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ようこそ捜査第六課へ
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他にも刑事部という範囲で見れば、刑事総務課、暴力団対策課、捜査共助課、国際捜査課、鑑識課、機動捜査隊三隊、科学捜査研究所などがあるが、やはり捜査第六課などという部署は存在しない。しかも、これらの組織体は警察庁刑事部のものであり、所轄ともなれば、もっと部署の数は少なくなる。そんな所轄に過ぎない日々の坂署に、国のトップである警察庁の組織体にも組み込まれていない六課が存在するとは、実に滑稽な話だ。
――堀口を乗せた車は、その六課との距離を着実に縮めていった。
緩い勾配の坂の上に広がる街並は日々の坂の名に恥じぬ光景だった。街そのものが坂の途中にあるというか、常にゆるい勾配に包まれた街。その勾配が元に戻った時には他の市町村だ。
坂の切れ目が境界線になっているようで、道案内の時なども日々の坂という名前が頻繁に使用されるせいか、特に何もない街ではあるが、それなりに知名度はあったりする。堀口自身も配属先の話を聞いて、真っ先に夕日の沈むゆるい勾配の景色を想像したくらいなのだから。
坂を上ると住宅が広がり、しばらく進むと商業地帯らしき通りに入る。日々の坂では、この辺りがメイン通りとなるのだろう。そんなメイン通りを一本入った先に、堀口の配属先はあった。
事前に駐車場の位置はきいていたし、また停める場所も指定されていたため、さほど迷わずに車を駐車することができた。
車から降り、改めて見上げると、所轄とは思えない大きさに驚くと共に、これだけの警察署であるにも関わらず、配属先が六課であることに愕然とする。
堀口は元上司が描いてくれた手書きの地図を片手に、日々の坂署へと重い足取りで向かった。署の中はかなり広く、地図を片手に右往左往する姿は、まるで都会の駅で迷う田舎者のようだった。
すれ違う人達の目が、自分を蔑んでいるように思えてならない。これまで何度も自分の勤務態度を見直してみたが、六課に左遷されるような心当たりはなかった。それなのに、どうして問題児ばかりの部署に配属となるのか。どれだけ抗議しても、事情を知らない上司を困らせるだけなのは分かっていた。
六課が警察署の地下……それも地下の奥まったところにあると知ったのは、恥を忍んで署員をつかまえて話を聞いたからだった。こちらが「捜査六課はどこですか?」と尋ねた時の、あちらの同情するかのような顔は、しばらく忘れられそうにない。自分を蔑むかのような視線から逃げるようにして、堀口は地下に向かった。もっとも、それは堀口の被害妄想のようなものなのだろうが。
――堀口を乗せた車は、その六課との距離を着実に縮めていった。
緩い勾配の坂の上に広がる街並は日々の坂の名に恥じぬ光景だった。街そのものが坂の途中にあるというか、常にゆるい勾配に包まれた街。その勾配が元に戻った時には他の市町村だ。
坂の切れ目が境界線になっているようで、道案内の時なども日々の坂という名前が頻繁に使用されるせいか、特に何もない街ではあるが、それなりに知名度はあったりする。堀口自身も配属先の話を聞いて、真っ先に夕日の沈むゆるい勾配の景色を想像したくらいなのだから。
坂を上ると住宅が広がり、しばらく進むと商業地帯らしき通りに入る。日々の坂では、この辺りがメイン通りとなるのだろう。そんなメイン通りを一本入った先に、堀口の配属先はあった。
事前に駐車場の位置はきいていたし、また停める場所も指定されていたため、さほど迷わずに車を駐車することができた。
車から降り、改めて見上げると、所轄とは思えない大きさに驚くと共に、これだけの警察署であるにも関わらず、配属先が六課であることに愕然とする。
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