巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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明け方のラブホテルにて

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「ま、まぁ二人とも。少し落ち着いて……」

 この現状を放って置くわけにもいかず、堀口は二人の間に割って入り、争いを静めようとした。その時のことだった。ドアノブを回す音がしたかと思うと、誰も寄りつかないはずの六課の扉が開いた。

 扉の向こうには細身でひょろひょろの眼鏡をかけた男がいた。

「おう、そう言えば今日が謹慎明けだったな。生贄、ご苦労――」

 雅と取っ組み合いになる直前だった田之上は、男の姿を見て我を取り戻したようだった。

「ねー! かっちょん聞いてぇ! たのぴーがね、ズルしたんだよ!」

 雅は男のほうへと駆け寄り、男の後ろに回り込んで田之上を再び糾弾。男はニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべるばかりだ。恐らく【かっちょん】というのは、雅が付けた名であろう。

「あー、気にするな桂。それにしても随分と早い復帰だったな。たまには謹慎ってのも悪くないだろ?」

 ひょろひょろの眼鏡男は、田之上の言葉に大きく溜め息をひとつ。

「あれは一種の拷問だねぇ。勝手に外出はできないわ、反省文は出さなきゃならないわでさ――反省もなにも、僕は悪いことなんてひとつもしてないんだけど」

 ふいに眼鏡の男と目が合った。それを見ていた田之上が口を開く。

「あぁ、こいつと顔を合わせんのは初めてか。こいつは桂総士。俺達と同じ六課の人間だ。ちょっと前の現場でヘマをして謹慎になっていたんだ。で、こっちは堀口誠。お前が謹慎食らっている間にこっちに転属になった」

 田之上が二人の間に入り、互いのことを簡単に紹介する。

「ご紹介を受けた通り、僕は桂総士。別に前の現場でヘマをしたわけじゃないことだけ明言しておく。少し前に違法ドラッグを取り扱っているバーの摘発をしたんだけど、僕達があまりにも手際良く摘発しちゃったもんだから、捜査一課の根暗な人達が面白くなかったみたいでさぁ。拳銃に模擬弾を詰めて、容疑者にぶっ放したからって、なぜか僕が謹慎処分を食らう羽目になったのさ。まぁ、良くある腹いせだよねぇ」

 そう言うと、その無造作に整えられた髪の毛を指先でいじる桂。六課というのは、どこまで扱いが悪いのだろうか。

「日々の坂署捜査第六課に配属になりました。堀口誠です。それは大変でしたね――」

 状況はあまり分かっていなかったが、とりあえず桂に同情の意を示す。謹慎処分なんて恐ろしい言葉は聞きたくはないのだが、ここでは日常茶飯事のように思えた。
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