巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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ようこそ捜査第六課へ

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 地下に降りた途端、随分と騒がしかった人の行き交いもなくなり、心なしか気温も下がったような気がした。非常口を示す看板は、中の電灯が切れかかっているのか、チカチカと点滅を繰り返していた。

 ひっそりとした廊下は、歩くたびに足音が反響する。堀口は自分の足音に何度も振り返り、そこにあるひっそりとした廊下の姿に歩く速度を上げることを繰り返した。地下はほとんど使われている形跡がなく、過ぎゆく扉の全てのプレートは空白のままだった。

 本当に、こんな場所に六課などという部署があるのか。やはり都市伝説であり、六課への異動は何かの手違いなのではないか。堀口がわずかな期待感を抱き始めた時、しかし現実はむなしくもそれを打ち砕いた。

 ――捜査第六課。

 廊下のどん詰まりに、その扉はあった。目をこすってもう一度確認するが、扉の上部にはめられたプレートには、確かに第六課と書かれている。

 堀口は扉の前で深呼吸をすると、ネクタイのずれを直してから扉をノックした。中から男の気だるそうな返事が聞こえたのを確認すると、堀口は扉を勢い良く開け放った。

「本日付けで日々の坂署捜査第六課へと配属になりました。堀口誠です!」

 扉を開けるなり、堀口は敬礼をしながら言い放つ。しかし、真っ先に目の合った強面の男の反応は、堀口の期待していたものとは全く違った。

 まず何よりも、強面の男はソファーに寝転がっていた。週刊誌を溜め息混じりに閉じると口を開く。

「あのね、堅い。新人が来るってのは聞いてたけど、ここはそういう部署じゃないの」

 こぢんまりとした部屋の中にはデスクが並んでおり、一応、応接セットのようなものがある。その応接セットのソファーを、強面の男が占領しているわけだ。応接セットのテーブルには、堂々と成人向けの雑誌やスポーツ新聞が広げられていた。

 応接セットだけでも六課の実情が伝わってきそうだが、申し訳程度に設置されたデスクの上もひどい有様だ。そのうちのひとつは、化粧台の如く鏡やら化粧品がずらりと並んでいる。これでどうやって仕事をするのだろうか。

「後、手土産がない。やり直し!」

 敬礼をしたまま固まっている堀口。強面の男はそう言い放つと、再び週刊誌に視線を落とした。

「え、あの……。やり直しって?」

 予想だにしなかった歓迎の仕方に、思わず堀口は問い返してしまう。しかし、その答えを聞く前に背後が急に騒がしくなった。

「うひゃぁ! 遅刻遅刻ぅ! たのぴー! タイムカード押しといてぇ」

 振り返ると、こちらに向かって駆けてくる女性の姿があった。キャミソールにショートパンツ、ニーソックスとパンプスという格好の女性は、鏡を片手に化粧をしながらこちらに向かって走っていた。当然のようにこちらを見ていない。
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