性を有した性犯罪者が、その頭角を現し始めるのが思春期……齢にして15歳前後だと言われているらしい。思春期に異常な妄想を抱き、それが月日を重ねる毎に肥大化する。そして、実際に犯行へと及んでしまうのが10年から15年後という統計データが実際に存在しているのだ。性交渉のみを目的とした性犯罪となると、その年齢にもばらつきが出るのだが、それ以外の行為を含んだ異常な性犯罪は、二十代後半から三十代前半にかけて犯人の表に出てくることが多いるそうだ。そんなやり取りが、桂と田之上、雅の三人の間で成立しているのが不思議でならない。

「堂々と犯人が自らのDNAを現場に残していることを考えると、犯人は初犯……これまで罪を犯したことのない人物だと推測されるな」
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